無題夏羽と勇翔はいつも仲良しの同僚だった。軍人として毎日頑張っている二人は、周りからの印象も良かった。秘密はお互い隠さず、いつも仲良し。特に歳上として勇翔の世話をしている夏羽は、周囲の憧れの的だった。勇翔も夏羽の言うことをよく聞く、とても良い子だった。
ある日の夕方、部屋にいた夏羽は勇翔の腕をふと確認した。
「(あれ、こいつの腕…なんでこんな黒のリボン?みたいなものをつけてるんだ)」
袖口から見えた勇翔の腕には確かにシルクに近い質感の布が見えていた。不思議に感じた夏羽は特に気にせず、勇翔に質問をした。
「なんで腕にそんなものをつけてるんだ?」
それを聞いた勇翔は微笑みながら、答えた。
「今は秘密です。きっとびっくりすることですよ!今は気にしないでください」と。
それから夏羽は勇翔の腕のことばかり気にするようになったし、ことある事に聞いた。
「なんだそれは?」「まさか病気か?」「痛くないのか?」
しかし必ず勇翔は「今は秘密です」としか言わなかった。
食事の時も風呂に入った時も仕事をしてる時も夜寝る時も夏羽は黙々勇翔の腕のことを考えていた。
ある日、街で伝染病が流行った。軍隊の中でもすぐ感染者が出てしまった。
夏羽と勇翔は、お互い気をつけるようにしたが、とうとう勇翔もその伝染病にかかってしまった。
ある日の朝、勇翔がベッドに寝込んでいると夏羽が来た。夏羽は勇翔に「余命宣告されたんだなお前…」と涙ぐんで話した。
勇翔はまた微笑み、「そうですね…もっと長くいたかったんですけどね……」と答えた。
そして夏羽は深々とお辞儀をしながら「勇翔、頼む!お前の腕のことが気になるんだ!話してくれ!」とお願いをした。
勇翔は「まあ、もう残り少ないので…いいですよ。」と答え、「僕の腕の黒のリボンを解いてください。そしたら真実が分かります」と付け加えながら話した。
夏羽は、やっと…!と思い、勇翔の発言も特に気にせず、勇翔の腕に触れた。
本当に黒のリボンがついてた。シルクのようなツルツルとしたリボンを夏羽はゆっくり解いた。
リボンを取ると、
腕がゴトリと落ちた。
勇翔は死んでいた。