雨の夜は逢えない、晴れた夜は貴方を想う 署名のない手紙を書き終えて封筒に入れると、秋山は封に口づけをした。それからおもむろにライターをジャケットのポケットから取り出し、封筒を灰皿にかざして火をつけた。白い封筒は踊る炎に飲まれ、彼の目の前で灰になり、崩れ消えた。スカイファイナンスのドアが開く。
「秋山さん。そろそろ俺行きますけど、新井さんへの差し入れ決まりました?」
「それが聞いてよ谷村さん、ぜーんぜん思いつかなくてさ。ま、俺の気持ちなんざその程度って話かな。せっかくの七夕に気にしてもらって悪かったね」
谷村は不躾なほどに秋山の顔を見つめ、それから灰皿に溜まった灰に気づいて目を細めた。
「秋山さん、今すぐ手紙を書き直すんです、チラ裏にシャーペンの走り書きでいいから」
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