【FGO：斎土】デキあがってる人たちの事後の話　むかしむかしの、そのむかし。
　若くて愚かで知能の一部が下半身にあった頃――――
　いろいろおかしなことが起きたりして、
　気がついたら上司と寝ていた。
　睡眠とかでなくヤるのほう。
　なんでこんなことになったかなーと思わなくもなかったが、
　自分の手よりは上司の尻のほうがまだマシだった。
　自慢ではないが当時はといえば穴があれば挿れたい年頃。
　性欲で頭がだいぶダメだったのだろう。
　とにかくすごいギリギリな感じだったので頼み込んだら意外に通った。
　色事なら任せておけと豪語していた上司、さすがの寝技師だった。
　そのせいもあって一回こっきりで終わらなかったのも、
　あとから考えるに二人揃って少しどころでなくアレだったとはおもう。
　まぁ二人とも若くて愚かでしたということにしておきたい。
　もうそろそろ限界ですという頃合いになると、
　長い腕を首に回して抱きしめられたりして。
　感極まっちゃったのかな？
　カワイイとこあるよな、
　などと思っていたのだ。あの頃は――――



　事後のはなし



「おまえ、切羽詰まると物騒なカオになるときあるよな」
　突然の言葉に狼狽する。
「え？なんて言いましたカオ……カオが、良い？」
「顔が物騒。イく前な」
「そんなときの表現としてどうなんですかそれ」
　聞いたことがないんですけど！と思わずわめく。
「カッコイイとかカワイイとか色っぽいじゃなくて？！」
「知らないうちに逆鱗に触れてて斬られるのかを疑う程度には物騒顔」
「初耳なんですけどそんなの…！」
　聞きたくなかった、そんな告白。
　生前から数えて何年か知らないけど久しぶりに会えて、
　話しているうちに盛り上がって勢いでヤッた直後がそれですか？
「えっそれって今の話？それともまえ……前から、」
　いや聞きたくないわ、と思い直したが手遅れだった。
「生前ていうか最初の頃から」
「嘘でしょそんなの聞いたことないんですけど！」
「いやぁ、そこは言えねェだろうよ。商売の姐さんたちも」
　気の毒そうな上司の表情、明らかに素なので大層いたたまれない。
「金もらってる客に閨での顔が物騒とかは」
「…………う、うう」
　言葉もない。
　その通り過ぎて最早唸る以外になかった。
「なんで……なんで今頃に、なって」
「久しぶりに寝て思い出してな。そういや物騒なカオするヤツだったなと」
　目に入るのが嫌なので、見えないようにしていたらしい。
　首に腕を回して抱きしめる仕草の意味をいまになって知る。
　正直、知りたくなどなかったが。
　感極まっちゃったどころの話ではない。
「そう、言われると……」
　ああ～抱きついて来ちゃってカワイイなぁ、
　みたいな記憶が幾つか思い浮かびかけた――――
　ような気がしたものを慌てて振り払う。
「いやいや！そんなことは」
「酒飲むと人斬りたくなるのほうが数段マシだよな、寝床でカオ物騒よりは」
　鬼の上司の容赦ない一言により撃沈した。
　ほんっとに、人の心がないところある。たまに。

　終