断捨離 わずかにざらざらとした質感が特徴の、銀色のシンプルなペンだった。多分少しいいやつ。百円均一でまとめ買いするような気安く使い捨てできるような品ではない。大切に使っていたものの、インクはとっくに切れてしまっていた。
本当は替え芯を買って、これまでと同じように使い続けたかった。けれどこのペンは表面にメーカーも何も書いておらず、おまけにもらいものだったから結局交換には至れていない。捨てるに捨てられず、今やただのペンケースの肥やしになっている。
「これ、まだ持ってたの?あんた物持ちいいよね」
「え、あ」
私のペンケースから勝手にそのペンを抜き取ったその人。私にこのペンをくれた張本人だった。ぱちんと比較的大きめな音を立ててペン先が飛び出る。
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