Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji ❤ 🌓 💋 🌹
    POIPOI 193

    syako_kmt

    ☆quiet follow

    むざこく30本ノック④
    19日目
    ただいま

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    ただいま 私は帰る場所を二度捨てた。
     追い縋る妻子を捨て、かつての主の首を持ち、ここに辿り着いた。
     この道を選んだことに後悔はないが、帰る場所がないということは自分の足跡が消えてしまったような一抹の寂しさがあった。
     しかし、幾度も住まいを捨ててきた無惨は、この感情が理解できないようで「馬鹿馬鹿しい」と一蹴された。
    「たとえ帰る場所があったとて、斯様に長く生きていては帰りを待つ者も生きてはいない。いずれにせよ我々には帰る場所などないのだ」
     その通りである。
     今まで潜伏先として世話になったところはいくつかあるが、そこの主は皆、疾うに亡くなっている。
     人間という生き物は自分が食い殺さずとも、時がくれば自然と命が尽きるのだ。
     感心している自分を見ながら、無惨も何やら思い出したようである。
    「確かに私も都を追われた時はつらかったなぁ……」
     千年の昔、京を一歩出れば何も無い田舎であり、雅やかな着物はおろか、雨風を凌げる場所もなく、日除けになる場所を探すだけでも一苦労したと大きな溜息を吐く。
     貴族の出でヤブとはいえ薬師を付けてもらうほどの地位にいた方なので、都落ち同然の出奔はさぞかし堪えただろう。
    「つらかったが、あの頃に戻りたいかと言われれば、二度と戻りたくないと答えるだろう」
     その気持ちも解る。
     過去が恋しいのではなく、自分には帰る場所がないのだと、ふと心細さに似た郷愁を感じたのだ。
     それさえも愚かだと無惨は思うだろうが思いも寄らない言葉が返ってきた。
    「ならば、ここを帰る場所と思えば良い」
    「ここを……」
    「お前より先に私がくたばることはないからな。但し、場所以上のことは求めるな。お前が戻ったと私に言おうが言わまいが、私は別にお前に対して何も言わないからな」
     そんな言葉など不要である。
     ここを「帰る場所」と言ってくれただけで、この道を選んだ自分がどれほど救われたか。
     胸の内を読んでいることは解っている。だから、敢えて感謝の気持ちを口にせず静かに頭を下げた。

    「只今戻りました」
    「おかえりなさい!」
     近くのコンビニに行って戻っただけて、皆が口々に「おかえり」と出迎えてくれる。無惨に頼まれた支払いの為、コンビニに行くから欲しいものはあるか? と皆に呼びかけると口々にコーヒーや何やを頼んできた。なのでいつも以上に出迎えが丁重だったのだ。
     しかし無惨は何も言わず無言でパソコンに向かっている。
    「戻りました」
    「あぁ」
     頼まれていた煙草を机に置きに行くと礼もなく、しれっと受け取った。
     いつものことだ、そう思いながら自分の席に戻ると無惨は小さな声で「おかえり」と呟いた。
     あの時の言葉を覚えていてくれたのか、当時の記憶が無惨にあるのかどうかすらも解らない。だが、幾世を隔てても自分にとっての帰る場所はここなのだ。そう感じて静かに頭を下げた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺✝🅰▶🅰ℹ♏🅰😎😼💖🆗🅰🇪®ℹ❤☺😭😭😭😭😭❤❤💖💖💖☺☺☺👏👏👏💒💗🍆💗😎😎😎💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック④延長戦
    7日目
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく 無惨と黒死牟が仕事上だけでなく私生活でもパートナーであると公表してから、どれくらいマスコミに囲まれ、あることないこと書かれるかと心配していたが、取り立てて大きな生活の変化はなかった。
     職場は二人の関係を元から知っていたし、世間も最初は騒ぎ立てたものの「鬼舞辻事務所のイケメン秘書」として有名だった黒死牟が相手なので、目新しさは全くなく、何ならそのブームは何度も来ては去っている為、改めて何かを紹介する必要もなく、すぐに次の話題が出てくると二人のことは忘れ去られてしまった。

     そうなると納得いかないのが無惨である。
    「わざわざ公表してやったのに!」
     自分に割く時間が無名に近いアイドルの熱愛報道よりも少ないことに本気で立腹しているのだ。あんな小娘がこれまたションベン臭い小僧と付き合っていることより自分たちが関係を公表した方が世間的に気になるに決まっていると思い込んでいるのだが、職場内だけでなく国内外でも「あの二人は交際している」と一種の常識になっていた上に、公表を称えるような風潮も最早古いとなると、ただの政治家の結婚、それだけなのだ。
    2157

    related works

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
    3210

    recommended works