未知の季節が運ぶ風「これもピンボケ、こっちもダメ」
いくつかの写真をテーブルへ広げ、チサトは落胆した声をあげた。
彼女が撮影を試みたのは例の隕石――場所が悪かったのか、撮影の準備をする暇がなかったからか、機材の問題なのか、本人の技術が足りないのか、あるいはその全てが原因なのか。どれもこれもぼんやりとした暗闇が残るだけで、肝心の流れ星は撮れていない。
「カメラがあるのはありがたいけど、やっぱり勝手が違うわね」
エクスペルへ降り立って数ヶ月。彼女は逞しく、忙しなく新生活を謳歌している。
リンガでは学者や技術者とコネを作り、ラクールでは出版業界とコネを作り、ギルドにも顔を出した。その傍らには常にディアスの姿があった。
青い長髪の大男と赤いショートヘアの女性という対照的な出で立ちは、本人たちにその気がなくともよく目立つ。
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