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    *第21回楓可不ワンドロ・ワンライに投稿したものです
    *お題【大切】

    楓可不『僕の世界の中心はいつも』 初めてキミが手を引いてくれた日。僕はまだ今よりずっとずっとちいさくて、キミの温かな掌がひどく頼もしく思えたのをよく覚えている。歳は少ししか変わらないはずなのに、遺伝か、不健康ゆえのものか、ちっぽけな身体の僕より大きなキミの手。その温かさを初めて知ったんだ。
     
     僕にとって人生大一番の賭けをした日。キミがあのビルに辿り着けるかどうかも正直確信はなくて。それでもキミは来てくれて、僕の手を躊躇いなく掴んでくれた。差し出した手が少し震えていたこと、キミに隠せただろうか。気づかなかっただろうね。キミの手が触れた瞬間、嘘みたいに震えが止まったから。
     
     不確かないつかだった手術の日も。手術は終わったと嘘をついて病院を抜け出したことに対してお小言は言いながらもキミは約束通り手を握ってくれた。僕が麻酔で意識を失う瞬間までキミの手の温もりだけが確かで、目を覚ました瞬間も痛いくらいの力で意識を引っ張り上げられた気分だった。
     
     キミがすきだ。すきで、すきで、だいすきで。僕にとってキミより大切なものなんてこの世界にはないんだよ。そう言ったらキミはきっと大袈裟だって笑うんだろうけど。
     僕を光の差す方へ連れ出してくれた手。僕に賭けると応えてくれた手。
     キミに手を引かれるだけじゃなくて、僕もキミの手を引きたくて。ちいさな頃から握りしめてきた想いを受け止めてくれただけじゃなくて、手を繋ぐ理由に名前をつけてくれたのはキミだった。
     
    「楓ちゃん」
     
     だいすきなその名前を仕事中は呼ばないようにしていた。どうしたって特別な響きを持ってしまうから。
     
    「楓ちゃん、僕と――」
     
     キミの名前を呼んで手を差し出したら、キミは僕の手を取ってくれるだろうか。少し前の僕だったら不安だったかもしれない。でもキミの大切が僕だって、キミがちゃんと教えてくれたから。
     きっと、もう手は震えない。
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    DONE*第23回楓可不ワンドロ・ワンライに投稿したものです
    *お題【お腹いっぱい/半分こ】
    楓可不『ベツバラ→ヨリミチ・マワリミチ』「はあ~美味しかった!」
    「でしょ? 來人さんが教えてくれたんだけど、可不可もすきな味だと思ったんだ」
     楓と來人はこっそり出かけてはラーメン屋を開拓しているらしい。ふたりで秘密を共有している様子に何も思わないわけではないが、気に入ったラーメン屋があるとこうして可不可を連れてきてくれるので、まあいいか、と自分に言い聞かせている。
    「うん! 美味しかった……つい替え玉までしちゃったからお腹が苦しいくらいかも」
    「あはは。じゃあ寮まで歩いて帰ろうか」
     俺も結構食べたからなあ。その言葉通り楓は今日もよく食べていた。可不可がラーメン一人前に替え玉半玉を食べている隣で、楓は可不可と同じラーメンの大盛りに味玉をトッピングし、小ライス、そして迷いに迷って焼餃子を食べ、しっかり一玉替え玉をしていた。味玉も餃子も半分可不可に、と言ってくれたので、黄身がトロトロになった味玉はありがたくいただいたが、餃子は結局ひとつで限界だった。可不可よりかなり多い量を可不可より早く完食して、満足げな横顔を覗くと、弧を描いた唇が油のせいかいつもより艶やかに見えた。
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