愛でて愛でられる太郎の手が、好きだ。
節ばって少し大きく、いつも何かで汚れていて、いつも何かを弄っている。ある日は破れた襖の修理、別の日は割れた窓の交換、壊れた扉の補強、動かない機械の整備、道具の手入れ。働き者の手だ。
その手にかかれば、器用な指で転がされ、主がヨシとして放されたものの殆どは直って戻ってくる。とても優しい手だ。
ある晩。
寝る支度をしていると、背中にぴたりと太郎がくっついてきた。
「貴方に触れてもいいですか…?」
と耳元で囁きながら、あの手が俺の腰を掴み、下腹部の輪郭を確かめる様に滑って腕を回す。もうそれだけで腹の奥が疼く自分に少し呆れる。
しかし、連れ添ってそこそこ経つ俺には分かる。この「触れる」は情交ではなく、純粋な愛撫の方であると。太郎曰く、ただただ和さんに触れたい時があるらしい。俺は愛しい年下男の腕に手を重ね、「もちろんだ」と答えた。
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