別れた時空の先には意識を戻したときに見えたのは青空だった。
雲は多少あるものの、梅雨の合間に見せた青い空。
そして手にしているのは花束。入院中のおばあちゃんに渡そうと持ってきたもの。
-帰ってきたんだ。
梓はそのことを実感する。
体感的には数ヶ月前に何者かに呼ばれたような気がし、そして次に目を覚ましたときにいたのは異世界。怨霊がうごめく世界でさまざまな人と出会い、そして……恋をした。
だけど、その恋の結末は悲しいもの。
途中想いが通じたと感じたのは気のせいだったのかもしれない。
初めて恋をした相手は何よりも帝都の未来を考え行動する者。その姿勢に惹かれたが、相手にとってはやはり自分の存在はそこまでのものではなかったらしい。
「幸せに」。その言葉が示していたのは別れ。
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