猫と怪物 10の裏 ずっと泥の中でもがいているような気分だった。
絶えず怪異が耳元で囁き、体の中を何かが蠢いているようだ。
アレを食べたせいだと思うのに、もっと喰らわないとだめだと衝動がこみあげる。
昼間は姿が見えないのに不快な声だけが耳の中をこだまして、苛立ちを抑えきれない。
食事はする気になれない、眠るとオレが主の体を貫く夢を見て目が覚める。
持ち上げた手が、自分なのかあやかしなのかわからない。
それでも、主を食われたくなかったら喰らい続けるしかない。
オレの頭を埋め尽くす醜い声を裂くように、ずっと聞きたかった声がした。
「なにをしているのですか?」
なにを?オレは今なにを?
このあやかしどもが、
「こいつら主のことたべたいんだって」
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