終業後に確認したプライベート用の端末には、元気よく「酔っ払ってるからよろしくね」などと浮かれたメッセージと本人のスタンプが届いていた。差出人は言わずもがな、今日は確か調整で会社都合の休暇になっていると言っていたはずだ。
なぜその貴重な休みを他人の家で過ごしているのかは些か不明だが、酔っているという自己申告から察するに、人の家のワインラックから何かをくすねているのだろう。
「バカめ……」
思わず口を突いて出た悪口は近くにいたカンパニーの社員に聞かれてしまっていたようだが、いつも似たようなことを言っているせいで、苦笑いを向けられただけで終わってしまった。
***
リビングに行こうものなら絡まれると察したレイシオは、自宅の玄関を抜けてすぐ浴室へと足を向けた。まずは絡まれる前に入浴を済ませ、へべれけになっているアベンチュリンをベッドへと放り投げてから、その後ゆったりと読書でもしながら過ごそうという算段だ。
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