不死川は子供の頃に、とても可愛い美少女に一目惚れした。ほんの少しの間だけ一緒に遊んでいた彼女のことを、何年経っても忘れられなくて黒い長髪の女子を見れば目で追ってしまう。それくらいには、おもっていた。拗らせている、といってもいい。
けれど、どんなに探しても見つからない。もしかして、遠くに引っ越してしまったのだろうか。
もう一度会いたいという想いは、日に日に増えていく。――そんなある日のこと。高校で同じクラスになった、とある男が気になってしまった。
男にしては珍しい長髪。それも烏の濡れ羽色。そしてやたら整った顔立ち。
つい、彼女の名を口にした。すると、能面のような顔が、ほんの僅かに色を変えた。不死川は咄嗟にその男の肩を掴み「知り合いか」と声を荒くする。しかし、その者は再び無表情になり、首を横に振って「知らない」と言った。
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