Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    totugawa_fic

    @totugawa_fic

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    totugawa_fic

    ☆quiet follow

    水明の母親(モブ)の小話です

     あの日のことは今も鮮明に思い出せる。私の目の前で、友人が神に貫かれた。そして友人と契約していた私の夫がその場に膝を着くのはすぐだった。なりふり構わず私は彼の名前を呼び、今まで殺してきた神の存在にすら祈った。どうか、どうか彼を殺さないでくれと。誰でもいいから彼を救ってくれと。
    けれど救いなど何処にも無いのだ。私は最期まで何も出来ないまま、彼の手を握り続けていた。最後に見た笑顔はやはり、やさしくて、私の中で何かが崩れていく音を聞いた。
     そして私は、「力ある者となり弱き者を守る」という山紫の家訓の残酷さを知った。私が守らなければならないのは「誰か」であって、彼ひとりである理由がなかったからだ。
     山紫の家では基本的に詠手舞手、その素質無しに関係なく自己犠牲に身をやつせるような人格になるように育てられる。私も無論そのひとりだ。誰かを救えるのなら、私が犠牲になることが私にとっての全てだった。私がかつてこの学校に入学する頃までは。
     当時の私は家訓通り誰かを守ることに躍起になっていて、それ以外のことを全て蔑ろにしていた。私が傷つくことも、誰かに利用されることも、何も不思議ではなかった。そして、私は彼と出会った。
     五社と一切の関わりなく生きてきた彼は、私に手を差し伸べた。私が皆を救うのなら、私のことは誰が救うのだと問いかけた。そして、私のことを守ると言ってくれた。
    その言葉がほんとうに、ほんとうにうれしくて。私は多分、その時から山紫の人間から少し離れていったのだろう。私はこの命をかけて、いちばんに彼を守りたいとほんの少し思った。思ってしまった。
    そしてその結果がこれだ。彼は私を守り、私は彼を守れなかった。ただ何も出来なかった私がひとり生きている。
     教育の賜物なのか、血なのかは誰にもわからない。けれど私たちには、決定的に何かが欠けているのだと思わずにはいられない。だって、未だに私は誰かを守らなくてはと思っている。そのあり方が、正しいとしか思えないままでいる。
     水明が中学三年になった秋、五社学園への入学が決まった。彼と同じ、舞手の素質があるそうだ。彼に似てやさしい子どもになった。そして私の背を見て育ったこの子は、私と同じことを繰り返すだろう。誰かを守るために自分を犠牲にすることを厭わず、そうして誰かを傷つけて悲しませる。けれど私の掛ける言葉はひとつしかない。
    「入学まで、引き続き自己研鑽を怠らぬように。そして、神から人を守りなさい」
    はい、と返事をする水明の瞳は真っ直ぐで、迷いがなくて、いっそ無垢なほど透き通っていた。何が正しくて、何が間違っていたのか、私には未だに分からないままでいる。
     私たちは皆、どこかおかしいのだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    totugawa_fic

    DOODLEゆらすい二次創作同人誌
    「 」
    ああ、またこの夢か、と目の前に広がる光景を眺めている。俺は夢の中で俺ではない誰かになって、もう一人と話をしていた。なんの変哲もない日常の風景の時もあれば、神と戦うような壮絶な夢の時もある。もう一人の姿もその時々によって様々で、男の時もあれば女の時もあり、瞳や髪の色、顔立ちも共通点はない。たった一つ分かることは、俺はその人をとても大切に思っていたということと、どんな人生を歩んだとしても、必ず死に別れる事になってしまうこと。
    この不思議な夢は、俺が物心ついた時から見ている。初めて見た時は人物も世界も曖昧で、そういう夢を見たとぼんやり覚えているだけだった。明確に鮮明になり出したのは五社学園に入学してから。厳密に言えば、由良に出会ってからだ。うららかな春の日、桜舞う花曇り。埋め尽くす人びとの中で、海のような深い紺碧の瞳を、初めて見つけた時のことを今も鮮明に覚えている。あの時、俺の魂が叫んだ。ずっと彼を探していたのだと、ずっと彼に会いたかったのだと。身体が勝手に動いて、胸の内から湧き上がる衝動のままにその手を掴んだ。由良はひどく驚いた顔をしていて、俺はようやく自分が何をしているのか理解した。正直あまり良い出会いであったとは言えないが、それでも彼との親交は続いている。
    2937

    totugawa_fic

    MOURNING現実保証機関「HORIZON」(仮)
    どこにもお出しできそうにない楽しい世界観が出来ちゃったのでまあ聞いていってくれ
    書きかけです
    現実保証機関「HORIZON」

    現実は我々の認識より成る。
    例えばここに一つの林檎があるとする。
    だが林檎が存在しているという事実を認識できるのは林檎を視覚的に認識できる者だけであり、認識できなければその者にとって林檎は存在していないのと同然である。
    全ての人間に各々の現実があり、つまり我々が現在存在している世界は小さな現実─個別現実の集合であると言えるだろう。
    そして「林檎が存在している」という事実がより多くの人間に認識されるほど、林檎の現実的な強度は増加する。つまりその現実がより確かであると保証されるのだ。
    逆に言えば個別現実が肥大しすぎると、本来あるべき実在、集合現実を歪ませてしまう
    現在この世界の集合現実は、不観測存在「フィクティッド」によって揺らぎつつある。
    我々は現実保証機関「HORIZON」、現実と虚構の境界を守る者である

    Actuality Strength Value【通称:AS値】
    現実強度値。その物体が現実に存在していることを表す値。AS値が高いほど現実浸食の影響を受けにくくなり、他の物体に対して強く影響を及ぼすこともできる。
    一般人であれば10前後、著名人で 2005

    recommended works