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    kotobuki_enst

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    DONE人魚茨あんのBSS。映像だったらPG12くらいになってそうな程度の痛い描写があります。
    全然筆が進まなくてヒィヒィ言いながらどうにか捏ね回しました。耐えられなくなったら下げます。スランプかなと思ったけれどカニはスラスラ書けたから困難に対して成す術なく敗北する茨が解釈違いだっただけかもしれない。この茨は人生で物事が上手くいかなかったの初めてなのかもしれないね。
    不可逆 凪いだその様を好んでいた。口数は少なく、その顔が表情を形作ることは滅多にない。ただ静かに自分の後ろを追い、命じたことは従順にこなし、時たまに綻ぶ海底と同じ温度の瞳を愛しく思っていた。名実ともに自分のものであるはずだった。命尽きるまでこの女が傍らにいるのだと、信じて疑わなかった。





     机の上にぽつねんと置かれた、藻のこんもりと盛られた木製のボウルを見て思わず舌打ちが漏れる。
     研究に必要な草や藻の類を収集してくるのは彼女の役目だ。今日も朝早くに数種類を採取してくるように指示を出していたが、指示された作業だけをこなせば自分の仕事は終わりだろうとでも言いたげな態度はいただけない。それが終われば雑務やら何やら頼みたいことも教え込みたいことも尽きないのだから、自分の所へ戻って次は何をするべきかと伺って然るべきだろう。
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    DONE膝枕する英あん。眠れないとき、眠る気になれないときに眠りにつくのが少しだけ楽しく思えるようなおまじないの話です。まあ英智はそう簡単に眠ったりはしないんですが。ちょっとセンチメンタルなので合いそうな方だけどうぞ。


    「あんずの膝は俺の膝なんだけど」
    「凛月くんだけの膝ではないようだよ」
    「あんずの膝の一番の上客は俺だよ」
    「凛月くんのためを想って起きてあげたんだけどなあ」
    眠れないときのおまじない ほんの一瞬、持ってきた鞄から企画書を取り出そうと背を向けていた。振り返った時にはつい先ほどまでそこに立っていた人の姿はなく、けたたましい警告音が鳴り響いていた。

    「天祥院先輩」

     先輩は消えてなどはいなかった。専用の大きなデスクの向こう側で片膝をついてしゃがみ込んでいた。左手はシャツの胸元をきつく握りしめている。おそらくは発作だ。先輩のこの姿を目にするのは初めてではないけれど、長らく見ていなかった光景だった。
     鞄を放って慌てて駆け寄り目線を合わせる。呼吸が荒い。腕に巻いたスマートウォッチのような体調管理機に表示された数値がぐんぐんと下がっている。右手は床についた私の腕を握り締め、ギリギリと容赦のない力が込められた。
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    DONE茨の相談に乗ってあげるあんずさんの茨あん。進展しないから落ち込んでたとかそういうわけではないけどご本人からエールをもらえてちょっと浮かれてる茨。
    会話をメインに話を進めようとするのは難しいね……!
    その瞳に焼べるのは「……どうしても仕留めたい案件があるんですけど」
    「うん」
    「自分には難しそうなんですよねぇ。こういう時、あんずさんならどうします?」

     茨の珍しく弱気な発言に、あんずは返事の代わりに向き合っていた雑誌から正面に座る茨へと視線を移した。当の茨はあんずの方は見ておらず、ノートパソコンを見下ろしてキーボードを叩いている。
     夜のCOCCIには茨とあんず以外の客はいない。つい先ほど店員がラストオーダーに注文したコーヒーとカフェラテを運んできて、今はキッチンの奥に引っ込んで店じまいの支度をしているようだった。茨がキーボードを叩く音と遠くでカチャカチャと食器のぶつかる音だけが店内に小さく響いている。二人は四人用のテーブルに荷物を広げて、何か打ち合わせをするわけでもなく各々の片付けるべき業務をそれぞれ進めていた。会話はなく、最後に言葉を交わしたのは「遅くなってきたね。そろそろ切り上げる?」「そうですね。キリの良いところで引き上げましょうか」という一時間ほど前のやりとりであった。結局どちらも進んで荷物を片づけ始めることなく、こうして閉店ギリギリまで店に居座っている。
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    DONEあんず島展示① 寒い日の茨あん
    地獄まで道連れなことに定評のある茨あんですが、一度茨のいるところまであんずさんを引き摺り下ろした後に共にまた上り詰めてほしいという概念の話です。
    その身体のぬくもりよ「おかえり、早かったね」
    「会食をドタキャンされてしまったもので」

     もこもこのルームウェアで着膨れした彼女は足先までルームソックスに包み、その上毛布に包まりながらソファに縮こまっていた。限界まで引き延ばしたであろう袖口に収まりきらなかった指先が膝上に置かれたマグカップを支えている。冷え切った自分とは対照的に、随分と暖かそうな格好だった。暖房の効いたリビングは空っ風に吹き付けられた体をじわじわと暖めていく。

    「食べてくると思ってたから何にも用意してないや」
    「連絡を怠ったのはこちらですのでお気遣いなく。栄養補助食品で済ませます」
    「……用意するからちゃんとあったかいご飯食べて。外寒かったでしょ」

     日中の最高気温すら二桁に届かなくなるこの時期、夜は凍えるほどに寒くなる。タクシーを使ったとはいえ、マンションの前に停めさせるわけにもいかず少し離れた大通りから自宅まで数分歩いただけでも体の芯まで冷え切るような心地だった。愛用している手袋を事務所に置いてきてしまったことが悔やまれたが、家に帰ってきてしまえばもうそんなことはどうでもいい。
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    DONE初夜失敗した茨あん。据え膳は自分で用意するタイプの茨。「で」は「電気消せばいいですか」の頭文字です。
    下拵えは丁寧に 意外とロマンチックなシチュエーションを選びがちだというのは付き合ってから知ったことだ。告白はホテルの高層階でのディナーの最中だったし、記念日の贈り物は大きな花束。初めてキスをしたのは交際から三ヶ月後に、夜遅くに車で海浜公園に連れていかれたときだった。もし彼との交際に更に先があるのならばどんな女の子でもうっとりと惚けてしまうようなシチュエーションを用意してくるに違いないのだろうと思っていた。
     だから少し油断していた。共同の案件を終えたあとに慰労の名のもと二人きりでディナー——というよりも夕食を兼ねた普通の反省会——を行うのは初めてではなかったし、その会場に彼の家を提案されたのも内食の気分だっただけだろうと考えた。そもそも公私混同を嫌う人でプロデューサーとして顔を合わせるときに恋人としての何かを与えられたこともない。家に呼ばれ彼の手料理に舌鼓を打ちもちろん仕事の反省点や改善点も共有して、まさかそのまましっとりと口付けられベッドに縫い付けられるとは一切考えになかったのである。
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    DONEこの前の人魚ひよあんの美味しいとこだけ書いたやつ。海蛇をうまいことだまくらかすなり丸め込むなどして地上に逃げ帰ったあんずちゃん。成功したとは言ってません。またもや突発工事なので色々と大目に見てください。ネタは熱いうちに書け。
    帰巣 なんとなく避けていた。それを忌む男はもう隣にはいないというのに。

     白身魚をフライにしてタルタルソースをかけて、たっぷりのレタスも添えたフィッシュサンド。それから赤と緑のコントラストが映えるBLTサンド。あまり悠長にしている時間はないというのに、昼食を選ぶために棚に伸ばした右手は二つのサンドイッチの間を何度も往復していた。
     スタミナの付きそうながっつりしたメニューがいいなと思っていた。今日はこれから面談が二件。復職はそう簡単じゃなかった。こういうときは照り焼きチキンのサンドがあると都合がいいのだけど、生憎今日は売り切れているようだった。
     背後からごほんと大きな咳払いが聞こえる。控えめに振り向けば、スーツ姿の年配の男性がじっとりとこちらを見ていた。サンドイッチコーナーを独占しすぎてしまったらしい。小さく頭を下げて、もう一瞬だけ悩んだ末にフィッシュサンドを手に取った。レジの横に並んでいたミネラルウォーターも一緒に手に取って会計を済ませる。私ももういい加減立ち直り、そして忘れなくてはならない。あの男の束縛も、あの世界の抑圧も。
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    DONE偶像ちゃんの人魚姫パロのひよあん。突発工事。なにかと注意。世界で一番日和姫が自分の腕の中に飛び込んできた女の子を殊勝に家に返してやるわけがないんだよなあ。
    泡と消える 目が覚めると目の前にそれは美しい半裸の男が寝転んでこちらをじっと見つめていたものだから、あんずはひどく驚いて小さく悲鳴を上げてしまった。ベッドの上で縮こまり驚きを通り越して怯えの交じった表情を見せるあんずにも男は特段気を悪くした様子はなく、微笑みながら上体を起こした。身に付けた宝飾品が揺れてしゃらりと音を立てる。

    「ああ良かった、目を覚ましたね」

     男はベッドに手をついて起き上がり、恋人同士の甘い寝起きのようにあんずの髪に指を差し込んで二、三度梳いてみせた。あんずが横になったまま膝を抱えて、かけられていたシーツで顔の半分を覆ってしまった理由は見知らぬ美男子が隣で寝ていたからというだけではない。上質なホテルのスウィートルームのような部屋の中はまるで宙を泳ぐように色とりどりの美しい魚たちが好き勝手に漂っているし、目の前の美男子もまた腰から下が魚のようなかたちをしていたからだ。半魚人、人魚と言うべきか。本来二つの脚があるはずの場所は真珠色の鱗で覆われ、足先には絹の衣のような翠玉色の尾びれが生えている。
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    DONEなんとデートをしていたらしいひよあん。あんずちゃんの察しが悪いぽけぽけした雰囲気が大好きですがそれと同じくらい真意に気づいてしまったときの恐ろしさも好きです。
    またの機会に 美人の真顔は怖い、なんて言葉があるけれど、怒ってる美人は眉を釣り上げていようが無表情だろうが等しく恐ろしいのだと知った。撮影用のカメラを前にしたように穏やかな笑みを見せるその人は、不機嫌と不満を隠そうともしなかった。

    「……ぬるくなっちゃいますよ」

     何を語るでもなくただ批難を視線に乗せて浴びせられるのに耐えきれず先に口を開いた。巴さんの手に収まるプラスチックのカップはひどく汗をかいてその手を濡らしている。ベンチの下は木陰になっているけれど、それだけでは暑さは凌げない。何もかもを溶かすような陽射しはカフェラテに混ざる氷だってすぐに溶かしてしまうだろう。

    「……そうだね、飲み物に罪はないからね」

     巴さんはようやく緑色のストローに口をつけて中身を吸い上げた。だがすぐに「薄いね」などと言って口を離してしまう。味が薄いのは時間を置きすぎて氷が解けてしまったからだろうに。それとは対照的に私の手元のキャラメルラテは巴さんの視線から逃げるために頼りすぎてほとんど残っていない。カップの汗が一滴垂れて、おろしたてのスカートの色を変えた。
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    DONE # 絶対に執筆者がわからないドルあん小説 という企画にて『秘密』というテーマで書かせていただいた司あんです。自分らしさを消せるように頑張りました。
    お気に入りポイントは司の台詞の「待ち倦む(まちあぐむ)」です。「待ち焦がれる」とかよりもうんざり、げんなりした意味合いが強い言葉らしいです。そろそろ余裕たっぷりで待つのにもうんざりしているかもしれない。
    口封じ「こんな夜分に間食ですか、お姉さま」

     あんずは大きな瞳をぱちくりとひとつ瞬かせて、それから長いこと油を差していない機械みたいにぎこちなく声のした方を振り向いた。声をかけた司はまるで悪戯が見つかってしまった子供のようだなと思う。
     資料やらで散らかったあんずのデスクに広げられた簡易な包装のパウンドケーキは手作りの品だろうか。バナナのような白っぽい果物が中に散りばめられている。もぐもぐもぐ、ごっくん。あんずは口の中のものを綺麗に飲み込んでから、ようやく口を開いた。

    「これは、夕飯だからいいの」
    「おや、それっぽっちを夕食の代わりになさるおつもりで? あまりお体に良いとは言えませんよ。近頃は毎日三食栄養Balanceの整ったものを召し上がっていると伺っておりましたが——、どうやら虚偽の申告だったようですね」
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    DONEバレンタインの勝者ひなたくんさんが本命チョコを貰うまでのお話です。突発工事で書いたのでちょっと雑というかひなたくんの気持ちが色々忙しくなっちゃった気もしますが、まあそんなところも恋する子の醍醐味ということでどうかご容赦を……。
    そのチョコレートは愛の形をしている そのチョコレートは愛の形をしている。
     彼女から送られるチョコレートはハートの形をしている。心の形を模したそれ。愛の姿を表したそれ。彼女からの愛と思いやりと労いと義理の詰まったそれ。市販の板チョコを材料に大量生産されたそれ。両手両足の指でも足りない程の人数に等しく分け与えられるそれ。形だけの愛を渡される、それ。
     ——なんて。少し前まで、そう思っていた。





    「ひなたくん、暇ならちょっと手伝って」
    「いいよいいよっ。何すればいい?」

     背後から手助けを求めたあんずさんは、お気に入りのピンクのエプロンを纏って立っていた。邪魔にならないようにシャツの袖は肘より上で腕まくりして、髪はいつもより高めの位置でポニーテールにしてある。先ほどから一人でキッチンに籠っていた彼女が声をかけてくれたのが嬉しくて、二つ返事でOKし立ち上がる。暇つぶしに見ていたテレビはもう消してしまおう。
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    DONE付き合ってないけどキスはする茨あん。喫煙表現あり。今の時代、煙草は薬や通院で楽に止められるとか聞きますがそのあたりあんずさんはどうなんでしょうね。
    コールドターキー この部屋の監視カメラは右奥の天井に一台。唯一の出入り口であるドアの方向を向いて部屋全体を見渡せる場所に設置してある。とはいえ、カメラが一台だけではどうしても死角というものが生まれてしまう。この部屋で言うならばカメラの真下の壁際などは撮影可能な範囲外であり、何をしようが記録には残らない。違和感のないように可動式のホワイトボードをそちらへ持っていけば、後から映像を確認されたとしても不審がられる可能性は低い。このような穴場スポットをそのままにしておくのは不正や悪事の温床になりかねないが、自身もこうして悪事に使用している以上、簡単になくせはしないのだ。
     彼女の下唇をやわく食む。どう応じればいいのかわからないらしい彼女はされるがままに、けれど二の腕のあたりの袖をぎゅっと握ってくる。このまま戸惑った様子の彼女を堪能してもよかったが、もっとわかりやすい触れ合いがしたくて唇の間から舌を忍ばせた。こちらのキスの方がよっぽど慣れている彼女は勝手知ったる様子で舌を伸ばし、舌を絡めながら表面同士を擦り合わせてくる。唾液が口の中で湧いて出てきて、舌を動かす度に水音が立つ。彼女の両耳に指を差し込めば、服を掴む手の力が強まった。
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    DONEスバあん。愛しているのでいざそういう時が来たら自由にさせてあげたいプロデューサーと無関心っぽさが普通に寂しいスバル。
    女神の深情け「スバルくん」

     声がした方を振り向けば、スーツ姿のあんずが小走りでこちらへ駆けて来ていた。一昨日ぶりに見る彼女の姿に思わず駆け足で迎えに行く。

    「あんず〜!やっほやっほ!そんなに急いでどうしたの?」
    「わっ、こら、抱きつかないで」

     腕の中に閉じ込めたあんずが腕をじたばたと動かす。三年生になってからというもの抱き締めることにいい顔をしなくなったあんずだけれど、なんだかんだ許してくれるときと本当に駄目なときの違いくらいはわかる。周りにファンの人とかスタッフとか、英智先輩とかがいるときは駄目なとき。本当に駄目なときは真面目な顔で怒られるけど、許してくれるときはふわ〜とした顔で「しょうがないなぁ」って笑ってくれる。今だって一応周りを確認して、廊下に他の誰もいないことを確かめてから抱きしめたのに。あんずに怒られるのは寂しいので、仕方なく腕をゆるめて彼女を解放した。あんずは少しよれてしまったスーツのジャケットを正すと、神妙な顔つきでこちらを見ながら自らの首筋を指差した。
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    DONEかわいいがゲシュタルト崩壊。茨→あんずのようで、あんず→茨についてのかわいいの話です。茨はゲロ甘。作中、昆虫が登場するので苦手な方はご注意ください。
    かわいいという概念及び定義について それは腹部を丸出しに寝転がる猫だった。
     媚びるように胴体をしならせ、前足は揃えて右側に捻り後ろ足はぱっかりと開いていた。尾の先はくるりと弧を描いている。野生を忘れ人間に服従し糧を得る道を選んだ、憐れで無様な畜生の姿だった。一般的に猫は愛くるしい愛玩動物として認識されているようなのでこんなこと人前でわざわざ口に出したりしないが、茨の猫に対する印象はそんなものだった。

    「……かわいいですね」
    「ね、かわいいでしょう。学校に迷い込んだみたいで、クラスのみんなでたまに餌をやっているんです」

     だからこそ、茨はふいに自分の口から飛び出た言葉が信じられなかった。かわいい?これが?どこが?
     茨にとって、欠片も思っていないことをまるで心からの言葉のように語るのは日常茶飯事であった。もう一軒?是非ご一緒させて頂きます!いえいえとんでもございません、××さんのお話、学ばせていただくことが多く自分も勉強になっているんですよ。写真より実際にお会いした方が美しく見えるというのは本当のようですね!近くでお話すると緊張してしまいます、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。エトセトラエトセトラ。これで自分やEdenが動きやすくなるのであればなんてことはない。自分の本音などこの世界には不要で、自分がより上にいくために必要な言葉だけあれば良かった。話し相手を不快にさせないために適当に話を合わせて、お世辞を言って嘘をついて。そんなことは当たり前のことで、今この場においても、彼のためにかわいいなどという方便を使うことも当然であるはずだった。
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    DONE第三回茨あん利き小説企画に参加させていただいた作品です。振られたけど諦めて次に行けなかった茨の話。ぶっちゃけ自分でも話があっちこっちにいってちょっと読みにくいなと思いました。
    エラー・アンド・トライ「自分とお付き合いしていただけませんか?」

     七種くんは今しがた、目の前の自販機で買ったばかりのココアを差し出しながらそう言った。けれど私はその言葉にあんまりにも驚いて、それを受け取ろうとした手が止まってしまった。

    「……………………え?」
    「えぇえぇ勿論、あなたが『プロデューサー』としての立場も仕事も大切に思っておられることは重々承知しております!ライフプランなんて微塵も気にされていないことも、そして何より愛するアイドルにケチがつくようなスキャンダルなんて絶対に起こせないと己を律していらっしゃることも!」
    「いや、あの、私」
    「ですが自分なら、あんずさんにそのようなご心労をおかけする心配はありません。同業のようなものですからあんずさんの仕事には誰よりも理解のある自信がありますし、アイドルとしての自分のブランディングは完璧にコントロールしております!自分と付き合うことであなた自身にもあなたの大切なアイドルにも、絶対に不利益を与えることはないとお約束できますが」
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