Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    リンネ

    短文メインの文字書き

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 🌹 🐾 💯
    POIPOI 20

    リンネ

    ☆quiet follow

    傘の数え方は一般的には何本だと思いますが敢えてです
    温周、少しだけ晋舒を匂わせ

    #四季の山ドロライ
    お題:あいあいがさ お借りしました

    雨に濡れても ぽつり、と頭のてっぺんに雨粒を感じた。すると、当たり前のように傘が差し出された。
     いつの間に用意していたのか、一緒に山荘を出る時には持っていなかった気がするのに。
     傘を持つその手の向こうの顔を見上げれば、子舒が何を言いたいのかわかったのだろう。温客行は得意げに「出しなに今日は雨になると、成嶺が言ったのだ」と笑った。
     それならば弟子の手柄だなと返してやると、ではあの子に土産の菓子をひとつ追加してやろうと更に笑みを深くする。
     今頃は干した薬草を取り込んだり窓や戸を閉めて回ったり、慌ただしくしているだろう。家の中のことは料理以外任せられるようになってきた。
    「……しかし、何故一柄しか持ってこなかった?」
    「阿絮が大量に酒を買い込むのがわかっていたからな。荷物は少ない方がいい」
    「俺のせいか?」
    「否。……私の希望かな」
    「希望?」
    「そう。一柄しかないなら、こうして身を寄せ合っても不思議ではないだろう?」

     昔、侍従のように傘を持って、彼の人について回ったことがある。他人の仕事を横取りするようで気が進まなかったけれどそうしろと言われれば従うしかなかった。
     雨が降り始め、傘を差し出すとそなたも入れと抱き寄せられた。濡れてしまいますと身を引こうとすると、では傘はいらぬなどとわがままを言われ、結局同じ傘の下、出来るだけ身を縮こませるしかなかった。
     彼の人はそうして子舒を孤立させていった。他の誰にも頼れない、彼の人だけがこの傘のように子舒を庇護できるのだと。
     晋王の傘は大きくて、彼の人も子舒も濡れることはなかった。けれど、冷たかった。彼の人の手の熱が衣越しに伝わっても、凍えていた。

    「阿絮?」
     どうかした?と、覗き込んでくる瞳に本気の心配が浮かんでいる。
    「大の男ふたりでは、狭いし濡れる」
    「あっ、肩が濡れてしまった?もっとこちらへ」
    「そうじゃない。相合い傘もいいが、雨宿りついでに酒で身体を温めるのはどうだ?」
     くるりと視線だけで示せば、仕方ないなと溜め息交じりの応えが返ってきた。

     多分、子舒が考えていたのは別のことだと温客行は気付いているのだ。
     訊かれないことは答えないし、おそらく、この先聞いて欲しいと思うこともないだろう。
     過ぎ去った過去は二度と巡ってはこないし、冷たい雨で凍えることはもうない。
     ひとつ傘の下で、互いに肩を片方濡らしながら。酒家に着くまで、もう少し。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺☺☺☺☺🙏❤💙❤💙💙☺☺😍😍🌂🌂🌂🌂💘💘💘💞💞💖👍☺❤💲⛎🎋
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    takami180

    DONE曦澄ワンドロワンライ
    第二回お題「失敗」

    付き合ってない曦澄、寒室にて。
     夜、二人で庭をながめる。
     今夜は名月ではない。寝待月はまだ山の影から顔を出さない。寒室の庭は暗く、何も見えない。
     藍曦臣はちらりと隣に座る人を見た。
     あぐらをかき、片手に盃を持ち、彼の視線は庭に向けられたままだ。
     こうして二人で夜を迎えるのは初めてだった。
     江澄とはよい友人である。月に一度は雲深不知処か蓮花塢で会う。何もしない、ぼんやりとするだけの時間を共有させてもらえる仲である。
     それでも、亥の刻まで一緒にいたことはない。江澄が藍曦臣を気遣って、その前に必ず「おやすみなさい」と言って別れる。
     今晩はどうしたのだろう。
     平静を保ちつづけていた心臓の、鼓動が少しばかり速くなる。
     宗主の政務で疲れているのだろう。いつもより、もう少しだけ酔いたいのかもしれない。きっと彼に他意はない。
     自らに言い聞かせるように考えて、白い横顔から視線を引きはがす。
     庭は、やはり何も見えない。
     ことり、と江澄が盃を置いた。その右手が床に放り出される。
     空っぽの手だ。
     なにも持たない手。
     いつもいろんなものを抱え込んでふさがっている彼の手が、膝のわきにぽとりと落とされている。
     藍 1843

    takami180

    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337