EGOISTE「ふーん、これが友一君の香りですか。」
真次が、高級そうな小さいガラスの瓶の蓋を開けて、小さな紙に香水を吹き掛けクンクンしていた。
照明を落とし気味にしたリビングのテーブルには包装紙が畳まれている。
「買ったんだ?」
「もちろんです。活気のあるスパイシーなトップノートからはじまり、ミドルノートからラストノートの爽やかさは草木の自然を感じる現代的な……」
「恥ずかしいから読み上げるなよ。」
「つけてもいいですか?」
「いいけど……」
真次はトントンとソファーの空いた席を軽くたたく。
「こちらに来て下さい。」
「え? ……俺?」
「友一君の香りでしょう。私がつけると思いました?」
「だって、“つけてもいいか”って言ったから。」
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