きみは星の子第1話 告白――セイヤク――
まるで、豹のようだ。
力強くもしなやかで、どこか艶めかしくもある俊敏な動きを舞台セットの袖から眺め、総士は感嘆の溜め息をこぼした。
山中のくたびれかけた神社で、野宿をしようとした山賊たちが、参道の中心へ片足を踏み入れた途端、神官装束の一騎演じる『白鬼』があらわれ、神域を穢そうとした男どもを蹴散らしていく。演技上のことだから、お互いに紙一重のタイミングで動いているということを理解してはいるものの、その動きのキレは凄まじく、迫力があった。
黒い袴が翻るたびに、小麦色の引き締まった脚が純白の足袋とのあいだで覗くのが目に毒だとおもうのは、惚れた欲目だけではない。なぜなら、総士のまわりのスタッフや休憩中の役者ですら一騎ひとりに釘づけになっているのだから。
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