最高だったはずの日 長旅を乗り越え、中継地点たる街に寄る。それは冒険者として当たり前のことだ。
私は今日、空に輝く虹を見た。今は虹は消え去ってしまってはいるが、雲と青空の比率が美しい。静かな風が頬をくすぐって通り過ぎていく。そんな中訪れた新しい街。間違いなく、今日は最高の日だ。
こういう日はぱーっと浮かれてしまうのがいい。重い装備に反して、足取りは踊るように軽かった。背中の相棒も、心なしかいつもより重量を感じさせない。
前回の街での休憩は、もうしばらく前の話だ。長旅を乗り越えて疲れた体にご褒美でも、と酒場にやってきたのだが、一つ困ったことが起きた。切羽詰まった様子の店主曰く、どうやら強盗がいるようなのだ。
ちらり、右の方を見やる。いない。
左に視線を向ける。やはりいない。
後ろをそっと見てみる。背後の扉は、既に閉まっている。
再び前に向き直る。店主と、再び視線がかち合った。
緩慢な動作で自分を指差してみる。こくり。店主が頷く。
「……いや、なんでだよ!?」
訂正しよう。今日は、最悪の日だ。