1.
「まったく君って言う人は……」
任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。
「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」
光秀さまのおっしゃることは一理ある。
私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
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