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    もとさんのツイート(ポスト)から、許可を得て書いたお話です。バッドエンドではあるかも。最後の部分の解釈はお任せします。

    #類司
    Ruikasa

    黒白百合死ネタ呪いの口づけ【オレとルイ】【僕とツカサくん】【ツカサの日記】【ツカサからの手紙】【約一年後、春】呪いの口づけ

     【オレとルイ】

     最初の頃、ルイとオレは、黒百合の国と白百合の国の交流のために、友好関係を築くための交換留学をしていた。その頃から、オレが黒百合の国へと赴いていた。黒百合には基本的に、『国外へと出られない呪い』があるらしい。一度ルイにもオレの家の庭園を見に来て欲しくて、誘った時に聞いた。


     「本当は、僕も国外に出て、様々なものを見て回りたいんだけどね」と語るルイは、悲しそうだった。
     元々ルイは、この体質が発覚するまでは、外国を巡る旅をしたかったらしい。
     ルイは花が好きなようで、自宅の庭園の花は全て、彼が世話をしているそうだ。花はどれも手入れが行き届いていて、彼の愛情を感じられた。気候か土壌か、何が原因なのかは不明だが、白百合の国でよく自生している、白百合の花は、黒百合の国では育たないらしい。一度、ルイがオレの手渡した白百合を植えてみたが、数日もしないうちに枯れてしまったそうだ。


    「ツカサくんが来られない時も、白百合の花が側にあったら、君を感じられると思ったんだけど……」

     そんな健気なことを言われてしまったら、オレだってその気持ちに応えたいと思ってしまうのは、仕方がないことだった。
     試行錯誤をしてみたところ、切り花は同じくすぐ枯れてしまったため、ドライフラワーにして持っていくことで落ち着いた。本来、白百合の花はドライフラワーにして楽しむものではないため、国の者には怪訝な顔をされてしまうが、オレはそんなことは気にしない。ルイが喜んでくれるなら、それで良いと思った。それまでは、一年に一度程しか黒百合の国へと行くことはなかったが、それ以来、仕事の合間を縫って、出来るだけルイの元へと通い詰めるようになった。通い妻のようだと揶揄されることがあったが、自分もそんな感じはしていたため、苦笑してしまった。
     黒百合には、いくつもの呪いが付与されていると言われている。その一つに、『黒百合のキスには、身体を蝕む呪い』があった。黒百合が忌避され、虐げられる理由は主にここにあった。当人達はその力を知らないが、他の種族には有名な話である。オレは聞いた当初、そんなことはないだろうと半信半疑だった。彼らも我々白百合と種族が違うだけで、同じ人間なのだから。しかし、オレは思いがけない形で、思い知らされてしまった。黒百合である「ルイ」に好かれてしまったのだ。
     最初は、髪に優しくキスをされた。


     「ツ、ツカサくんが愛おしいと思って、つい……ごめん……」
     
     なんて言われた気がする。それだけオレのことを気に入ってくれたんだなと思うと、嬉しかった。その夜、少し頭痛がしたが、肌寒くなり始めた時期だったから、きっとそのせいだろうと思っていた。しかし、違和感はそれで終わらなかった。
     次は、頬にキスを落とされた。


     「やっぱりツカサくんが愛おしくて……」

     勿論、悪い気はしなかった。


      「オレも、お前のことが好きだぞ!」

     なんて、頬にキスを返したはずだ。
    その日も頬に違和感を感じたが、気のせいだと思うことにした。
     三度目は、おでこだった。


     「どうしてもしたくなってしまって……」

     この頃から、ルイにキスをされる回数も増えていった。
    この夜も頭が痛くなった。もう、気のせいだと笑い飛ばすことは出来なかった。
     そんなことが何回か、繰り返された。オレの身体は、少しずつ衰弱していった。どうやら、黒百合の愛が増せば増すほど、呪いは強くなるらしい。白百合の加護の力があるとは言え、増していくルイの呪いの力には、勝てなかった。オレがルイの元へと通い詰めていることは周りに知られていたから、もう通うのをやめるべきだと、オレのことを心配してくれている同じ白百合たちや、妹のサキから言われた。ルイは、寂しがり屋だ。あいつにはもう、寂しい想いをさせたくない。オレは、周りの忠告を無視して、通い続けた。ルイには無理をしている様子を見せたくなかったから、いつもよりも気丈に振る舞ってみせた。それでも疲れてみえたのか、ルイには心配されてしまった。

     「あまり無理はしないでね…。君が体調を崩したら、僕、泣いちゃうと思う…」

     そうして、また額にキスを落とされた。

     「大丈夫だ、少し仕事が忙しかっただけだからな!」

     そう、笑ってみせた。

     オレの体調は、更に悪化していった。体もろくに動かせなくなり、遂に寝たきりになってしまった。本来であれば、白百合の祝福を受ける者は、専用の療養施設があるのだが、オレはそこへ入ることを拒んだ。最後まで、ルイの側にいてやりたかった。それがどれほど残酷なことか分かっていたが、結局のところは、オレの最期を彼に看取って欲しかっただけかもしれないな。お付きの者は、これ以上何を言っても無駄と察してくれたのか、許可してくれた。……そういうことにしておこう。実際、この状態になった者は回復の見込みがない。体の良い、厄介払いなのかもしれない。実質的な勘当のようなものだ。御付きの者を数名引き連れてくることが出来たのが、幸いだろうな。だが、オレの想いを成就させるためには、それでも構わなかった。


     「ツカサくん…?どうしたの、その身体は…」
    「すまないな、今まで隠していたんだが、病気を患ってしまってな、…もう治ることはないらしい」
    「そんな…。僕に出来ることは何かあるかい…?僕、何でもするから…!」
    「ありがとうな、ルイ。……ルイは、優しいなぁ。オレのさいごの願い、聞いてくれるか?」
    「勿論だよ!……どうか、さいごなんて言わないでくれ!」
    「……オレの唇に、口付けを落としてくれないか?」

     きっとこれが、オレたちが交わす、最期の会話になるだろう。オレが死んだら、哀しむだろうか。


     「……分かったよ。それが君の願いだと言ってくれるなら。」

     そう言うと、彼はオレに口付けた。唇に落とされたそれは、今までの比にならない程、急激にオレを蝕んだ。それでも、オレは、ルイに笑顔で見送ってもらいたい。その願いが通じたのか、少し痛みが和らいだ。なんとか笑顔を作り、


     「……ありがとう」

     そう一言告げた。それきり、オレの意識は、深く沈んでいった。

    【僕とツカサくん】

     「ツカサ、くん……?」

     目の前に横たわる彼は、反応を返さなかった。


     「もっと君に話したいことが、やりたいことがあるんだよ!ツカサくん!起きてよ、ねえ」

     必死に揺さぶって起こそうとしたけれど、彼の御付きの者達に無理やり止められた。……その瞳が開かれることは、もうなかった。
     ツカサくんの体は、少しずつ温もりを失っていった。どうしようもない、この感情をどこかにぶつけたかったが、そのやり場もなかった。……ふと、彼の手から何かが滑り落ちた。


     「これはどこかの鍵、だろうか」

     彼が持っている鍵に合う鍵穴は、どこにあるだろうか。白百合の国にある可能性は全くないとは言いきれないが、もしこの鍵が僕に何かを伝えようとしてくれているのだとしたら、彼の国にその答えはないだろう。……僕は行けないと、知っているのだから。
    仮に僕の推理が当たっているとしたら、答えはこの国にあることになる。この中で、最も分かりやすい場所はやはり、この部屋に備え付けてある机、だろうか。試しに鍵を差し込むと、すんなり回った。
     中には、几帳面な彼に相応しい、使い込まれた様子の日記帳と一つの封がされた便箋が入っていた。便箋には丁寧な字で「ルイへ」と書かれており、僕宛であることは明白だった。
    その場で読もうとしたが、


     「……ごめん、ツカサに頼まれてる約束を果たさないといけないから、これ以上ルイをここにいさせるわけにはいかないの。……申し訳ないけど、出ていってもらえる?」

     そう、ネネ(彼がこの国で療養することになった後からの、御付きの者)に言われてしまった。


     「……それは、すまないね。では、一旦退室させてもらうとするよ」

     そうして、日記帳と僕宛の便箋だけを持ち去った。

     日記帳には、筆まめな彼らしく、毎日の彼の様子が綴られていた。故人の秘密を暴くようで、最初は気乗りがしなかったが、恐らくここに彼が伝えたいことも書かれているのだろう。そう思うと、読まないわけにはいかなかった。どのページも興味深いことが綴られているが、今ここで全てを読んでいる余裕はない。試しに、栞が挟まれている箇所から読むことにした。

    【ツカサの日記】

     『黒百合には、複数の呪いがあるらしい。例えば、最も有名なものとしては、不老不死、他には国外への移動の制限といったものがあるそうだ。それらは、ルイから聞いて、今日初めて知った。』

     この記述は、僕がツカサくんに家に遊びに来ないかと誘われた日のものだった。僕が言ったことまで、こと細かく、書き留めていてくれたんだな。思わず頬を緩ませながら読んでいると、急にこんな記述が目に飛び込んできた。


     『そんなもの、あるはずがないだろう!黒百合だって、オレたち白百合と同じ人間だ!あいつらは、化け物なんかじゃない』

     筆跡もいつもと比べて、酷く乱れていた。何か、黒百合に関して何か言われたのだろうか。僕たち黒百合は、昔から他の国の人達から、虐げられてきた過去がある。恐らく、ツカサくんは白百合同族から何かを吹き込まれたのだろう。そう思いながら、読み進めていると、また気になる記述が見つかった。やはり、一部は判読することが出来ない状態になっているが。


     『まさか。そんなこと、あってたまるか!黒百合から■■をされただけでオレたちが■■可能性があるなんて!あまりにも、非科学的すぎる』

     「黒百合に何かある、ってことなのかな?……親から言い伝えられたことで、思い当たる節はないんだけど」

     僕の両親は、黒百合の研究をしていた。今はもう引退して、国内のどこかで静養している、らしい。この屋敷に来て以降、両親とはずっと会っていないからね。元気にしているといいんだけど。
     その後、このような記述が見つかった。


     『あれは"真実"だった。オレは、身をもって思い知ることになった。だが、出来ればルイには知って欲しくない。あいつはきっと、自分を責めるだろうから。』

     ……やはり、僕が知らない黒百合の「真実」があるようだね。何だろう。


     『本当は、これを書き遺しておくことは余計にルイを苦しませることになると分かっている。でも、もしあいつがオレの死の真相を知りたいと思っているのだとしたら、その時は、きっとこの日記は役に立つかもしれない。そう思うと、焼却処分するわけにはいかないか。』

     ツカサくん……。君は、何を知っているんだ。

      更にページをめくっていくと、いよいよ、次のページが最後のページというところまで到達した。正直、ここに彼の死の真実が書かれているかもしれないと思うと、読むのが怖い。でも、僕はきっと真実を知るべきなのだろう。


    『日記も、いよいよこれで書くのは最後か。案外書くことが多かったな。それだけ、ルイとの日々が楽しかったとも言えるのだが。もしここまでほとんどの記述に目を通してくれているのなら、オレは本当に嬉しい。オレのことを、知ろうとしてくれたのだからな。』

     それは、愛しい君のことだからだよ。……その言葉を直接伝えることは、もう叶わないけれど。


     『ここまで全て読んでくれたのなら、その誠意に応えるべきだと、オレも理解している。その上で改めて書き記すが、この先に何が書かれていようと、どうか自分を責めないで欲しい。最終的に選び取ったのは、オレ自身の意志だ。お前には、何の責任もない。これから書くことは、あまりに滑稽で、非科学的なことだ。だが、これはオレの身に起こった、紛れもない事実だと記しておこう。ーーオレの死因は、病気ではない。黒百合の愛ルイからの口付けだ。』

     ……僕の愛が、ツカサくんを殺した……?


     『本当はもっと早く、伝えるべきだったのだと思う。だが、あまりに信じがたいことだ。直接伝えても、信じてもらえないかもしれない。それに、ルイからの気持ちは、嬉しかったからな。応えてやることは、終ぞ叶わなかったが。』

     僕は慌てて、ツカサくんからの手紙を開いた。

    【ツカサからの手紙】

     『ルイへ。お前がこれを読んでいるということは、もうオレは、この世にいないということだろうな。お前を置いていくようなことをして、すまなかった。……お前は、黒百合の呪いのことを、前に色々と話してくれたな。その時にこのことを話していたら、オレは、一生お前と添い遂げられたのかもしれない。』

     ……ツカサくんは、どこまで黒百合の呪いのことを知っているんだろう。黒百合の呪いには不老不死があることも、以前に伝えていた。……待ってくれ。黒百合に呪いがあるように、もしも白百合にも呪いがあるとしたら?僕の体質の話はしたことがあったけれど、ツカサくんの話は、聞いたことがなかった。……基本的に僕達は、僕が話して、ツカサくんは聞き手に回ることが多かったから。……彼は何かを、隠している?


     『……最期、唇にキスをしてくれ、と頼んだだろう?あれは、お前のキスで死ぬことを決めた、オレ自身のエゴだった。お前にオレを殺させた、オレのことを、許さないでいて欲しい。そして、どうか……オレのことは忘れてくれ。オレの後の事は、ネネに頼んである。……たとえ何が起こったとしても、ネネを責めるようなことはしないでくれ。それを指示したのはオレだ。責めるなら、オレのことを責めてくれ。』


     ネネに死後のことを依頼していることと、退室を促されたことには、何か関係があるのだろうか。嫌な予感がするが、急いで続きを読むことにした。それからでも、遅くないはずだ。


     『オレに好意を持ってくれていることは、分かっていた。全身に接吻を降らせてくるなんて、普通の友人相手にしないことは、鈍感だと言われるオレにも、流石に分かる。……嬉しかったんだ。ルイに愛してもらえて。』
    『だが、それと同時に、オレと一緒になったとしても、幸せにしてやれないんじゃないかとも思っていた。黒百合は黒百合同士で交際するのが一般的だ。たとえ今は良くても、オレはお前との子供を孕んでやることは、出来ない。それが全てだとは思っていないが、普通はそうなんだということを、オレは理解してしまっていた。なあ、ルイ。……普通の幸せって、何なんだろうな。なんでオレ達は、黒百合と白百合に生まれてしまったんだろうな。』


     ……いつも自信満々な彼が、そんなことを考えていたなんて、思いもしなかった。


     『だからオレは、同じものを返してやることが出来なかった。もしオレ自身が本気で望めば、同じものに成れた・・・・・・・・と分かっていても、言い出すことが出来なかった!オレは、あまりに臆病だったんだ』

     同じものに成る……まさか。
    必死で、両親の研究資料を漁る。彼らが主に調査を進めていたのは黒百合の呪いだったが、研究対象はそれだけではなかった。母さん達は、他民族の研究もしていた。白百合の資料を探してみると、こんな記述があった。


    『白百合の呪い
    死後、黒百合の死者蘇生が一切効かない(他の種族は蘇生出来る、強力な呪術である)。
    ※死の直前であれば、黒百合の呪いで眷属にすることで、不老不死にすることが出来る。』

     もし、彼がこのことを言ってくれたら、僕に勇気があれば、彼は今も僕の隣で笑ってくれたのだろうか。でも、全てがもう遅すぎた。今気づいても、意味がない。


     『最後に、今までオレのことを愛してくれてありがとう。オレもお前のことを、愛していたぞ。これからは、どうか他の人と幸せになってくれ。さようなら。
                          ツカサより』

     そう、手紙は締め括られていた。彼は僕と両想いであることを知った上で、永久に添い遂げられる可能性を理解したまま、それでもその選択を自ら捨てて、この世を去った。どうか他の人と幸せになってくれ?そんなの、冗談じゃない!僕が共に生きていたいのは、ツカサくんただ一人だ。
     そういえば、亡くなったツカサくんは、どこへ行ったのだろう。……まさか。急いでツカサくんがいたところへと戻ったが、そこは既に、もぬけの殻だった。
     思わず、近くにいた者に問い質した。


     「……ツカサくんを、どこに連れて行ったの」
    「ツカサ……?ああ、白百合の方ですね。それは、お答えできません。そういう取り決めになっているんです」
    「そうだ、ネネ……ネネはどこに?」
    「彼女は白百合の方に付き添っています。場所は……貴方であっても、教えられません。申し訳ございません」

     どうやら、誰かによって箝口令かんこうれいが敷かれているようだ。帰ってきたら、駄目元でネネに聞いてみよう。
    そう思い、聞いてみたのだが。


     「ツカサがどこに埋葬されたか?……それは言っちゃいけない決まりになってる。ツカサと約束したから。……どうしても知りたいんだったら、自力で探して」

     と、にべもなく断られてしまった。
    黒百合としての職務はこなしつつ、空いた時間を使って情報収集を行ったが、それでも進展はなかった。
     
    【約一年後、春】

     転機は、突然訪れた。
    いつもは鳴ることがない屋敷の呼び鈴が、珍しく鳴った。


     「すいませ~ん!誰かいませんか~!アタシ、お兄ちゃんのお墓参りに行きたくて!」
    「サキさん……」

     いつもは表情の変化が乏しい黒騎士の青柳くんが、血相を変えて、慌てて出て行った。……彼の知り合いなのだろうか。


     どういうことなのか気になりはするが、一旦隠れていることにしようか。ガチャリ、と洋館の扉が開く音がすると同時に、元気な女性の声が飛び込んできた。


     「久しぶり、ト~ヤくん!えへへ、元気にしてた?」
    「俺は元気でしたよ。サキさんは、体調いかがでしたか?」
    「それはもう、ばっちりだよ~!こうして黒百合の国に渡航許可も出たし!」
    「そうですか……。それなら、良かったです。それで、お兄さんのお墓参りというのは、もしかして……」
    「お兄ちゃん、今日が誕生日でしょ?……本当は命日にお参りに来たかったんだけど、どうしても予定が空けられなかったから、この日にしようと思ってきたの!」
    「確かに、それは良いかもしれませんね。……ツカサさんも、きっと喜んでくれると思いますよ」

     ……ツカサくんの名前が出た?サキくんはお兄さんのお墓参りに来ていて、その流れでツカサくんの名前が出たということは、もしかして、サキくんはツカサくんの実の妹さんということ……?
     隠れて盗み聞きをしていたことを忘れて、思わず彼らの前へと、飛び出した。


     「突然すまないね!君はもしかして、ツカサくんの妹さんかい……?」
    「わっ!びっくりした!そうです、アタシが天馬サキです!黒百合の国で亡くなった、白百合の天馬ツカサの実の妹です!あっ、もしかして……貴方が神代ルイさんですか」
    「あっ、うん。そうだけど……」
    「貴方のことはお兄ちゃん達から色々聞いているから、知ってます!そっか~、この人がお兄ちゃんの好きな人だったんだね!」
    「……どうしますか?墓参りの方は」
    「そうだ!良いこと思い付いた!ト~ヤくん、耳貸して!」
    「それは構いませんが……本当に良いんですか?」
    「大丈夫!アタシには『白百合の加護』がついてるもん!」
    「……サキさんがそれで構わないのでしたら、俺は止めませんよ」
    「ということで、ルイさん!アタシ達と一緒に、これからお兄ちゃんのお墓参りに行きませんか!」
    「……え?」


     ずっと行きたかった、ツカサくんのお墓参りに。どれだけ探しても、今どこにいるかは見つけられないで、季節は既に一巡してしまっていた。


     「……本当に、いいのかい?」

     ……僕が、君のお兄さんを殺したようなものなのに。


     「いいですよ!ルイさんは悪い人なんかじゃないって、分かりますし!」
    「で、でも、君とは今日初めて会ったんだ」
    「ふっふっふ~!実は!アタシ達白百合には、『白百合の加護』があるんです!加護には『相手が嘘をついているか』見破る能力があるので、アタシにはルイさんが嘘をついてないことは、丸分かりなんだもん♪」
    「……サキさん。あまりそういったことは公言しない方が良いかと」
    「あっ、そうだった!このことは秘密にしてくださいね!」
    「う、うん!それは勿論さ」


     ……そういえば、ツカサくんに嘘を吐こうとしたことがあったけど、全て見抜かれているような気がして、結局やめたことがあったな。あれは本当だったんだね。妹さんにツカサくんの面影を感じて、懐かしさで思わず頬が緩んだ。


     「良かった~!ルイさん、やっと笑ってくれた!」
    「……俺も、久しぶりに見ました。神代先輩が笑ったところ。……ツカサさんが亡くなってから、全く笑わなくなったので、心配していたんです」
    「そう、なのかい?」
    「ええ。……ツカサさんから、頼まれていたんです。『ルイのことは、頼んだぞ』と。草薙と協力して見守っていたのですが、少しは回復したようで、良かったです」
    「……ツカサくんは、色々な人から愛されていたんだね」
    「そうですね。ツカサさんは、たくさんの人から愛されていました」
    「それなのに、僕は……!」
    「……俺達は、ツカサさんの本当の死因を知っています。その事について、俺も……サキさんも、責めるつもりはないです。決めたのは、ツカサさんですから」
    「そうか……。ありがとうね」
    「いえ。……ツカサさんが、愛する人のところに行くと聞いた時、嬉しかったんです。中々我儘を言ってくれない方でしたから」
    「そうそう!お兄ちゃんは、いっつもアタシ達のことばかり優先するから、たまには我儘言ってもいいんだよ!って言ったことがあるんだけど、『オレはサキ達が幸せなら、それでいいんだ』としか言ってくれなくて……。白騎士になったのも、アタシ達家族のためで、本当は、叶えたかった夢が他にあったって聞いていたんですけど……。ルイさん、知りませんか?」
    「……そういえばツカサくんは、ショーがやりたいって言っていたな。僕も演出家になりたかったけど、この体質だから諦めていたけど、一回くらいやっておけば良かったな」
    「お兄ちゃん、ショーがやりたかったんだ……。あ、でも、昔やってたことあったよね!ト~ヤくん!」
    「そういえば、昔、俺達の前でショーを披露してくれたことがありましたね。あの時は本当に楽しかったですね」
    「ツカサくんのショー、見てみたかったな……」


     サキくんが乗ってきた乗り物へと向かう道中、このような会話をしながら進んだ。僕の知らないツカサくんの姿が、そこにはあった。


     「……そろそろ着きますね」
    「サキくんに着いてきている従者は、どうやら二人みたいだね。……おや?」
    「お、やっと来たか。トウヤと……げっ、神代センパイもいるじゃねえか……」
    「随分な挨拶だね。東雲くんとミズキだね。二人とも、久しぶり」
    「あ、ルイじゃん!久しぶり~!まあ、大体の様子はトウヤくんから聞いてるよ!」
    「なるほど、サキくんがさっき言っていたのは、そういうことなんだね」


     「ところで、ツカサくんのお墓はどこにあるのかい?僕は全く知らないんだけど……」
    「それについては俺が知っているので、問題ないかと」
    「は?トウヤが……?なんで神代センパイは知らねえんだよ」
    「……これに関しては、到着してから説明する。今は疑問が尽きないだろうが、その時に聞いてくれ」


     そう言った青柳くんに案内されて到着したのは、ろくに整備されていない、深い森の中にある墓地だった。


     「こんなところに、ツカサくんが埋葬されている?はは、悪い冗談、だよね?」
    「いいえ、ツカサさんはここに埋葬されています。俺達が運んだんです。……本人から直接、頼まれたので」
    「ここって、もしかして……無縁墓地……?」
    「……そうですね。俺達は止めたんですが、ここに埋葬してくれと頼まれたので」
    「普通だったら、白百合の国で埋葬されるはずなんじゃないの?わざわざこんな辺鄙へんぴなところに埋葬するんじゃなくて、そっちの方がいいんじゃ……」
    「草薙と俺でそう説得しようとしたんですが、出来たら黒百合が入れるところが良いと仰ったので。時期が来たら、俺達から神代先輩には教える予定でした。サキさんがこちらに来られる時期が思ったより早かったので、ご家族の許可が取れたことだし、前倒しでこうして伝えることにしました」
    「……それは別に構わねえんだけどよ、どうして無縁墓地なんだ?ここはこんな状態だし、白騎士だったツカサセンパイには、相応しくねえんじゃねえの?」
    「……そもそも、黒百合の国にツカサさんの親族はいません。元々白百合の国の方ですから、当然です。ここは確かにあまり整備されていませんが、国有の墓地です。……主に俺一人で管理しているので、中々管理が行き届かなくて、本来あるべき姿に戻せていないんです」
    「えっ、この広い墓地をトウヤくん一人で管理してるの」
    「他にもたまに手伝ってくださる方はいるんです。でも、その方は気まぐれなので、たまにしか来てくださらないんです。確かに優秀な方ではあるんですが……俺は黒騎士の団長としての仕事もあるので、ここにかかりっきりになるわけにもいかなくて……」
    「確かに、団長の仕事と兼任じゃ大変だよな。オレも、ツカサセンパイの後任になってから、随分やるべきことが増えたからな……」
    「たまにはボクも手伝ってるんだけど、いっつも大変そうだよね!」
    「だったら、ミズキがやればいいんじゃないかい?東雲くんよりは向いてそうな気がするけど」
    「ボクはそういう柄じゃないからね~!あと、これはツカサ先輩の託宣もあるから、ボク達で決められることじゃないんだよね」
    「託宣……?」
    「白百合の国には、後任を決める儀式みたいなのがあって、それで決められた人は、必ず後任を務めないといけないんだ。……詳しいことは言えないけど、その儀式を行える人は決まってて、それで決められたのが弟くん、ってわけ!」
    「……おい、その呼び方はやめろってずっと言ってるよな?」
    「ごめん、ごめん!反応が面白いから、つい!」
    「はあ、まったく……」


     「ところで、ツカサくんはどこに埋葬されているのかい?」
    「ツカサさんは……ここです」

     青柳くんが指差した先には、黒百合の花が置かれていた。どうやら、新しい花のようだね。普通お墓に供えるとしたら、白百合の方が一般的だ。
      

     「この花、昨日来た時はなかったはずなんですが……」
    「え~、そんなことある?」
    「いえ、昨日は終業まで、ずっとここの見回りをしていたので……」
    「生けてあるというより、自生していると言った方が近いかもしれないね」
    「……ねえルイ、黒百合の花言葉って知ってる?」
    「確か、恋と呪い……だね」
    「ルイはどう思ってるか知らないけど、きっとツカサ先輩は幸せだったんじゃないかな?そんな先輩が、またルイに会えた喜びでこの花を咲かせた……そう考えたら、ロマンチックだと思わない?」
    「フフ、それは興味深い考えだねぇ。そう……だったらいいな」


     「そういえば、ここは黒騎士団長である、君が管理しているんだっけ?青柳くん」
    「そうですが、……それがどうかしましたか?」
    「ねえ、青柳くん。これは交渉なんだけど……ここの管理を僕に任せてくれないかい?」
    「そう言われましても……所定の手続きなどは踏まないと……あそこは、国有の土地ですし」
    「黒騎士団長になるのと、この土地を買い取るの……どちらの方が早いと思う?」
    「おい、あんた!やり方ってものがあるんじゃねえか?」
    「待て、彰人!神代先輩。……そう言ってくださるのを、俺達は心待ちにしていました」
    「……どういうことだよ」
    「以前から、神代先輩には黒騎士にならないかという打診はされていたんだ。当の本人はその気がなかったようで、俺が黒百合の国へと渡航してから、成り行きで俺が黒騎士団長になることになったんだが……。正直、もし神代先輩が黒騎士団長になることを引き受けてくださるなら、その方が良いと俺は思っている」
    「……ああ、確かにお前は人を導くよりは、支える方が性に合うってずっと言っていたからな」
    「そういうことだ。神代先輩の実績や、頭の回転は軍部のお墨付きがあるから、黒騎士になること自体は、問題ないと思う。ただ……」
    「団長まで登りつめることが出来るかは、分からないということかな?」
    「簡単に言うと、そういうことですね。こればかりは、軍の上層部による会議で決まるので……」
    「それは、大した問題ではないね。僕には秘策があるからね……。フフフ……実行の時が、今から楽しみだよ!」
    「……オレは、何も聞いてねえからな」
    「万が一、どうしようもなくなったら、君達にも協力してもらうことになるかもしれないけど、その時はよろしくね」
    「……あんまし、トウヤ達に迷惑を掛けるようなことは、しないでくださいよ?」
    「それは勿論だよ」


     「そういえば、青柳くんが黒騎士になることを引き受けたのはどうしてなんだい?」
    「あっ、それはアタシも気になってたの!ト~ヤくん、急に白百合の国から出ていっちゃったから、びっくりしてたんだよ!」
    「そういえば、サキさんにも話してませんでしたか。俺がこの国に来た理由は、ツカサさんに付き添うためです。誰かは付き添う必要があったのですが、誰も行こうとしなかったので、俺が立候補したんです。俺もツカサさんのことが、心配だったので。たまにサキさんにも手紙を送ったりしていたので、容態等は全て伝えていました。……団長になったのは、先程言った通り、完全に成り行きでしたね」
    「そういや、ちょうど同じタイミングで、入れ替わりでオレ達が白百合の国へ派遣されたよな?」
    「そういえば、そんなこともあったね~!黒百合じゃないボクが派遣されるのはまだ分かるけど、まさか弟くんまで来るとは、思ってなかったよ!」
    「ま、それはオレも同感だな。神代センパイに比べりゃ、体質はましだが、慣れるのに苦労したわ」
    「君達も大変だったんだねえ」
    「まあ、結果的にトウヤ達とも仲良くなれたし、悪いことばかりではなかったんだがな……」


     彼らに泊まっていってはどうかと尋ねたが、どうやら忙しいようで、断られてしまった。久しぶりに会った仲間達と昔話に花を咲かせることが出来て、本当に楽しかったよ。……明日からは、そうも言っていられないけどね。


     翌日からは、ひたすら勉強と訓練を行う日々が続いた。ツカサくんが亡くなってからというもの、ひきこもりと化していた僕は、一から体力作りをすることになった。黒騎士になることには、体力も必要不可欠だからね。鈍った身体を鍛え直すのは、相当骨が折れたよ。でも、全てはツカサくんの側にいるためだ。白百合よりは魔術を駆使することが多い黒百合の国は、白百合達よりは、体力を必要としないが、実戦が全くないとは言い切れない。今は平和だけど、いつ攻め込まれるかは、誰にも分からないからね。
     体力作りと平行して、久しぶりに術式や魔術を復習した。元々やっていたことだったから、然程苦労はしなかったけど、白百合の体質についても、試しに研究資料を漁ってみることにした。もう少し早ければ……と思うことも時折あったけれど、僕は永久を生きる黒百合だ。いつかツカサくんが転生した時に、同じことは二度と繰り返さないようにしたいからね。


     永遠とも思える数年間を過ごした後、僕は遂に黒百合の騎士団長になった。勿論、騎士団長の仕事は墓守だけではない。激務をこなしながら、ツカサくんのお墓へと通うことは、一日たりとも欠かすことはなかった。


     いつしか青柳くんやミズキ達は、いなくなった。彼らは黒百合ではないから、悠久の時を共に過ごすことは叶わない。……唯一の方法も提示したけど、彼らは彼らとして終わることを望んだ。ただ、それだけのことだ。一つ気に掛かったのは、「生まれ変わりは必ずしも、同じとは限らない」という、青柳くんの言葉だろうか。あれは、どういう意図だったのだろうか。
     そうして、数千年の時が経った。屋敷にはもう、黒百合姫と黒百合、そして入れ替わり立ち替わり雇われた、メイド達しか寄り付かなくなった。


     今日も僕は、すっかり人が寄り付かなくなった、ツカサくんが眠るお墓へと向かっていた。
    いつかツカサくんが生まれ変わって、また再会する日が来るかもしれない、と何度願ったことか。その願いは叶うことはなく、もう二度と、巡り合うことはないのかもしれない、と諦めかけていた時だった。いつもはいない先客が、そこにいた。
    どこか見覚えがある姿。……いや、まさか。恐る恐る、声をかけた。


     「……ねえ、そこの君。こんなところで、何をしているの?」
    「む、オレかオレはだな……約束を果たしに来たんだ!」


     そこには、黒いローブを被った、黄昏色の目をした、金髪の少年が立っていた。
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    2024/5/26開催のCOMIC CITY 大阪 126 キミセカにて発行予定の小粒まめさんとのR18大人のおもちゃ合同誌

    naの作品は26P
    タイトルは未定です!!!

    サンプル6P+R18シーン4P

    冒頭導入部とエッチシーン抜粋です🫡❣️

    あらすじ▼
    類のガレージにてショーの打合せをしていた2人。
    打合せ後休憩しようとしたところに、自身で発明した🌟の中を再現したというお○ほを見つけてしまった🌟。
    自分がいるのに玩具などを使おうとしていた🎈にふつふつと嫉妬した🌟は検証と称して………

    毎度の事ながら本編8割えろいことしてます。
    サンプル内含め🎈🌟共に汚喘ぎや🎈が🌟にお○ほで攻められるといった表現なども含まれますので、いつもより🌟優位🎈よわよわ要素が強めになっております。
    苦手な方はご注意を。

    本編中は淫語もたくさんなので相変わらず何でも許せる方向けです。

    正式なお知らせ・お取り置きについてはまた開催日近づきましたら行います。

    pass
    18↑?
    yes/no

    余談
    今回体調不良もあり進捗が鈍かったのですが、無事にえちかわ🎈🌟を今回も仕上げました!!!
    色んな🌟の表情がかけてとても楽しかったです。

    大天才小粒まめさんとの合同誌、すごく恐れ多いのですがよろしくお願い致します!
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