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    はじめ

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    はじめ

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    16面×大人あた
    翻弄したりされたりする二人が好きです。
    最初は遊ぶつもりだったけど、面堂くんがあまりにも真剣なので、後戻りできなくなったあたるくんとかいたら良いな。
    大人面には見せられない不安や繊細な心を、16面についうっかり見せちゃうあたるくん。

    #面あた
    face

    答え合わせ 休日の朝、目が覚めたら隣で諸星あたるが寝ていた。
     それも少し大人になった姿で。
     そんなことって、ある?

     寝返りを打つたびに「ん」と掠れ気味の艶っぽい声がして、容赦なく面堂の鼓膜を刺激する。布団からちらちらと覗く首元に浮かぶ赤い痕の理由を理解出来ないほど面堂は子どもではなかった。
     ベッドはキングサイズはあるというのに、ちょうど中央で肩を寄せ合うようにして寝ている。すやすやと一定のリズムで刻まれる呼吸、上下する胸元。憎たらしいほど安らかな寝顔は、面堂が知っているあたるよりも、いくぶん年上に見えた。
     こいつは本当に諸星あたるなのか、はたまた他人の空似なのか。前者だとしても非常に最悪だが、後者だった場合、もっと最悪な気はした。行きずりの男とワンナイトだなんて破廉恥すぎる。せめてどうにか諸星あたるであってくれ、とおそらく金輪際願うことはないであろう不本意極まりない祈りを捧げる。
     よく顔を見るために、男を起こさないようにそっと寝顔を覗き込んでみる。黙っていれば愛嬌のある顔と、触ると心地良さそうなふわふわの髪の毛、こうして起きないところを見ると転んでもただじゃ起きなさそうな図太さを感じる。どこをどう切り取っても、諸星あたるに間違いがなかった。
     ああ、良かった。いや、良かったのか?
     ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、最悪な展開には違いないことを思い出し人知れず脱力した。
     そうこうしている間にも陽は元気よく昇り、面堂の頬を優しく照らしていく。不意にあたるのくぐもった声が聞こえた。
    「――んっ…うるさいのぉ…――」
     あたるが寝返りを打つたびに布団がめくれ、弾力のある二の腕や肩がむき出しになった。弾けるような素肌を真正面から見る勇気がなく、勢いよく視線を逸らす。
     落ち着け、終太郎、落ち着くんだ。
     先ほどから何度自分に言い聞かせただろう。まずはこいつが起きる前に、冷静になるのが先決だ。
     布団のなかで蹲ったままあれやこれやと思案を巡らせていたばかりに、すぐ近くにいるあたるが身じろいだことに気付くのが遅れた。
    「――…面堂、さっきからがそごそとうるさいぞ。まだ足らんのか? 昨日あんなにしただろ」
     昨日? あんなに? なにを?
     あたるが鬱陶しそうに眉を寄せて、陽光を遮るように片腕で目元を覆う。休みなんだから寝かせろ、だの、誰のせいで寝不足だと思っとるんじゃ、だの、どうにも噛み合わないようなことを言い出すので、ちょっと困った。
     とはいえ声を聞いた途端に確信へと変わった。ここにいるのは大人になった「諸星あたる」だ。心臓が聞いたこともない音を立て始める。緊張のあまり時計の秒針の音がやけに鮮明に聞こえた。
    「………面堂、いま何時じゃ?」
     突然あたるが面堂に話し掛けてきた。隣にいるのが面堂終太郎だと疑わない真っ直ぐとした声色に、少々困惑しつつも、面堂は壁に掛けてある時計に視線を移す。
    「………七時過ぎだが…」
    「七時ぃ? まだ朝じゃないか、俺は寝るぞ―――………って、ん?」
     違和感に気付いたのか、あたるが素っ頓狂な声を上げて、弾かれたように起き上がる。
    「………お前、面堂だよな?」
    「………ああ、そうだが」
     人を見透かすような瞳、口角の角度、妙に落ち着いた声色。馬鹿みたいに間抜けな面をしたかと思えば、急に大人びた表情も浮かべる。それを面堂は気に食わなかったし、出会ってからずっと、気になって仕方なかった。
    「………面堂の家じゃないか、ここ」
    「………いかにも」
     ゆっくりと寝室を見回したあたるが、ベッドの上で腕を組み、うーんと唸り出す。それからはっと息を飲んで、そういうことかあ、と勝手に事態を把握したようだった。こいつの適応能力、どうなってるんだ?
     なんとなく手持無沙汰な気分のまま、伏し目がちのあたるの瞼をじいと見つめた。色素の薄いまつ毛が太陽に照らされ、キラキラと煌めき、布団の上を舞う微細な埃がタンポポの綿毛のように空気中に揺れる。
     次の瞬間、突然顔を上げたあたると、はっきりと視線がかち合ってしまった。まじまじと顔を見られ、次第に羞恥が募っていく。
    「………なんだ、よく見りゃ子どもじゃないか」
     その声色に嘲笑の色が混じっていれば、逆に面堂はすべてを許せたかもしれない。
    「………あ?」
    「あ、怒っちゃった? 子どもじゃないか、高校生の男の子だねぇ」
     突如として臨戦態勢。ベッドの脇に忍ばせていた刀を手に取ると、かちゃりと金属が擦れる音がした。
    「………貴様、僕のこと馬鹿にしてるだろう?」
    「馬鹿にはしてないよ。ただ単に子どもだな、と思っただけ。ねえ、お兄さんと一緒に遊ぶ?」
    「どう見たって馬鹿にしてるじゃないか」
    「そう感じたならそうかもね。…あ、じゃあ、面堂くんがお兄さんのこと気持ち良くしてくれるのかなぁ?」
    「はあ? 何を言っとる」
    「まあ、このまま“帰る”のも惜しいしねぇ――」
     薄い唇がにんまりと弧を描いたかと思うと、押し倒された。手のひらごとシーツに縫い付けられ、鼻先と鼻先が擦れるほど近くで、あたるが寂しそうな顔をした。見たこともない表情に目を奪われる。でも次の瞬間には真剣な顔で面堂を見ていた。
    「――キス、したら始まると思う? それとも終わると思う?」
     頬に甘たったるい息がかかった。鬱陶しいはずなのに、手放したくないと思ってしまった。もっと近くで心臓に一番近い芯の部分に触れてみたいと思ってしまった。それが面堂は悔しい。
    「――分からん」
     面堂が絞り出した答えをあたるは満足げに聞いていた。そうかそうか、と相槌を打つ声に重ねるように、でも、と続ける。
    「――でも?」
    「――でも、分からんから、確かめてはみたい」
    「――は?」
     始まろうが終わろうが、僕とお前の行きつく先は結局同じような気がするがな。
     そんなことを言えばあたるは、年相応には見えない顔で赤面し、ふいと顔を逸らした。それがなぜか案外可愛らしく見えたので、面堂はキスをする覚悟がついた。
     あたるの顎をさすり、上唇をなぞる。僅かに開いた唇から白い歯が見えた。歯をなぞると少し乾いていた。肌に少しひっついて、すぐに唾液で解かれていった。瞼が触れるほどの距離で目が合う。心臓が、まるでパレードのように騒ぎ始める。
     粋がるわりに面堂の手は震えていて、情けなかった。その小刻みな揺れを、面堂とあたるはほとんど同じタイミングで認めたが、あたるは何も言わなかった。いつもは率先して馬鹿にするくせに、こういう時に限って場の空気を読む。
     唇を重ねるために瞼を閉じる直前、あたるが面堂の二の腕を雑にさすった。
    「――俺はお前のここに、ちいさな黒子があることを知っとる」
    「………どうしてだ」
     あたるは微笑んだだけで、面堂の質問には答えない。
    「――俺はお前がどこを触れられるのが好きで、どこを良いと感じるかどこでどんな反応をするか、すべて知っとる。なあ、なんでだと思う?」
     繋がる指先は燃えるように火照っている。まるで呼吸も忘れるほど、あたるに釘付けになる。
    「答え合わせをしてみるか?」
     ――もし、嫌だと感じたら、お前が元の世界に戻ったときに、すべてやり直せるぞ。
     見たこともない顔で、聞いたこともない声で、あたるが少し心配そうに聞いた。そのような殊勝な顔付きが出来るとはとうてい思っていなかったので、少し胸が跳ねた。
     でも、その言葉はさすがにいただけない。
    「――じゃあなんで、“今のお前”は“ここの僕”と一緒にいるんだ?」
     ついでにその答え合わせもしてやろう。
     頬を寄せると甘い匂い。鼻先をこすりつけ、勇気を振り絞って上唇を食んだ。加速する興奮のあまり、思わずあたるの体を引き寄せた。
     唇が重なった瞬間、恥ずかしながら感動してしまった。密着した素肌からどんどんどんどん発熱していく。無我夢中で舌を舐め取る。二人分の唾液と息遣いで眩暈がしそうだ。
    「…ん、あ、お前、がっつきすぎじゃ、…あっ、ん、あほか」
    「…だめか?」
    「…はあ? あほ、開き直るんじゃない、あっ――」
     解けていくその声を、勝ち誇ったような気分で聞く。
     次に目を開けたとき、あたるはどんな顔をしているだろうか。
     面堂の胸は、かつてないほど高鳴っている。
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    恋より淡い 校庭の木々の葉はすっかり落ちて、いかにも「冬が来ました」という様相をしていた。重く沈んだ厚ぼったい雲は今にも雪が降り出しそうで、頬を撫でる空気はひどく冷たい。
     期末テストを終えたあとの終業式までを待つ期間というのは、すぐそこまでやってきている冬休みに気を取られ、心がそわそわして落ち着かなかった。
    「――なに見てるんだ?」
     教室の窓から校庭を見下ろしていると、後ろから声を掛けられた。振り向かなくても声で誰か分かった。べつに、と一言短く言ってあしらうも、あたるにのしかかるコースケは意に介さない。
    「…あ、面堂のやつじゃねえか」
     校庭の中央には見える面堂の姿を目敏く捉え、やたらと姿勢の良いぴんと伸びた清潔な背中を顎でしゃくる。誰と話してるんだ、などと独り言を呟きつつ、あたるの肩にのしかかるようにして窓の桟に手を掛けている。そのまま窓の外の方へと身を乗り出すので危なっかしいたらありゃしなかったが、落ちたら落ちたときだ。
    1680

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