手のひらから伝わる、感情部屋の中。ベッドが軋むのは、ふたり分の体重のせいだ。
しかしそれは、フェンリッヒの首にヴァルバトーゼが手を重ねている、なんとも物騒な現場だった。
簡単なこと。
ヴァルバトーゼは、今日のプリニーたちの質が殊更悪く、イラついていた。
イラついているということは、判断能力が鈍っている。フェンリッヒもイラついていたのか、普段仕掛けないタイミングで仕込んだ。
──人間の血を。
「血は飲まぬ、と──何度言ったらわかるのだ」
そう言ったヴァルバトーゼは、フェンリッヒを自室に連れ込み──今に、至る。
自分から連れてきて首を絞めようとしていたというのに、ヴァルバトーゼはどこか苦悶の表情を浮かべていた。
目も口も閉じて首を差し出すように顎を上げていたフェンリッヒの、口が開く。
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