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    おすず

    身内用。

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    おすず

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    ころたん視点。
    転屋心路が中一時の夏休み明けくらい。

    幕間:稀にある 夏休み明けというものは、どうしてこんなにも憂鬱なのか。
     鞄の中身はほとんどが提出物だったので、今はもう筆箱や財布程度しか入っていない。それでも、長期休み明けの空気が鞄をずっしりと重くさせた。
     小学生の頃感じていた、学校で友だちに会える喜びもさほどない。当然だ、まだ心を許せるほどの友人も出来てはいないのだ。

     じりじりと首の裏を焼く太陽を背に歩く。このときばかりは日の高い時間帯に帰らせる始業式が恨めしかった。中途半端に図書室に寄ったのが良くない判断だっただろうか。
     水分を取ろうと水筒を傾けたが、落ちてきた水はのは一滴だけだった。喉を潤すには到底足りない。

    「あ、公園……」

     バス停まではまだ距離があるが、前方、後方ともに人の姿はない。
     寄り道をしたと誰かに咎められる心配はない。そう考えて、公園に足を踏み入れる。

     最後に小学生だった日からたった半年程度しか経っていないのに、公園は随分と小さいように感じた。すべり台とジャングルジムを横目に歩き、ブランコと鉄棒の間を行く。砂場の横に、水飲み場のついた小さな水道があった。
     蛇口を捻ると、勢い無く水が溢れ出る。水量を調整し、口をつけると、やけにぬるかった。この暑さで温まってしまったのだろう。それでも、カラカラに渇いた喉には極上の蜜のように感じられた。
     心行くまで水を堪能すると、口を拭い、今度は空っぽの水筒の中にも水を貯め始める。縁ギリギリまで水が迫ってきたところで、やっと蛇口を止めた。少し零れた。
     水筒の蓋をきゅっきゅと閉めながら、ぐるりと周囲を見回す。
     公園の構造というものはどこもそう変わらないもので、どことなく童心をくすぐられた。バスが来るまでには時間もある。幸い、見られて恥ずかしい人も周囲に無い。少し遊んで帰ろうか。

     水道の脇のベンチに鞄を放置し、それぞれの遊具を触ってみる。

     砂場。制服を汚すのはまずい気がする。次。
     鉄棒。熱さに耐えて坂回り……しようとしたが、思うように身体が持ち上がらなかった。失敗。
     すべり台。制服が摩擦に耐えられるかは謎だ。滑るところに、土足で上がった跡や砂がついていた。一応、やめておく。
     うんてい。ぶら下がってみたら、その後全く動けなかった。降りる。
     ジャングルジム。ネットを登ってみると、降り口はすべり台がいくつかと、はしごが一つだけだった。大人しくはしごから降りる。
     最後にブランコ……なのだが、そこでようやく遊具に貼ってある表記に気がつく。

     対象年齢、五歳から十二歳。

     ……まだ誕生日は迎えていない、ので、ギリギリセーフ? しかし、この表記が指しているのはおそらく、年齢ではなく学生としての区分のこと。少しだけ悩んでみる。
     しかし、ここまで来るとコンプリートしないのもなんだか癪だ。小学生と中学生なんてたかが誤差だ。二つあるうちの、片方のブランコに腰掛けた。

     きい、きい、きい。
     多分、長らく油をさしていない。ゆらゆらと、足先で地面に跡をつけながら、前後にブランコを揺らす。

     きい、きい、きい。
     全力で漕ぐことはしなかった。少し昔は、よく一回転を試みたものだが、現在は防衛本能がしっかりと働いている。無謀なことは出来そうにない。

     きい、きい、きい。
     前後に視界が揺れ動く。久々の感覚に、三半規管が違和感を覚えている。

     きい、きい、きい。
     なんとなく、目を閉じてみた。途端に平衡感覚を失って落ちそうな感覚に襲われ、再び目を開く。変わらない風景が広がっていた。

    「ねえ」

     隣から高く、幼い声がした。
     ブランコの揺れを、地面に足を付けることで止める。
     隣のブランコに、一人の少女が腰掛けていた。ブランコを揺らしもせずに、零れそうな瞳でじっとこちらを射抜いている。
     先ほどまでその存在に気がつけなかった、いつのまにやって来たのだろう。年甲斐もなくはしゃいでいたところを見られてしまっただろうか。

    「どうしたの?」

     できるだけ笑顔でそう返してみると、少女は再び舌足らずに言葉を紡いだ。

    「そこ、わたしの」
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