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    ゆう✨

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    ゆう✨

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    傘の日に書くはずだった🌸くんのお風邪小説です。

    傘の日天気が変わりやすいこの時期、学校で居残り作業をしていた桜と蘇枋はザーザーと降られる雨を前に昇降口で立ち尽くしていた。

    「いやー、降られちゃったね?」
    「そうだな…あ、そう言えば」
    隣にいる桜は何かを思い出したように蘇枋に待つ様に告げ何処かに走って行った。
    蘇枋はそんな桜を不思議に思っていると数分もしないうちに桜は手に何かを持ち戻って来た。
    「これ…」
    「ん?」
    「あっ…あさ、喫茶店のおん…ことはに渡されたんだ。」
    蘇枋に差し出されたのは折りたたみの傘で顔を赤らめんと不器用に差し出さしてくる。
    「でも、それなら桜くんが濡れちゃうよ?」
    「俺はこっからすぐ近いし走って帰れる…」
    蘇枋は考えたがそれはフェアじゃないと思いならこうしようと手をポンと叩いた。
    「んで…こうなんだよ!」
    「まぁまぁ、桜くんこう言うのも悪くなく無い?相合傘するのも滅多に無いよ」
    中々こっちを向いてくれない桜、片側だけずぶ濡れになっている。
    「桜くん?もっとこっち入らないと濡れちゃうよ?」
    肩をグッと抱き寄せると桜の顔はまた火が吹きそうなくらい赤くなる。
    「蘇枋は…良いのかよ?」
    「え?何がだい?」
    「こんなナリの奴とくっ付いて歩いて…恥ずかしくねーの?」
    「ぜーんぜん!恥ずかしい事あるもんか」
    桜の何処が恥ずかしいのかと蘇枋は思う、きっとそう言われて来たんだろなって…。
    桜はそうかとちょっとだけ安心した顔をしてくれた。
    「あらら…ここからどうしようか…」
    2人の帰路の分かれ道、相合傘はもう終わりだ。
    「その傘は蘇枋が使え、俺家はこっからちけーから走れば大丈夫だ。」
    そう言うと傘を蘇枋に渡し走り出した桜は片手を振って行ってしまった。
    この時は誰よりも優しい桜が苦しむ事になるなんて蘇枋は思ってもなかったんだ。

    次の日は昨日の大雨から一転空は快晴だった。
    蘇枋は桜と一緒に学校に行こうと昨日事相合傘を思い出しながら桜を待っていた。
    それから、数分経った頃足音がして桜だと思い蘇枋が振り向いた。
    「桜くん、おは…」
    蘇枋は驚いた。だって桜はマスクをしふらふらとしてマスクから覗かせる顔が真っ赤なのだ。
    「はよ…すおう…ケホッ…」
    「桜くん?風邪引いちゃった…?」
    「ちげーから…このマスクはさっき商店街の奴が風邪が流行ってるて…ケホッゲホ!」
    「うん、分かったよ?もう、今日は帰ろうね?」
    そう言って桜の顔を覗けば桜は潤んだ瞳で蘇枋を見詰め首を横に振った。
    「家より…あの場所にいたい…」
    「でも…」
    「迷惑なのは分かってる…だけど…」
    桜にとって教室が1番心地の良い場所なのは蘇枋もよく分かってる。
    蘇枋にとっても教室が1番好きな場所だから…。
    「んー、分かった。じゃあ、今日一日無理しない事?辛くなったらすぐ俺に言う事、約束できる」
    「ん…約束な…」
    ちょっとだけ嬉しそうにした桜だったが途端に咳き込み蘇枋がその背中を咄嗟に摩った。

    少し時間は掛かったが教室に着いた。
    着いた途端クラスメイト達は桜の現状に驚きを隠せなそうに蘇枋を見詰めた。
    蘇枋は苦笑いで察してとみんなにお願いする。
    当の桜は教室に着いた途端自分の机に伏せて眠ってしまった。
    いつも騒がしいクラスは嘘の様に静かだった。
    誰かの椅子を引く音が響くぐらいだ。
    そいつは誰かに頭を叩かれる。
    桜にそっと上着をかける者いれば杉下でさえチラチラと桜を見ては心配そうな顔をする。

    「ん…あ…」
    「桜くん、おはよう」
    「すぉ…?おれ、どんくらい寝てた?」
    「んー?来てから今はお昼前だから2時間くらい?」
    桜は辺りを見渡しクラスメイトが1人もいない事に疑問を持ち首を捻る。
    「みんな、街の見回り行ったよ昨日大雨だったからやる事たくさんあるみたいで…」
    「すぉう…は?」
    「俺は桜くん係、これが一番大切な役目」
    「そうか…ケホゲホ…」
    咄嗟に咳き込み桜は蘇枋から顔を背けた。
    きっと熱は上がっているだろうなと蘇枋は思う…。
    「桜くん…そろそろ帰ろうか?」
    「え…」
    「大丈夫、俺もいるよ?桜くんが辛そうなのは俺も辛いんだ。」
    その言葉に渋々頷いた桜はヨロヨロと立ち上がりゆっくりと歩き出した。
    背中に手を添えるとその背中は燃える様に熱い…。
    「ケホゲホ…」
    「桜くん…おんぶする?」
    普段なら絶対嫌がりそうなのだが今日は小さく頷いてくれた。
    家に着くと桜は力尽きる様に布団に倒れ込み辛そうに蘇枋を見詰める…。
    「ゲホッゴホ…すぉ…」
    「大丈夫…俺はここにいるからね?」
    汗で張り付いた前髪を指で払ってあげれば桜は少しだけ笑ってくれしばらくしてすやすやと寝息が聞こえて来た。

    桜は夢を見た。
    まだ小学生の頃担任から髪を黒くしてこいとの事で怒鳴られた。
    桜はこれが自分の髪なのに訳が分からなかったが、文句を言われながらも血の繋がらない親からお金を貰い染粉を買った。
    白い部分は完全な黒にはならず、逆に目立つ色になってしまった。
    次の日学校に行くとなんだその髪は!とまた怒鳴られた。
    この時からだろうか桜は人を諦めた。

    「ん…」
    目を覚まし嫌な夢だったと自覚し次に襲って来たのは猛烈な吐き気だった。
    「うぅ…」
    慌てて力の入らない体を起こしトイレに行こうとした。
    途中誰かの声が聞こえたがここで吐いたらまた怒鳴られると必死だった。
    もう…怒鳴られるのは懲り懲りだ。
    そう思ったのに体から力が抜けた様に桜はズルズルとその場に座り込んで動けなくなり少量吐いてしまった。
    「うぅ…なんで…ごめん…なさい…」
    「桜くん…大丈夫だよ?」
    そう言われると体がギュッと抱き締められる。「はぁはぁ…ごめん…ごめんなさい…」
    「桜くんが謝る事なんて何も無いんだ」
    大丈夫、大丈夫とゆっくり体を摩られる。
    「はぁはぁっ…すぉ…?」
    「うん、ごめんね?桜くんが魘されてるのは分かってたんだけど…」
    「はいて…ごめん…」
    しょんぼりと肩を落とすと蘇枋はもう一度大丈夫だよ?と笑い掛ける。
    「気持ち悪さはどう?まだ、吐きそう?」
    そう問うと桜はゆるゆると首を振った。
    「そっか?まだ、熱高いしお布団戻ろうか?」
    されるがままの桜は蘇枋に抱っこされ布団に戻されそうになる。
    だけどもう少しだけこうしていたくて蘇枋の服の裾を掴み降りるのを抵抗してしまった。
    「桜くん…?」
    「もう…すこし…このままが…いい」
    「ふふっ…桜くんは本当に可愛いなー」
    普通なら恥ずかしくて堪らない行動と言葉なのだが今日はずっとこのままが良いって思ってしまう。
    「桜くん、寒く無い?」
    「ん…」
    「そっか、なら良かったよ」
    ふわふわな頭を撫でると桜はぽつりぽつりと話し出した。
    「すぉ…はさ?おれ、きもちわりぃ…とかおもわねーの?」
    「そんな事思う訳ない…絶対思う訳ないよ?」
    そう不安そうにする桜はどこか儚く消えてしまいそうで、それが怖くて更にギュッと抱き締めた。
    「そっか…やさしいなぁ…」
    「桜くん?あのね、そんな俺が嫌いな奴らの話し聞いたり思い出したりしたらダメだよ?」
    「ん…」
    「君の大切な耳が腐ってしまうからね?」
    確かに小さく頷く声がして蘇枋の腕の中の桜がグッと重たくなった。
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