Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji ❤ 🌓 💋 🌹
    POIPOI 193

    syako_kmt

    ☆quiet follow

    むざこく30本ノック③
    延長戦
    社畜無惨様×居酒屋の店員巌勝

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    社畜無惨様×居酒屋の店員巌勝 過労死が他人事ではないと思い始めたのは、ここ1~2年のことだ。
     こんなはずではなかった。お決まりの台詞を思い浮かべながら、毎日何とか終電に間に合うように仕事を切り上げることを考えている。
     大学卒業後、第一志望の外資系大手証券会社に就職した。資産運用業務に配属されるまでは自分の目標通りだった。
     必死に働いて自身の資産を形成し、富裕層の人脈を作り、得た知識やコネクションを使って30歳までにリタイアして、自分も悠々自適の投資家生活を送ることが夢だった。しかし、そうはいかない。
     仕事の合間に語学の勉強は必須である。入社前からTOEICで高得点を叩き出していたが、英語は出来て当たり前。中国語や他の言語習得も求められ、入社時に証券業務に関する資格は全て取ることが必須であった。それに加えて独学で公認会計士の試験にも合格した。
     仕事中は顧客の応対に追われ、夜になると海外支店とのオンライン会議、休日は毎週接待ゴルフ……満足に寝る時間もないのだ。
     これだけ頑張っても営業成績は1位になれない。要領が悪いわけではない。皆、死ぬ気で頑張っているので、勝ちが見えず、解ることは燃え尽きて脱落した者が負けということだ。
     会社名を言えば合コンで入れ食いだと聞いていたが、合コンなんて行く時間がそもそもない。彼女は大学を卒業してから出来ていない。風俗に行くことすら面倒臭い。
     スーツ以外の買い物もしていなければ、出張や研修以外で旅行に行った記憶もない。当初の予定通り、貯金額は凄まじいものになっているが、それを投資して運用しようという気にすらならない。最低限の積立しかしていなかった。
     もう人生が終わった気がした。気付けばリタイアするはずの30歳になったが、寝に帰るだけの家で、ひと眠りしたら、始発に乗り経済新聞を読みながら会社に向かう。
     フラフラと家に向かっていると、ふと一軒の居酒屋が未だ暖簾を出していることに気付いた。
     腕時計を見ると、今日はいつもより早く退勤したようで、たまにはまともな飯が食いたいと思い暖簾をくぐった。
    「まだいけますか?」
    「はい、大丈夫ですよ」
     居酒屋と呼ぶには小洒落すぎた内装の店だった。黒を基調とした店内はカウンターと奥に座敷がある小さな店で、壁張りメニューなど、がやがやしたものがないので凄く落ち着いた。
     他に客がいないこともあって、余計に静かな雰囲気なのでホッとした。1日中、電話の音や何かしらのアラーム音を聞いていると、煩い環境に行くと眩暈がするのだ。
     渡された温かなおしぼりで手を拭きながら、ぼんやりと店内を見渡していると、カウンターの中にいた大将がにっこりと笑った。
    「大分、お疲れですね」
    「え、あぁ、はい……」
     初対面の相手に言われるなんて、よっぽどだな……と切ない気持ちになる。これでも大学時代はミスターコンテストで優勝したイケメンで有名だったのだが……と思っていると、ことんと目の前に、お猪口に入った白い液体が置かれた。
    「これは?」
    「蓮根のすり流しです。疲労回復効果がありますし、お腹に優しいので、食前に飲んでいただいているのです」
     蓮根の食感が僅かに残り、優しい出汁の風味とすりおろした生姜のピリッとしたアクセントがとても美味しかった。
     これだけで癒される……そう思うと、涙が出そうになった。
    「だ、大丈夫ですか?」
     大将はこちらを見て、オロオロしている。それもそうだろう。出した料理を食べて涙目になっている客を見て無視するほど、鈍い大将ではなさそうだ。
    「この数年、ずっと忙しくて、体に良いものとは程遠い暮らしをしていますし、こうして誰かに健康を気遣ってもらうこともなかったので……勿論、自分自身も自分に無頓着でした」
     こんな小さなお猪口ひとつに、様々な手間が掛けられていることは一口飲んだだけで解った。それはただ美味しいだけではなく、作り手の愛情すら感じられて、味覚だけでなく心まで満たされるようだった。
    「正直、旨いものは接待で食っています。鉄板焼き、中華、フレンチ……でも、今まで食べたどの料理より、これが一番沁みました」
    「嬉しいですね、料理人冥利に尽きます」
     自分と同年代の大将は嬉しそうに笑った。目元が涼やかな美形で、元気な時ならその顔に見入っていただろうが、今は久し振りに腹が減るという感覚に支配されていた。
    「今日は酒を飲まず、ちゃんと飯が食いたいな……良いですか?」
    「解りました、いくつかお出ししますね。苦手なものはありますか?」
     そうして会話を交わしながら、大将の料理を腹いっぱい食べた。
     会計の時、店名と大将の名前が書かれた名刺を貰った。
    「うちの料理で癒されるなら、いつでも来て下さいね」
     継国巌勝、良い名前だなと思っていると、釣銭を渡される時、両手でぎゅっと手を包まれた。
    「こんなに美味しいって食べて貰えたら作った甲斐があります。俺も元気を貰えました、有難う」
     ヤバい、泣きそう……そう思いながら、大将の手を握り返した。
     あんなに男前で、こんな旨い飯が作れたら、さぞかし女にモテるだろうな……と思いながら、久し振りの満腹感に満足しながら帰宅した。
     そこから週5ペースで通い、時々、翌日のお弁当にどうぞ、と持ち帰りの料理なんかも渡してもらうようになった。
     今まで着ていたスーツのサイズが合わなくなり、鏡で見ると、ちょっと太ったな……と体型を気にしていたが、大将に「最初に来た時が痩せすぎでした。今、適正体重でしょう?」と言われ、風呂に入る度に鏡で体型を確認したが、以前のようにあばらが浮き出ていることはなく、引き締まった良い体型だった。そして、春の健康診断で初めてオールAを取った。
    「考えたら、社会人になってから飯を旨いって思った日なんてなかったなぁ……」
    「食は生きる基本ですよ」
    「本当に今ならそう思う。大将みたいな嫁さんがいたら、家に帰るのが楽しいだろうなぁ……」
     そうぼやいた瞬間、大将は持っていた皿を落とした。ガシャンと割れた音で我に返り「すみません」と片付け始めた。
    「面白いこと言いますね」
    「いや、本当。ここの弁当を職場に持って行ったら、皆に愛妻弁当ですかって言われて、ちょっと嬉しかった……」
     ゴツンッと思い切り棚で頭をぶつける音が聞こえて、意外とどんくさいんだな、この人……と思いながら、アツアツの揚げ出し豆腐を食べた。
     今日も料理が旨い。明日もここに来るのが楽しみだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺👍👍😍🍱💘🙏👔💒💖💞💞💞👏💘💘💘😭💖🍱💖☺💖👏👏👏😍😍🍱🍱🍱💒💒😭💒😭💒🆗💒🆗💒🆗💒🆗💒🆗🍱🍱❤💒🍲🍱🍶💗💗💗🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック④延長戦
    7日目
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく 無惨と黒死牟が仕事上だけでなく私生活でもパートナーであると公表してから、どれくらいマスコミに囲まれ、あることないこと書かれるかと心配していたが、取り立てて大きな生活の変化はなかった。
     職場は二人の関係を元から知っていたし、世間も最初は騒ぎ立てたものの「鬼舞辻事務所のイケメン秘書」として有名だった黒死牟が相手なので、目新しさは全くなく、何ならそのブームは何度も来ては去っている為、改めて何かを紹介する必要もなく、すぐに次の話題が出てくると二人のことは忘れ去られてしまった。

     そうなると納得いかないのが無惨である。
    「わざわざ公表してやったのに!」
     自分に割く時間が無名に近いアイドルの熱愛報道よりも少ないことに本気で立腹しているのだ。あんな小娘がこれまたションベン臭い小僧と付き合っていることより自分たちが関係を公表した方が世間的に気になるに決まっていると思い込んでいるのだが、職場内だけでなく国内外でも「あの二人は交際している」と一種の常識になっていた上に、公表を称えるような風潮も最早古いとなると、ただの政治家の結婚、それだけなのだ。
    2157

    related works

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    17日目
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション 何か理由があって髪を伸ばしているわけではない。
     長い髪って手入れが大変ですよね、と言われるが、実はそうでもない。短い髪の時は月に一度は散髪に行かないといけなかったが、長い髪は自分で毛先を揃えるくらいでも何とでもなる。女性と違って髪が傷むだの、枝毛がどうだのと気にしたことがないので、手入れもせず、濡れた髪を自然乾燥させることにも抵抗がない。それに短い髪と違って、括っておけば邪魔にならないので意外と便利だし、括っている方が夏場は涼しいのだ。
     つまり、ずぼらの集大成がこの髪型だった。
     特殊部隊に入った時、長髪であることにネチネチと嫌味を言われたこともある。諜報活動をする時に男性のロングヘアは目立ち易く、相手に特徴を覚えられやすいから不向きだと言われ、尤もだなと思ったが、上官の物言いが気に入らなかったので、小規模な隠密班を編成する際の長に選ばれた時、全員、自分と背格好が近く、長髪のメンバーだけで編成し、危なげもなくミッションを成功させたことがある。だが、自分の長髪にそこまでこだわりがあったわけではなく、単なる反発心だけである。
    2382

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    15日目
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか
    「ほら見たか!これで恐れるものなぞ何もないわ!」とかつてないほど昂るのか、「案外大したことないわ、つまらんな」と吐き捨てるのか、「太陽の方がやはりお好きで?」「白昼にも月は出ておるわ馬鹿者」みたいな気楽な会話になるのか
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか  それは初恋の憧れに似ていた。
     手の届かない遠い存在という意味か、遠い昔の燦爛とした断片的な記憶のせいか、その強い「憧れ」が根底にあるから黒死牟とは意気投合したのかもしれない。
     自分たちにとって太陽とは最も忌むべき存在であり、その反面、強く憧れ、恋い焦がれた存在であった。
     今でも朝日を見ると、今際の際を思い出し身構える。しかし、その光を浴びても肌が焼け落ちることはなく、朝が来た、と当たり前の出来事だと思い出すのだ。

    「今日も雲ひとつない晴天ですね」
     黒死牟が車のドアを開けると、その隙間から日の光が一気に差し込む。こんな時、黒死牟のサングラスが羨ましいと思うのだが、まさかサングラスをしたまま街頭に立ち、演説をするわけにはいかないので日焼け止めクリームを丹念に塗り込む程度の抵抗しか出来ない。
    2129

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
    3210

    recommended works