最後の夏祭りイメソン。春を告げる/yama
今日は2人で夏祭りに行く約束をした日。
そして、明日は世界が終わると噂されてる日。
それもあってか例年以上に人が多い。
何回か二人で行ったことはあるけれど、恋人同士になってからは何回目かわからないデート。いつも楽しみにしないわけがない。
あの人には内緒で用事があると言って、浴衣を着付けてもらいに行き待ち合わせ場所に今ついてる。
何だか視線が痛いが、きっと気の所為でしょ。と無理やり気持ちを落ち着かせようとする。
そろそろ待ちきれなくなった頃に、やっと今日会う予定だった人に会うことができ、た、けど。
「え、貴方も浴衣着てきたの。用事があったんじゃ……」
「志保もか。はは、お互い考えることは同じだったというわけだ」
ダークグレーにうっすら入った白い縦模様、裾にはグレーと白の彼岸花が咲いている。
前に見た浴衣とはまた違う、彼らしい浴衣だ。
「どうした、なにかあったか」
「い、いえ。なんでもないわ。似合ってると思うわ」
「ありがとな、志保もよく似合ってる」
「ありがと」
思わずぼーっとしてると、彼から声をかけられる。あなたに見惚れてたなんて言えるほど、素直じゃないけれど似合ってるはなんとか言えた。それなのに彼はサラッと言ってしまう。そういうところよ、本当に。
私は白地に桜柄で葉っぱなどの部分は紫になっていて差し色のような役割になっている。帯は柔らかい色のピンクに、上品な可愛さを出すのにいいですよと勧められたパールの飾り紐がついている。
荷物は巾着に収まる程度のだけ。いつも出かけ先に持っていく書類などは今日は手放している。今日はデートだし、最後の日になるかもしれないから。いつも私のことを気遣ってくれる彼に何か返しておきたい。
「さて、どっから行く?」
「そうね……とりあえずお腹すいた気がするけれど、貴方はどうなの?」
「俺もお腹すいたから、なにか食べるか。とりあえず色々見てみるか」
「今日は貴方がしたいことをして、付き合うわ」
「いいのか?」
「いつも私のことを気遣ってばかりじゃない。たまには自分のことを優先して頂戴」
「はは、それならお言葉に甘えようか」
照れ隠しで言ってしまったけれど、特に気にされず手をそっと握られながらそう言われる。
この瞬間はいつでも慣れない。少し顔が赤くなるのを感じながら、ぶらぶらと屋台を見て回る。
たこ焼きを買って食べたり、ポテトを食べたり、綿あめを食べてみたり。
最後に珍しいの食べたい。と言われ、見つけて気になると言われて並んだのは
「十円パン?」
「十円で買えるパンではなく、十円の模様と形をしたパンだそうだ」
「なんで貴方が知ってるのかしら?」
「今日を楽しみにして調べてたら、そういうのがあるって知ってな」
「そう」
「ん?もしかして、嫉妬してたのか?」
「ッ!わ、悪かったわね勘違いして。別に信頼してないわけではないのよ、本当に」
「わかってるさ。だが、不安にさせて悪かった」
手をぎゅっと握られる。
彼のことだから本当は抱きしめたいとか思ってそうだけど、私が人前では嫌だと知ってるからそのくらいにしてくれてるのだろうなというのもわかる。
少しでも返したいと思い、握り返してみたら彼は少し驚いてた後に愛おしいと言うような表情で見てきた。恥ずかしい、するんじゃなかった。でも、彼が喜んでくれたのならよかったかも。
そうしてる間に、順番が来て頼んで受け取ってから
近くにあいてた所に適当に収まる。
「出来立て美味しいな」
「チーズがすごい伸びる……わね」
「はは、腕めいいっぱい使ってるじゃないか」
「本当になかなか切れないのよ、でも美味しい」
「ん、よかったな」
食べることにだいたい満足したのと、お腹が膨れたので消化してしまいたいな。というのをお互い話をして、今度は遊ぶことにした。
手をつなぎ直して、ぶらぶらとまた歩いていく。
途中で見つけたスーパーボールすくいをしたいとのことで、ふたりともしてみたが見事に彼が何個も入れ始め慌てて止めた。なんとか事なきを得たが、彼は?という顔をしている。
「なんで?じゃないのよ、お店の迷惑になるでしょう」