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    村人A

    @villager_fenval

    只今、ディスガイア4の執事閣下にどハマり中。
    小説やら色々流します。

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    村人A

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    バレンタインヴァルアル小説
    今回はディスガイアRPGのイベント後の話ですので、イベスト読んでない人はネタバレに注意です!
    これくらいの距離感が好き。

    #ヴァルアル
    varial

    ずっと、隣で。魔界学園。それは、悪魔たちが通う学校。といっても、マトモな悪魔が学校に毎日通う訳が無い。
    学校にキチンと通う者は不良、休んだり好き勝手するのは優等生。
    そんな学園であったゴタゴタ。『超魔熱血恋愛細胞MK2』を巡る事件が幕を閉じ、静かになった学園の屋上で、並んで座る影があった。
    沈黙が包むふたりの合間を、風が縫う。

    「…いつまで、その格好をしているつもりだ?」
    「あら、いけませんか?わたくしの生前はこんな服装を着る機会がありませんでしたし、新鮮ですもの。もう少しくら、ね?」

    ふふ、とイタズラっぽく笑い、眼鏡の奥の目を細めるアルティナに、ヴァルバトーゼはなんとも言えぬ表情を返した。
    今ふたりは、並んで座りながらチョコを食べていた。それはアルティナが持ってきた件のチョコではない、また別のものだ。

    「…ねぇ、吸血鬼さん」
    「なんだ?」
    「わたくしが持ってきたあのチョコ─あれに本当にわたくしの血が入っていたとしても、食べてくれましたか?」
    「約束だから、食べると言って口に入れようとしただろう」
    「ええ。ですが…」

    何と言おうかと言い淀むアルティナ。
    その暗い表情を見て、ヴァルバトーゼは口を開く。

    「…以前」
    「え?」
    「以前、言っていただろう。天使が体を傷付けることは天界の法によって禁止されている、と。その禁忌を犯す覚悟を持って来たというのなら、俺とてその心意気を無下には出来まい」
    「覚えて、いらっしゃったんですの?そんなに前のこと」
    「言う程前ではあるまい。それに俺は記憶力がいいのでな。…400年前の約束を、今も覚えている程には、忘れっぽくない」
    「…!」

    クク、と笑いながらチョコを口にし、「…甘いな」と呟く。

    「それで、本当にあのチョコにはお前の血が入っていたのか?」
    「…さあ、どうでしょう?ご想像にお任せしますわ」
    「……お前まで、血を用意してくるのではあるまいな」
    「あら、それは狼男さんのお役目でしょう?わたくしが奪えるはずはありませんわ」

    クスクス、とアルティナが笑う。
    真意の分からないその笑みに、ヴァルバトーゼは苦笑いを返す。

    「…全く、油断ならぬ相手が増えたか」
    「ふふ、なら覚悟していてくださいな。もう、あの時のようにお別れすることはありませんし、約束もまだ果たしていないのですから」
    「そうだな。もうあんな別れ方はさせぬ」
    「守ってくださるんですよね?」
    「だっ、だからあの言葉はお前に言ったのではなくてだな…!」

    旅の途中に零した爆弾発言を掘り起こして言うと、分かりやすく慌てるヴァルバトーゼ。
    そんな彼を見て意地悪く微笑むアルティナに、溜息をこぼした。

    「…揶揄っておるつもりか。悪魔を揶揄うとは…全く、妙な天使─いや、お前は人間の頃から妙だったな」
    「あら、失礼ですのね。吸血鬼さんが分かりやすいだけですのに」

    その言葉に「そんなに分かりやすいか…?」と少しか細い声で返す。
    アルティナは、そんな彼に小指を差し出した。

    「ねえ、約束してくださいませんか、吸血鬼さん?あの頃の約束を果たすまでは、わたくしをお傍に置いてくださる、と」
    「お前を、傍に?」
    「ええ、“仲間”として」
    「そんなもの、当たり前に決まっている」

    どんな関係であれ、隣にいるというのはそれだけで奇跡。
    “今以上の関係”など、大それたことは望まない。そう彼女らしい謙遜の気持ちが知らぬうちに込められていたのだが、そこには気付かないらしい。

    「誰が何と言おうと、フェンリッヒも、小娘も、デスコも、小僧も─そしてアルティナ。お前も含め、全員俺の大切な仲間たちだ。これからも、それは変わらぬ」
    「絶対、ですか?」
    「ああ、それこそ約束だ」
    「そんなに簡単に約束を口にしたら、また怒られてしまいますわよ」
    「だが本当のことだ」

    先のことを、未来のことを。
    そんなもの誰も分からないのに、この吸血鬼は当たり前のように“変わらない”と言い切る。
    向う見ずのような、まるで本当にそうだと信じさせるような。

    「だが、それとお前の血を吸う約束はまた別だ。
    すぐにお前をすぐに極上の恐怖へ叩き落としてやろうッ!!」
    「ええ、頑張ってくださいね」

    高らかに言い切って指を指すヴァルバトーゼに、アルティナはいつもの笑みを向ける。

    (でも、あなたはきっと知らないでしょう。
    わたくしの恐怖は、『あなたがいなくなること』なのだと。
    恐怖の大王にあなたが飲み込まれてしまったあの時、どうしようもなく身体が震えて。
    そう素直に伝えたのに、それは自分のことではなく恐怖の大王を恐れたということになる、それでは悪魔のプライドが許さない、なんて…

    もうこの先、わたくしが怖がることは、きっとない。
    だってこうして、『ここにあなたがいる』んですもの。
    わたくしを恐怖に叩き落とすためには、きっと気が遠くなるほど長い計画になる。

    だから──)

    「楽しみにしていますね、吸血鬼さん」
    「楽しみにしてどうするのだ!?」

    悔しがるあなたを。
    必死なあなたを。
    頼もしいあなたを。

    これからもわたくしは見ていきたいと思います。


    ──ずっと、隣で。

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    「ぶち殺すぞ小娘」

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    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

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    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

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    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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