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    Happy Birthday, KAFKA!
    ⚠️BD企画に関する捏造を多量に含みます。

    Happy Birthday, KAFKA!
    あなたの旅がいつもあなたが思い描く以上のものでありますように🤞✨

    楓可不『僕のお気に入り』 mahorovaでのバースデーイベントと並行して記念のブロマイドを作成することになり、話し合いの結果、テーマは『FAV collection』に決まった。誕生日を迎える区長の「お気に入り」をドールボックス風に飾り、撮影するだけでなく、イベント当日は撮影ブースを再現したフォトスポットを設置する予定だ。参加してくれたお客様も、区長たちがお気に入りを詰め込んだ空間で写真を撮れるというわけだ。
     装飾にあたっていくつかの要素は共通とすることになった。ファーストツアーのおもてなしライブで着用した衣装、バースデーパーティー風の撮影のために仕立てたスーツ、HAMAハウスのルームプレート、それからルームメイトのミニアバター。ミニアバターはそれぞれモデルとなった本人たちらしい動きをするように可不可と生行でプログラミングする予定だ。可不可の誕生日用に虎部屋の二人は早めに作っておいた。練牙はプレゼントを渡すタイミングを掴みかねてかソワソワと動き回っているのに対して、興味なさげ気配を消した添はあわよくば抜け出そうと隙を窺っている。
     
    「わあ! ドールボックス風の背景って言われてもピンときてなかったんだけど、こんな感じなんだ。素敵だね!」
     撮影に立ち会うことになっていた楓が飾りつけられた壁の前で目を輝かせている。ああでもない、こうでもないと中身も配置も何度も手直しをした背景は我ながらいい出来だ。
     愛用のタロットカードと釣り道具は真っ先に決定した。趣味や特技として公言しているのでお客様にもわかりやすいだろう。朝班としてもHAMAツアーズとしても初めてのフィーチャーライブに向けた研修旅行で買った熊よけの鈴も早い段階で決めていた。
    「相談は受けていたけど俺からのお土産も飾ってあるって、ちょっと照れくさいね。すごく個人的なものだけど、本当にこれでいいの?」
    「何言ってんの! 楓ちゃんからのお土産ぜ~んぶ飾りたかったのをひとつに絞ったんだよ」
    「あはは……そうだったね」
     誇張ではなく楓から今まで貰ったたくさんのお土産はどれも可不可にとってお気に入りだから全部置きたいくらいだったが、あえてひとつ選ぶならどれかと楓に聞いてブリキの魚を。理由は「俺も持ってるお揃いだからね」とのこと。雪風ともお揃いというのは気に食わないが……。
     楓が壁を彩る可不可の「お気に入り」に視線を戻す。ひとつひとつ、じっくりと。
    「いいね。すごくいい。可不可らしさが詰まってる……宝箱みたいだ」
    「うん。僕もそう思う」
     候補に挙げたけれどさまざまな理由で没になった「お気に入り」もたくさんある。例えば……母さんからのプレゼントのビデオレター。
     ――可不可。母さんと、大一番の賭けをしようか。人生で一番大切な宝物を見つけられるかどうか。
     あの時、もう見つけているかもしれないと思っていたものがそうだったと、今なら自信を持って答えられる。
     可不可が選ばなかった『お気に入り』には楓が作ってくれた『はじめてのたび』のしおりも入っている。初めて楓が釣り上げた魚の魚拓。毎年楓が持ってきてくれたおみくじ。何度も遊ぶうちにところどころ傷んでしまっている生涯ゲームのボード。HAMAハウスに来たばかりの雨の日に楓と作った紙粘土のしゅうまい。
     可不可にとって、人生で一番大切な宝物のような人。楓がくれたものも時間も、何もかもが可不可にとって宝物だ。病院で過ごしていた頃、楓が可不可の世界のほとんどだった。
     けれど、今はあの頃とは少し違う。
     初めてHAMAを出た神戸への研修旅行で買ったお土産。上高地でハイキングをした時のトレッキングシューズ。
     凪が釣り上げた、幼い可不可が失くしてしまった長靴。潜と行ったコンサートのチケットの半券。礼光たちとホリデーアクアタウンに出店した時のスーベニアチャーム。あく太が撮影してくれたしゅうまい主演の映像作品。子タろと作った世界征服の企画書。
     人生最大の賭けに勝った可不可は埠頭を出て、HAMAツアーズを立ち上げて、個性豊かな区長たちと出会って……。楓以外にも大切なものがたくさん増えた。
    「あれ? ここ、空いてる?」
     装飾を眺めていた楓の視線が止まった。可不可が写る予定のスペースとは別に、カセットプレイヤーとタロットカードの間にぽっかりと残った空白を指差して首を傾げる。
    「うん。そこは最後に飾ろうと思って」
     何にするの? と問いかける視線に答えるように、最後の「お気に入り」を差し出す。可不可のとびきりの「お気に入り」だ。ひと目見て、それが何かわかった楓が照れくさそうに目を細めた。
    「キミが飾ってくれる?」
    「……もちろん!」
     何度も繰り返し聴いて、ラベルが掠れてしまったカセットテープ。可不可の手からそっと受け取った楓が空白を埋めた。
    「ねえ、楓ちゃん」
    「ん?」
     ねえ、楓ちゃん。キミが……楓ちゃんが僕にとって特別に大切なんだって、どうしたら伝わるのかな?
    「僕のこと、見ていてね」
    「撮影のこと? 当たり前でしょ! そのために来たんだから」
     楓が普段と変わらない調子で笑う。可不可の夜明けを告げる太陽はいつだって眩しい。
     ――今、キミのそばに宝物はあるか?
     二〇歳の誕生日プレゼント。ビデオレターの中で問いかけた母さんの真剣な眼差しが頭を過ぎる。
     ――あるよ。すぐそばに。僕の宝物が。
     可不可の答えは変わらない。むしろ楓が唯一だった頃よりも今の方がずっと。
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    DONEHappy Birthday, KAFKA!
    ⚠️BD企画に関する捏造を多量に含みます。

    Happy Birthday, KAFKA!
    あなたの旅がいつもあなたが思い描く以上のものでありますように🤞✨
    楓可不『僕のお気に入り』 mahorovaでのバースデーイベントと並行して記念のブロマイドを作成することになり、話し合いの結果、テーマは『FAV collection』に決まった。誕生日を迎える区長の「お気に入り」をドールボックス風に飾り、撮影するだけでなく、イベント当日は撮影ブースを再現したフォトスポットを設置する予定だ。参加してくれたお客様も、区長たちがお気に入りを詰め込んだ空間で写真を撮れるというわけだ。
     装飾にあたっていくつかの要素は共通とすることになった。ファーストツアーのおもてなしライブで着用した衣装、バースデーパーティー風の撮影のために仕立てたスーツ、HAMAハウスのルームプレート、それからルームメイトのミニアバター。ミニアバターはそれぞれモデルとなった本人たちらしい動きをするように可不可と生行でプログラミングする予定だ。可不可の誕生日用に虎部屋の二人は早めに作っておいた。練牙はプレゼントを渡すタイミングを掴みかねてかソワソワと動き回っているのに対して、興味なさげ気配を消した添はあわよくば抜け出そうと隙を窺っている。
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