『prince』の始まり 冬の午前4時、ろくな遊具もないその小さな公園はほとんど真っ暗だった。
「……揃ったな」
その暗闇の中にぼんやりと浮かぶ影たちに柳はそう言い、公園の外の道路に目を向けた。 通行人は1人もおらず、世界は薄ら寒い静けさに満ちている。 跡部が手配したという車の姿はまだ見えない。
これから、かつて王者立海のレギュラーだった自分たちは、政府に牙を剥く反逆者になる。
前から違和感はあった。 ある先輩は英語を学んで通訳の仕事をしたいと言っていたのに、政府から推奨された広告代理店に就職した。 ある同級生は農業高校に進学したがっていたのに、推奨された通り立海大付属高校に上がるという。 政府に言われたからと言いながら、かといって全然嬉しそうじゃない様子で従う人々に、なんともいえない気色の悪さを覚えていた。
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