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    MEMO戦後の塚本。前編。塚本が結婚しますので何でも大丈夫な方のみ。
    あの日、あの時、貴方を【前編】ラジオから音が流れる。その音は俺の耳、頭に届かない。周りの声で戦争が終わった。そして日本は負けたということが分かった。暑い。太陽は容赦無く照り続け俺を襲う。あの人を思う。数ヶ月前、ほんの数ヶ月前逝ってしまった貴方。「橋内和」。一夜を共にした男。俺に抱いて欲しいと願った男。散々迷ったが特攻の話を聞きあの人の思い残しをひとつでも減らしたい、気持ちいい思いを感じて貰いたいと部屋に向かった。口づけは怒られた。気色悪いと。だが、最後、飛び立つ前、あの人は俺に口づけをした。何故か。その理由は俺には分からない。あの人は何を思い口づけをし逝ったのだろうか。ラジオの音が俺を素通りする中そんなことを考えていた。

    兵舎を去る日。戦争に負けた日本がこれからどうなるのか不安はあるが無事に故郷へ帰ることができるのは嬉しかった。一方で心寂しい思いもある。あの人と過ごした場所。一瞬ではあったが共に過ごし身体を重ねた。そしてあの人が飛んで逝った地。後ろ髪を引かれる。数歩歩いては振り返るを繰り返す。だんだん小さくなっていく。豆粒くらいの大きさになった時、立ち止まり見つめた。もう来ることはないだろう。貴方との思い出の場所。
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