僕は、必死に走った。
走って、走って、走って、
何かに躓いて、呆気なく地面に倒れる。
振り向いたら、見下ろしている…目だけがギラギラと光った怪物。
いやだ…来ないで!!
そう叫んだつもりが、声が出なかった。
怪物の手が、僕に伸ばされる。
そして…
「!!!!!」
ハッと息を吸い込んで、急激に現実に引き戻される。
目の前には、あの目がギラついた怪物も、むせ返るほどの甘い匂いも、全てが最初から何も無かったかのようだ。
それが、今まで何度も見ている夢だと知らせてくれる。
「……はぁ」
起き上がる気力も出ず、溜め息だけ吐いて目を片手で覆う。寝て起きたばかりだと言うのに、身体の疲れも取れておらず余計に疲れた気がする。寝汗も酷くかいてしまった。
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