ナニモナイヨル 深夜、解錠の音と共に玄関扉が勢い良く開くと、部屋に一人の男が入って来た。
「よっ、久しぶり」
「来る前に、何故一言連絡を寄越さない。僕はこれから寝る所何だが」
暗がりの中、男は家人に構わずソファー横の間接照明を灯す。
すると、誰もが息を飲むような美しい顔が浮かび上がり、さらに鍛え上げられた肉体は服の上からでもわかる。ラフな黒シャツとカーゴパンツだが、それすらも絵になる男だ。
ただ家人であるゼノは既にパジャマ姿で、上掛けをめくり正にキングサイズのベッドに入ろうとしていた為か、苛立った様子だ。
普段オールバックにされた前髪は、両サイドに軽く流され誤魔化しているベビーフェイスを際立たせている。
ムスリッとして相手を睨むも、彼は涼しい顔で合鍵をカーゴパンツのポケットへしまいソファーに腰掛けた。
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