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    かりゅ

    @k_is0816

    思いついたけど長文書くほどの頭がなかったやつをぽいぽい投げてます。ゆる〜〜く更新予定

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    かりゅ

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    書きたいとこ書いたから満足した。

    #ヒ腐マイ小説
    hifutsuMaiNovel
    #ヒ腐マイ
    hypmic bl
    #一左馬
    ichizuma

    どむさぶイサ"Kneel"

    その"Command"に、歓喜と虚しさが同時に襲ってきて。

    余計に頭が重くなってすぐさま後悔したのだ。



    「左馬刻さん!これ、つけてほしい。」
    「……ひと目で相手が誰か分かるなこれ。」

    黒の革製【Color】はルビーとエメラルドの小さい石が装飾されていて、いつも周りに牽制しまくって無意識に"Glare"を放つ一郎らしいなと思ったのを覚えている。

    何だかんだ一郎の事が可愛くて目に余る独占欲も絆されて許していた。世話したがりで構いたがりの一郎は、どろどろに甘やかす様なプレイが好きでsubとはいえ年上で勝ち気な俺はプライドと多少葛藤していた。それでも、あの愛が垂れ流されている瞳に見つめられてしまえばそんな自身の小さな問題は離散していたが。

    多少の喧嘩はあれど概ね関係は良好だったと思う。分かりやすく俺を慕ってきた一郎を俺も分かりやすく可愛がっていたからだ。一郎と出会ってプレイをするようになるまでそう時間はかからなかったが、パートナー関係になるまでは少しひと悶着あった。それでも今更一郎以外のDomとのプレイで欲求をきちんと満たせる自信もなかった俺はいつかの日のために【Color】まで先に買ってきて俺を逃がす気が端から無い一郎から一線引くのをやめたのだ。

    TDDが決裂、解散して一郎との仲が最悪になった今ですらパートナーになった事を後悔はしていなかった。ただ馬鹿だなとは思ったが。多感な時の永遠も絶対も信用していなかったはずなのに、あまりに必死で一生懸命なあの男に全てを預けたことを。だが、そろそろそのパートナー関係も終わるだろうと左馬刻は分かっていた。

    衝動的で自然消滅のような亀裂の入り方だったからパートナー解消をしていない。【Color】もあの頃の一郎が絶対鍵付き良いと言いその鍵も左馬刻は持っていない。だから今も左馬刻の首元には【Color】がされたままになっている。山田一郎を知らない人間でもパートナーがいる事は分かられるし、TDDを知っている者からすれば解散したのにまだパートナーなんだと一発でバレるのだ。こんなもの一郎の方も不本意だろうという思いはあった。

    今まで顔を突き合せないで来れたが、もう無理だろうDRBが控えている。一郎だってこれを機にパートナーを解消するつもりでいるだろう。一郎のことは憎んでいる。だが、この首元から一郎のものだという証が消えるのはとても恐ろしいと思った。

    「おい、左馬刻お前…顔色最悪だぞ。」

    分かっているそんなもの。解散してからプレイはしていない。例えパートナーが居ても国が運営する専用施設で一時しのぎは出来るのだろうが気が向かない。自身の中のsub性は一郎以外認めないと拒絶し飢えている。仮に都合のいい他のDomを見つけてその時は満たせても、自分のDom以外とプレイをしたという罪悪感でsub性が悲鳴を上げるだろう。それではせっかく一時的に満たしてもなんの意味もない。それでも自分のDomからの"Command"をずっと出されていない身体は順調にガタがきていた。

    世話したがりで構いたがりの一郎だった。そんなものを全部受けとめ幸せだと満たされていた。それが一気にぱたっと無くなれば当たり前の話ではある。最近はハマでもDRBを宣伝するラッピングカーが走っている。そこに映される一郎の顔を見ただけで喉が鳴ったのを感じたとき思わず笑ったのだから。

    TDDの頃、悪ノリでプレイした時の音声を録音したものがスマホに残っている。だが、この音声はギリギリまで使いたくないと思って今日まで来た。でもそろそろこいつの出番なのかもしれない。DRBまでの日にちを数えて左馬刻は息を吐く。

    プレイが出来ておらず欲求不満を抱えたまま自分のDomなんかと対面した日にはバトルどころじゃなくなるのは目に見えている。銃兎にも理鶯にも迷惑をかけるわけにいかない。





    中王区画の入り口で、一郎と会ったのは誤算だった。ずっと与えられていなかった餌を目の前にぶら下げられた様なものである。それでも、左馬刻は持ち前の精神力で何とか耐えた。一郎の方はパッと見ではあるがそこまで不調を抱えていないように見えた。まあ弟と一緒に住んでんだから弟の面倒を見ているわけだし、本格的なプレイは出来なくてもDomの欲求を少しは軽減出来ているのだろう。俺の顔色の悪さにほんの一瞬だけ一郎の表情に心配の色が差した気がしたがきっとこれも気のせいだろう。自分のDomの関心を引けていると思い込みたい俺の。

    誤算だったが、諦めと覚悟も出来た。この体調不良のなか一郎と本気でやり合って勝てるほど一郎の力量をナメ腐ってはいない。俺はそんな弱い男とチームを組んだわけでもパートナーになったわけでもない。……聞くしかないだろう。

    「ちょっと出てくるわ、呼び出し前には戻る。」
    「さっき銃兎がコーヒーを買いに出かけた、多分左馬刻の分もだ。」
    「……早めに戻る。」

    こんだけ広い会場なのだ、空き部屋の一つや二つあんだろ。とりあえず一人になれる個室ならどこでもいい。そう考えながら控え室から出て廊下をズカズカと歩く。


    "左馬刻さん"


    分かっている。いくら鍵がついている【Color】でも死別やDVの発覚などどうしようもない事情がある場合然るべきところに行けばこの首についた輪っかは破壊してもらえる。なのにそれをしていない。解散したばかりの荒れていた頃ならまだしも、盃を交わし活動拠点をヨコハマに移しMTCとなって幾らか冷静に物事が見えるようになった今も俺の首にはこれがある。それは自分がそれを選んでいるということだ、現在進行形で。

    「っ……」

    さっき一郎に会っちまったとき一郎驚いていた。目線が俺の首を凝視していた。DRBを宣伝するラッピングカーやその他不特定多数が目に触れる所謂宣材写真のようなものには画像を加工してもらい【Color】を消してもらっている。どうせDRBを見る中王区の女達にはバレるのだが俺を見世物にすらしない奴らに【Color】が認識されるのは不快だった。だから一郎は宣材だけを見てもう俺の首には何もないと思っていたのだろう。この【Color】を贈られたときに交わした約束はただ一つ。


    他のDomの"Command"に反応しない、またプレイに準ずる行為をしない。


    俺がこれをつけている限り、その約束を俺は守る気があると一郎には分かってしまう。最初不快そうな声色で俺を視界に入れた一郎は完全に動揺を顔に滲ませていた。俺といえばどんな感情でも一郎の気を引けたのが嬉しくて膝がガクガクしそうで危なかった。

    昔はDomとsubの関係性に良い印象はなかった。せっかくSafe wordを"許して"に設定していて自分のsubであり妻である女がそのワードを口にしているのに止められる事のない一方的なプレイとその延長線上のセックス。そんなものを一番近くでずっと見させられてきた俺はずっとこのダイナミクスという性が嫌いだった。だからダイナミクスが判明してからも生涯自分のDomを設定するつもりはなかったし、軽いプレイをちゃんとした専用の施設でどうしても限界が来たら行いどうにか保っていた。身体が成熟し薬を成人の用量で飲めるようになってからは抑制剤を処方してもらい欲求そのものを無かったことにして上手くやれていた。そう、一郎に出会って惚れてしまうまでは。

    この輪っかを贈られてからは抑制剤を飲むことも一郎に構われたい褒められたいという欲求を無くそうとしている駄目な行為ではないのかと俺の中のsub性が必死に抵抗を示すからカチコミだとかマナーのなってないDomが沢山いると判明していたり恐れがある場所に赴かなければならない時以外は抑制剤すら飲まなかった。いや、飲めなかったという方が正しいか。subdropの様にはならないものの自分のDomとの約束を反故にしているという気持ちから心臓のあたりが謎の焦燥感に苛まれプレイをしていない欲求不満ではない体調不良を引き起こした。欲求不満からくる体調不良を抑える為に抑制剤を飲むというのにそれでは意味がない。


    一郎のした事を憎んでいる。それでも俺の中のsub性は一郎を求め焦がれ悲鳴を上げている。一郎は…どうなんだろう。一郎の中のDom性は俺を今もどろどろに甘やかしたいって思ってくれているだろうか。まあ最もお互いがお互いを憎んでいるのだからダイナミクスがどう言おうがもう…。

    「………あったか。」

    やっと空いてる部屋を見つける。しっかり持ってきた自分のスマホとイヤホンを確認しながら適当な椅子に腰掛ける。二人がコーヒーを用意してきっと待ってくれている、さっさとしよう。耳にイヤホンをはめて音声ファイルを再生する。ザザと聞こえた音は掛け布団の擦れる音だろうか。

    「左馬刻さん、マジで?」
    「あ?なんだよさっきまでお前ノリノリだったろうが。」
    「いや…いざやるってなると音声残るのちょっと恥ずいっていうか。」
    「どうせお前は聞かねぇんだから良いだろうが。」

    さっきも一郎の声は聞いたというのに棘のない声色なだけでドク、と心臓が甘やかにハネた。どうかしている。嫌になった、本当に。それなのに身体はこの優しい声がどろどろに甘やかしてくれるのをまだ覚えている。苦しいのに、忘れていなくて嬉しいと俺の中のsub性が喜んでいる。

    「……じゃあ、始めますよ?」
    「ん……はやく、命令しろよぉ」
    「左馬刻さん、じゃあKneel?」

    背骨からゾワゾワっと震えのような歓喜が駆け巡って気付いた時には床にペタンと座っていた。まだ流れてくる音声は何か話していたが俺の脳みそは久々に貰えた自分のDomからの"Command"にトロトロになって流れてくる音声を処理する余裕はなくなってしまったのだ。

    「あ、いち………」

    そう口にしながら褒めて、と目線を上げ一郎を見ようとして。自分のしている行動を理解してしまった。当たり前に目の前に広がる殺風景。一郎どころか自分しかそこにはいなくて。褒めてくれるはずのものは何にもなかった。知ってたはずだろう、音声だけ聞いたって何にも満たされない事。この音声がスパイスになるのは自分のDomが傍に居るからだ。今の自分が聞いたって現実が浮き彫りになるだけじゃないか。

    「いちろう……。」

    Rewardは貰えないこと分かっていたはずなのに。"Command"だけでも貰えれば少しは良くなるかもしれないなんて見通しの甘い考えで一郎の声を聞いたりなんかして。頭では分かっているのに、身体はRewardが貰えるのを健気に待ち続けようとしているかの様に動けない。

    「いちろう………」

    上手にKneelしてんだろ、褒めろよ。褒めて甘やかしてあの愛が垂れ流されてるみてぇな瞳でこっちを見て。

    あーあ、馬鹿みてぇ。早くKneelをやめてコーヒーを買ってきて待ってくれている二人のもとに帰らなきゃいけねぇのに。そんで俺達は勝ち進まなきゃいけねぇのに。一郎に、勝たなきゃいけねぇのに。

    「……………偽善者が。」

    そう口に出してみても、Kneelはしばらくやめられなかった。





    あの後呼び出しギリギリに控え室に戻った俺を見て銃兎は小言を言おうと口を開いたが俺の顔を見て口を閉ざした。その後もう一度口を開いて後で飲めよとコーヒーを渡してくれる。正直そこからバトルが終わるまでの事はあまりちゃんと覚えていない。必死に負けるわけにはいかないという思いだけを抱えて一郎達の前に立っていた。願いは叶ったようだった。勝ってホッとしたしスッキリしてバトル自体は楽しく興奮したがあまり嬉しくはなかった。勿論そんなものはおくびにも出さなかったが。

    控え室に戻る途中で一郎に会った、弟達が居ないところを見るとわざわざ俺に会いに来たらしい。

    「左馬刻」
    「…………なんだよ。」

    怒る元気はなかった。バトルで感情を出し切ったのもあるがさっき自分が馬鹿をしたせいでsubdropしかけなのだ。早く控え室に戻りたいと言うのが本音だった。

    「………今だけでいい。」
    「あ…?」
    「今だけでいいから全部嫌なこと忘れてプレイしよう。」

    流石に目を見開いた。まあ俺の体調が良くないのもそれがダイナミクスに関係してるのも見抜いてはいるだろう。でも、パートナー解消の話の方かとまで思ったのにプレイしようときた。何でだよ、馬鹿じゃねぇの。パートナー解消する前の餞別か何かかよ?一回欲求不満なくしてやろうって?ふざけんのも大概にしろよ。

    「やんねぇ。」
    「左馬刻」
    「絶対やんねぇ。」
    「っ、左馬刻!!」

    一郎は昔から"Glare"をよく使う。その矛先はいつも俺ではなかったけれど横で多少浴びていたから知った気でいた。だから、油断した。

    「っ………!」

    一郎の本気の"Glare"を真正面からまともに喰らってsub性が目の前の男に従いたくて支配されたくて堪らなくなって立っていられなくなった。グシャって崩れ落ちるように座り込んで一郎に洋服を捲って腹を見せた。身体は歓喜でガクガク震えていた。

    「ぁ、いち…ろ」

    嬉しい、"Glare"を使ってでも俺を従わせて体調不良を解消させようとしてくれて嬉しい。"Glare"を自分のDomに使われるとdropするsubは多いらしいが頭のどこかでこれは心配された故の強引な"Glare"だと理解していた左馬刻は逆に嬉しかった。体調不良を理解しながらそのままにするようなDomじゃない事が嬉しくて。見捨てられていないことが嬉しくて。

    「いち、ろ…」
    「うん、ちゃんとお腹見せれて偉いな。Good boy」
    「ぁ………あ…」

    心の中がじゅわっと何かで満たされていくのを感じた。今俺は、一郎とプレイしてるのか。俺がずっと外さないでいい子に【Color】をしてたからそのご褒美?ねぇ、なんで。

    「いちろ、いちろぉ……」

    口に出して確かめたいことは沢山あるのにトロトロになった脳みそは同じ言葉しか紡げない。そんな俺を見てちょっと困ったような嬉しそうな顔をして一郎は口を開く。

    「ずっとそうやってお腹見せてくれるのとっても嬉しいんだけどさ、ここMTCの控え室の前だし色んな人通るからちょっと移動できるか?ちゃんとしたプレイ二人きりでやろう。」
    「ぁ…う、する…あ、でも…」
    「ん?」
    「力…入んねぇ、いちろうのGlareちゃんと浴びるの初めてだから…おれ」
    「身体ガクガクさせて気持ち良さそうだったな、抱っこする?」
    「っ……う、るせ。はやく連れてけ…だぼ」

    一応口にはしてみたが許可されると思わなかったのだろう。一郎が嬉しさで破顔していたがもう俺は一郎に甘やかして欲しくてどうにかなりそうだったので指摘をする余裕もなく大人しく抱っこされた。

    「勝手に空き部屋使ってバレたら怒られっかな…」
    「さっき俺様使ったから大丈夫だろ……つか、何降ろそうとしてんだよ。」
    「ん…?」
    「ん、じゃねぇんだわ。このままでいろや。」

    俺を降ろそうとする薄情な一郎の首に腕を回してぎゅぅ、と抱きつく。俺だけ必要としてるみたいでムカつくんだよ。

    「でも左馬刻の顔見たいんだけど。」
    「あ…?仕方ねぇな…おらよ。」

    横抱きにされていた向きを変えて一郎の正面に回り込む。そのまま自分の足で一郎の腰をしっかり抱えて固定した。

    「控え室で何してたんだ?」
    「あ?…そんなのどうでもいいだろ。早くしようぜプレイ」
    「ん?左馬刻、プレイならもうしてるだろ。」

    は?と一郎を思わず見た俺に真顔で告げた。

    「話して 左馬刻」
    「ぁ、う…ぁ?」
    「ゆっくりでいいから。」
    「控え室、控え室で……一郎とのハメ撮り音声聞いた。」
    「どうして?」
    「ぁ…バトル前に一郎に会っちまったから体調悪くなって、それで……」
    「そっか。気持ち良くなれた?」
    「…………。」
    「左馬刻?」

    俺の頭を優しく撫でる手が気持ちいい。
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