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    リンネ

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    リンネ

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    周子舒と晋王の短文
    まだ寵臣だった頃

    誰を護る剣晋王が突然、白衣剣の手入れを見たいと言い出した。
    師父から受け継いだ名剣である。もちろん手入れを欠かしたことはないが、それをわざわざ人に見せはしない。報告に訪れた部下がたまたま目にしたことがあるくらいだ。
    「それは、余を守る剣であろう」
    もしや、何か落ち度があったのだろうかと周子舒がはっと頭を上げると、かつて従兄としての彼がよく見せていた顔をしていた。
    「他の者が知っていて、何故余が知らないのだ」
    拗ねたような声。
    皇帝の座に就こうと野心を燃やす男が、たかだかひとりの寵臣にまさか悋気を起こしたと言うのだろうか。
    「……では、もしよろしければ、晋王の剣も子舒が手入れいたしましょうか」
    何が正解かわからないまま、周子舒はそう伺いを立てた。
    「そうだな。それは良い」
    途端、晋王は機嫌を直し、周子舒は一旦自室へと下がった。
    時折自分にだけこういった子どものようなわがままを言うのは従兄弟として交流した過去があるからだ、と周子舒は思っていた。
    晋王が着実に勢力を伸ばす度、理不尽な命令も増えていく。それでもまだ、彼は昔のままの彼だと信じられた。
    誰も子どものままではいられない。
    時には冷酷にならざるを得ない。国を糺すというなら尚更だ。
    だから周子舒は晋王と、彼の中にいる子どものままの従兄をすべて、護ろうと誓ったのだ。
    それは周子舒自身がまだ、少年の頃を忘れていない証だった。


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    takami180

    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
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