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    ブラウン

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    ブラウン

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    アラ+カラ+ハリ(現パロ大学3年生、ギャグ)
    騎士部の年末の後半です。
    後半ではありますが、時間が続いているだけなので読まなくても大丈夫です。が、最初に前半のあらすじは書いておきます。
    飯テロの逆を行く飯テロ『玉手箱』なお話です。食事欲減少に注意をお願いします

    アラ+カラ騎士部の年末の前半です。
    https://poipiku.com/10065716/11219108.html

    騎士部の年末(後半)◆前半あらすじ

    年末の大掃除中の騎士部の寮。
    アランがプラ様達と撮った写真をしまったままにしている事を知ったカラム。話の流れで2人でフォトアルバムを買いに行くことなった。
    買い物の前にアランの部屋を片付ける為に廊下を歩いていると……






    ◆ハリソンさんのお部屋にて

    アランとカラムがアランの部屋へと移動しているとフワッと黒い影の風が目の端を通り過ぎた。
    「おっハリソン!!」
    アランが声を掛けると影は止まり振り向いた。相変わらず人を寄せ付けない紫色の眼差しと長い黒髪。
    だがアランはお構い無しにスタスタハリソンの側に行く、が、その身体に触れようとはしない。ある程度の距離は保っている。
    「今から部屋の掃除か?」
    「いや」
    「もう終わったのか?」
    カラムもゆっくりと近付きながら聞けば紫色の目がカラムを見る。
    「する必要が無い」
    簡潔に答えるのはいつもの事だ。クラークであればそれだけで意味が分かるのだろうが、残念ながら2人にはさっぱりである。
    「あ、そうだ、お前もアルバム買いに行かねぇ?どうせ貰った写真部屋の隅にでも積み上げられてんだろ?」
    アランがハリソンを誘ったことにカラムは吃驚するが、アランの性格を考えれば納得もした。
    ハリソンは興味ないと返事もせずにまた歩き出した。
    「おーい、ハリソーン」
    「くだらん」
    アランの読み通り王族から頂いた写真は頂いた状態のまま、開けられることも無く部屋に備え付けの棚の中に保管されている。例えアルバムを買い並べたところで結果は同じである。
    王族からの贈り物を粗末に扱っているわけではないが、だからといって有難み見返すことも無い。
    ハリソンにとって大事なのは王族から頂いたという名誉だけなのだ。

    アランがハリソンに付いていくので仕方なくカラムもその後を追う。カラムにとってハリソンは好き嫌いでは言えない相手だ。ハリソン自身が自分達を求めていないのだから。
    そんな相手であろうと自身が気になることがあれば関係なく距離を詰めるアランは素直に凄いとは思うが、マネをしようとは思わない。

    そしてとうとうハリソンの部屋まで到着してしまった。

    「いつまで付いてくる」
    「えー、ハリソンの部屋見せてくれねぇ?」
    その言葉にハリソンの目が鋭くなる。
    カラムは途中からアランの行動に見当は付いていたが『本当にやるとは』と呆れてしまう。ハリソンがそう易々と自分のテリトリーに人を入れるとは到底思えない。一蹴されるか無言で立ち去るかの2択だろう──


    「見たら帰るのか?」


    まさかの返答にカラムは勿論、言った張本人のアランも目をまん丸にしてハリソンを見た。
    「見る気がないなら帰れ」
    「え!いやいや、見る!見るから見せてくれ!!」
    アランがキラキラした目で迫る。
    騎士団一分からない男のハリソンがどんな生活をしているのか、知りたくダメ元で言ってみたのだが、まさか許可が貰えるとは思ってもいなかった。これは期待は膨らむと前のめりになるのは仕方ない。
    「物には触れるな」
    ハリソンは一言そう告げると部屋の扉を開いた。


    「「────ッ」」


    そしてアランとカラムは中を見て絶句し、先程のハリソンの返答を思い返し納得した。

    ハリソンの部屋には本当に生きる為に必要な最小限の荷物しか置かれていなかった。
    備え付けの小さな棚に学校の教科書と用具、騎士部のユニフォーム、そして王族からの贈り物などが置かれ、床には日用品と私服が畳まれて置かれていた。それだけである。
    普通の学生であれば持っているだろう、生活を彩る物など一切ない。
    アランもカラムも極力無駄な物を持たない暮らしを心掛けていたが、ハリソンの部屋はその比ではない。無駄どころか暮らしに必要なものすら足りてないと思われた。
    引っ越せと言われれば小さなトランクでもガラガラなのではないか、と思う程ガランとした部屋を見た2人の脳裏に浮かんだ言葉は〝監獄〟である。

    「いや……すげぇな、お前……」
    「ああ、……まさかここまでとは思ってもいなかった」
    アランは笑顔で口の端をヒクヒクさせ、カラムも感心したと顎に手を当てる。
    「なんていうか……〝仙人〟の暮らしってこういう感じなんだろうな」
    「そうだな」
    アランの的を得た言葉にカラムも頷く。
    ある程度は予想していた2人だったが、その遥か上の生活だった。
    もし自分がここにあるものだけで暮らせと言われたら耐えられないだろう。騎士部の遠征でももっと物を持って行くと2人は息を呑んだ。

    キョロキョロと殆ど何も置かれていない部屋を見渡す2人を見ながらハリソンは『何が楽しいのだ?』と思いながら腕を組み壁に寄りかかった。

    寝れれば何処でもいい。備え付けでなければベッドすら要らない。
    騎士として必要な物以外、物欲もない。
    となれば着の身着のままでいいではないかと思う。
    さすがにクラークから『最低限の身嗜みには気を付けるように』と言われれば着替えと櫛と鋏と剃刀、鏡は用意し最低限の活用はしている。

    「いくら寮に共同の物があるとは言え……これは……」
    「お前本当にこれだけで生活しているのか?」
    「それ以上、騎士に何が必要だと言うのだ?」
    「「…………………………」」
    分かっていたこととは言え、真正面からそう言葉を投げられては2人は黙るしか出来ない。
    騎士の用具と王族からの贈り物が丁寧に置かれている様を見れば少なくとも物を大切にする心が無いわけではない、と無理矢理結論つけるしかなかった。

    「ん?これはなんだ??」
    アランが呆然と棚を見つめていると丁寧に置かれた騎士のナイフの隣に紺色の巾着袋に包まれた物が鎮座していた。その大きさは男性の手の平より大きく高さもあるが平べったい。
    カラムもその存在には気付いていたが、ナイフの隣に置かれている辺りで何かの用具入れかとスルーしていた。

    「なんていうか、……弁当箱??」
    「弁当箱??」
    アランの言葉にカラムも身を乗り出し覗き込む。巾着袋の膨らんだ形をよく見れば確かに男性用の大きな弁当箱に見えなくもないが用具入れにも見える。

    「ハリソンこれなんだ?」
    「弁当だ」
    「弁当ッ!?」
    「何故ここにッ?」

    2人は巾着袋に手は触れずにハリソンへと顔を向けた。ハリソンと弁当箱、その関連性が全く分からない。
    これだけ徹底的に生活感を排除した生活をしているハリソンが、私物は基本床に置いているハリソンが、丁寧に手入れをしているのが分かるほど大切にしているナイフの隣に弁当箱というアンバランスな物を置く意味が分からない。

    ハリソンからすれば一体何が知りたいのか意図が理解出来ない。その物が何かを聞かれたから答えたというのに、先ほどから何をそんなに驚いているのか。無言で自分を見つめてくる2人に、誰から貰った物かを言えばいいのか?と考える


    「ネル・ダーウィン殿から頂いた」


    ────


    そう告げると2人の目から目玉が落ちるのではないかというほど見開かれ、顎が外れたのではないかと言うほど口が大きく開けられた。

    「いや、待て!待て、待て、待て!!なぜネルさんがお前にッ!?いやそこは別に不思議じゃねぇけど、〝なぜ〟ここにその弁当箱があるんだッ!?」
    「弁当箱は洗って返すものだ!返してと言われなかったか!?礼はしたのか!?」
    アランとカラムが慌てるのも仕方ないことだ。
    騎士団の副団長であるクラーク、その妹であるネルとはアランもカラムも面識がある。
    そしてハリソンに向ける感情も2人は読み取っていた。
    何かの折にネルがハリソンへと弁当を渡した事があってもおかしいことではないし、本当であればそこに口も首も突っ込みたくない。
    だが、弁当箱というのは食べたあと洗ってお礼と共に返すものである。そういう常識をハリソンが持ち合わせていないことを知れば教えないわけにはいかない。
    人間としての礼儀だからだ。

    「弁当箱も、礼も、返す必要はないと言われている」
    「「そ、れ、で、も、だ」」

    例え返さなくていいと言われても、最低の礼は返さなければならないと訴えるもハリソンには理解出来ない。
    「一体どういう状況で貰ったんだよ」
    「その時クラーク副団長はいなかったのか?」
    「いない」
    その一言でガクッとアランとカラムは首を垂らした。その場にクラークがいてくれたら良かったのにと。
    2人にはネルが口でそうは言っても〝返して貰える日〟を今でも楽しみに待っているのではないかと思ってしまう。

    「今からでも菓子折り持って、礼の言葉を伝えた方がよくねぇ?」
    「そうだな」
    アランの言葉にカラムも頷く。
    ハリソンには菓子折りも買う場所も指定した方がいいだろう。それとネルに似合うアクセサリー等の装飾品も添えた方がいいとだろう。
    と思ったが、ハリソンには無理だなと判断した。
    どんなに説明しても適当に入ったアクセサリーコーナーで一番最初に目に付いた物を買うだろうとしか予想出来ない。
    今も何がイケナイのか全く理解していない様子だ。形だけの謝罪になるのであれば消え物の方がいいだろう。
    彼女から手作りの焼き菓子を差し入れに貰ったことが何度かある。ならば彼女の好きな店の焼き菓子がいいだろう。それならアーサーにも協力を頼もうかと考え始めた時だった。

    「これいつ貰ったんだ?」
    「夏休みだ」
    「夏休みかぁー」
    「もう3か月も前だな……」
    普通であればこれは頭を床に擦り付けて謝る案件だな、とカラムは眉間に寄ってしまったシワを指でグリグリ押して伸ばす。

    いくらネルの一方的な好意であってもそれを踏みにじってはいけないと思う。が、この男にそれを理解する心があるのだろうか?と疑問しかない。
    自分たちがそれをどんなに説いてもハリソンの耳には入らない。
    ネルの好物と礼だけでは済まないだろうか、と思うもののハリソンを相手にするのであれば今後も同じ事が繰り返されるだろう事は目に見えている。
    もしかしたら今回の事もネルはネルなりに理解している可能性もある。
    ならば今のまま副団長に丸投げした方がいいかも知れない。

    「で、中身ってどんな感じだったんだ?可愛らしいピンク色でハートとか描いてたか??」
    難しいことはカラムに丸投げしたアランの興味は既に弁当箱の中身に移っていた。
    見た目も中身も女性らしいネルであればどんな凝ったお弁当になったのか興味もある。
    脳裏には少女漫画に出てくるようなピンクの可愛らしいお弁当が浮かんでいた。




    「見てない」



    「「…………………………………。はぁ〜〜〜っ!?」」



    ハリソンの言葉を理解するのにたっぷりと間を取ってからアランとカラムは同時に床を蹴り部屋の出入り口に突進した。同時に到着するとアランがカラムの前にそっと出る。
    そのたった一言だけで全てを理解してしまえるほどハリソンとも長い付き合いだ。


    ハリソンが見ていない、つまりその弁当箱は開けられたことが一度もないということである。


    今年の夏は暑く、秋も暑い日が続いていた。
    中身がどうなっているのか想像もしたくない。
    先程まで恋する乙女の可憐な想いの詰まっていただろうお弁当を想像していた2人だったが、今では開けてはならない〝玉手箱〟にしか見えなくなった。

    カラムは出入り口をそっと開け、アランの上着の裾を握る。危険が迫ればここから逃げ出す準備を整える。何かあったら互いが互いを守ろうと神経を研ぎ澄ませ合った。

    一方ハリソンはそんな2人に大袈裟だと息を吐いた。たかが弁当箱一つに騎士部の2トップが何を慌てているのだ、と飽きれた。
    「ハリソン、答えろ。なぜ弁当を食べずに放置している」
    カラムの問いに面倒だとハリソンは思う。
    部屋に入れなければ良かったと後悔する。部屋に入れたのも深い意味はない。ただアランとカラムであれば特に抵抗がなかっただけである。

    「ハリソン!」
    「ネル・ダーウィン殿からの贈り物だからだ」
    「食べて欲しいと彼女は願っていた、にも関わらずか?」
    「『受け取ってください』としか言われていない」

    ((だから受け取り飾っていたのか))

    日常ではその言葉通りにしか受け取らないマンであることは理解していたアランとカラムもこれには脱力しかない。
    なぜ作戦時のように臨機応変に動けないのだろうかと頭を抱える。

    更にカラムはクラーク副団長の妹であるからこその丁寧な対応としてナイフの隣に飾っていたことは理解する。
    もしかしたらあのナイフはクラーク副団長からのプレゼントかも知れない。とそこまで推測すれば、どれだけあの弁当箱を大事にしているかを〝心の中だけで〟理解し褒め称えようとは思う。
    ハリソンは自分達からの褒め言葉など要らないと知っているからだ。

    「なぁ、コレどうすりゃいいんだ??」
    ツンツンと肘で突いてくるアランにカラムも渋い顔のまま答える。
    「どうもこうもクラーク副団長に連絡を取り、その時間で可能なら菓子折りとネルさんへの詫び品と詫び状と新しい弁当箱を用意し、クラーク副団長に説明、頭を下げるしかないだろ。それで、ネルさんには──」
    「ネルさんには??」
    「…………クラーク副団長に判断願おう」
    「そうだよな……」
    頭を抱えつつ、最善を絞り出したカラムの言葉にアランも頷き後頭部に手をやる。
    歳の離れた弟も妹もいるアランはクラークのネルに対する父親のような気持ちは想像出来る。もし妹が好きな人の為に一生懸命作った弁当を食べることも見ることもなく台無しにしたと知ったら殴り込みにも行きたくもなる。
    だが、アランの目から見てもハリソンがどれだけ大切にしていたかは理解出来る。
    そして自分たちはこの事については完全なる他人であり、ネルの兄でありハリソンの飼い主のような存在のクラークに全てを一任するのが最善であろう。

    そこまで考えてカラムの意見に同意しながらも、アランは『今見た事全て見なかったことにしたい』と思っていた。
    チラリとカラムを見ればまだ難しい顔で悩んでいる。どこまで自分たちが関わるかを考えているのだろう。
    カラムの真面目な性格と騎士部の部長という立場を考えれば見て見ぬ振りなど出来ないのは分かっている。そしてそもそもの発端は自分の好奇心からだ。

    (そんなこと口が裂けても言えねぇ……)

    「とりあえずはクラーク副団長に俺たちで問い合わせてから決めようぜ。買って準備する物はそれからの時間で考えてさ。最悪今はコンビニの菓子折りでもいいだろう?」
    「……そうだな」
    こうなったらさっさと終わらせるのが吉だ。それにはクラーク副団長に電話で説明を自分らがする方が手っ取り早くいいだろう。何せハリソンは未だに何がいけないのか全く理解していないのだから。
    何よりも今回の事は自分たちがそれ以上する必要性はない。あくまでたった今偶然知ってしまった部外者なのだから。
    何だったら今すぐにでもハリソン1人クラーク副団長のところに行けと言って見たこと全て忘れたい。


    「なぜクラーク副団長に連絡をすることになるのだ?」
    当事者であるにも関わらずハリソン1人だけが事の重大さに気付いていなかった。
    「あー、お前さもうちょい人の気持ちを汲む努力をした方がいいぞ。言われたことを言われた通りに受け取るんじゃなくてさ。本質っていうか。まぁそこんところをクラーク副団長に教えてもらいに行けって話だ」
    「なぜ副団長に?」
    ハリソンにはアランの言う意味が分からない。そんな事で忙しい副団長の手を煩わすべきではないと考える。仕方ないと今度はカラムが口を開く。
    「ネルさんが言う『受け取って』は『この弁当箱を受け取って中身を食べてください』って意味だ。だがお前は言葉通り受け取るだけだったのが問題なんだ」
    カラムが指摘すればハリソンはお弁当箱へと目を向けた。受け取ってから1度も中を見てすらいない弁当箱は今も貰った時のままの姿で大切に飾られている。
    「なぜそうだと分かる?」
    「……逆に聞くが、何故中身がお弁当だと分かっていたのに食べないんだ?弁当は食べるものだろ」
    ハリソンの食への関心の無さは知っていたものの流石にこれには呆れてしまう。
    ハリソンもそんなアランとカラムの表情にやっと自身の犯した罪を自覚した。ジッと弁当箱を見つめれば、渡された時のネルの顔が思い返される。恥ずかしそうに嬉しそうな真っ赤な笑顔──

    「……なら食べる」
    「はあッ!!??」
    「何をする気だ!?」

    慌てて2人が制する声を上げるもハリソンは気にせずに弁当箱へとスタスタと歩いて行く。
    「止まれ!今すぐ止まれハリソンッ!!」
    「何をすんだッ、辞めろ!!死にたいのかッ!?死ぬぞッ!!」
    カラムもアランも叫びに近い声を出すも、ハリソンはお構い無しで弁当箱を手にした。そして直ぐに紺の巾着袋の紐を緩め、取り出されたのは長方形の銀色の弁当箱だった。
    遠目からだが昔ながらのアルミの弁当箱だとカラムは気付いた。軽くて丈夫で直火も出来る、アウトドア等で活躍するお弁当箱だ。
    つまり外での活動の多い騎士への考えられた贈り物だ。やっとネルの『返さなくていい』の意味を正しく理解した。
    そしてたぶんこの弁当箱は一度も使われること無くこのまま飾られ続けるのだろう未来まで見えてしまえば更に心は重くなった。

    「問題ない」
    「いや問題あるだろ!中身どうなんでんだよッ!」
    アランのツッコミにもハリソンは全く表情を変えない。
    「ハッ!ここで開けるなよ!開けるなら外でやれ!周りにも迷惑だ!」
    カラムは中のものが建物内に拡散されることを危惧し開いていたドアを閉めた。もうこうなってしまったら泥船に一緒に乗るしかない。
    覚悟を決める為にアランの裾をぎゅっと握った。
    その心中の合図にアランはうわ〜と顔を歪ませる。


    「問題ない」


    「「問題しかないだろ!!」」


    アランとカラムの声が綺麗に重なった。
    この部屋に入ってからまだ数分であるのにも関わらず、これで何度目か2人も数えてないので分からない。

    (本当にうるさい奴らだ。たかがこんな事で何を騒いでいるんだ)

    辞めるようにと叫んでも近寄って来る気配もない。それどころか互いに身を寄せていることに呆れた。
    昔からカビの生えたもの腐ったものなら食べて来ている。ちょっとやそっとのものではお腹も壊さない自信もある。

    (それに今やっと副団長の妹君の真意が分かったのだ。ではその気持ちに応えなければ失礼になるだろう。それに食べてしまえばお忙しいクラーク副団長に報告するなど迷惑も掛けなくて済むことになるのだ)

    ハリソンはそう思いながら2人が止めるのを無視し、お弁当箱を開いた。その瞬間お弁当箱から噴出された濃い焦げ茶色の微細な物が宙を舞いふわぁぁんふわぁぁんと広がった。


    まるで本物の〝玉手箱〟を見ているようだと思いつつ、アランとカラムは己の口と鼻を手で覆い息を止める。
    まさか放置していた弁当箱がこんな状態になるとは知りたくなかった。


    パタンッ


    ハリソンが弁当箱の蓋を閉めても排出された粒子は煙のようにふわぁぁんふわぁぁんと漂い、拡散され、やがて目には見えなくなった。
    部屋に静寂が訪れる。
    アランとカラムはそっと顔から手を退けハリソンを注視する。ハリソンは弁当箱を持ち熟考しているのか動かなかった。
    目のいいアランでも排出された物のせいで中身がどうなっていたのかは見えなかったが、それは幸運だったと思った。
    アランとカラムは尚も動かず、声も出さずにじっとハリソンを見ていた。
    そして長い長い熟考の末にハリソンが口を開いた。



    「…………………………………………………問題ない」



    「「問題しかないだろッ」」




    流石のハリソンも額からタラリと汗が流れた。





    終わり。






    ◆後書き
    ハリソンさんの部屋の描写が分からず、小説内を探したのですが見つかりませんでした。のでこちらは完全に私の妄想と捏造で書かせて頂きました。
    ナイフはクラーク副団長からの貰い物です。
    確かrstmでは本隊入団で剣を貰っていた筈なので、流石に現パロで大学生に剣は駄目かと思いナイフです。
    ネルさん本当にごめんなさい。
    お弁当箱絶対色々と考えてプレゼントしたと思うんですよ。野外で使えて頑丈な物をと。
    カラにだけ伝わりました。



    ◆挨拶
    今年一年ありがとうございました。
    独りよがりのssばかりなのですが、意外と反応があり有り難かったです。感謝します。
    年末は本編のアラカラの熱量に当てられてアラカラばかりになってましたが、来年はカラプラの甘々が書きたいと思っています。
    出来れば季節ものでなく長編を、と思っても思いついてしまう短編が数を占めそうです。

    来年も好き勝手な妄想と捏造でやっていくので、暇がありましたらまた読んでスタンプなり感想なりをよろしくお願いします。



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