SFではない設バンの小説(※冒頭部分のみ)────────────────────────────────────────────────
「…実はわたし、宇宙人なんです!」
「…は?」
放課後。帰り道。別れ際に一つ年下の後輩がいきなりカミングアウトしてきた。
前々からズレた性格をしているかと思っていたが、とうとう本格的に壊れてしまったらしい。
彼女の瞳は真っ直ぐ俺を閉じ込めようとしていて、少し居心地が悪かった。
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それから、その自称宇宙人を名乗る後輩はやたらめったら俺の後ろをついて回るようになった。
学校で鉢合わせた時なんて最悪だ。
「設楽先輩!」と飽きもせず、親鳥を追いかける雛のようにちょこまかと。
放課後の音楽室。
吹奏楽部がいない隙を狙って来てるのに。
「お前、何で最近寝ながらピアノ聴いてるんだ?残念ながら子守唄じゃないぞ」
「寝てませんよ!」
「ずっと目を閉じてるだろ」
「私の星だと、テレパシーを受信する時こうやって目を瞑るんです」
「…人の演奏をテレパシー扱いするなよ」
「あっ!すみません…」
「ふん」
止めていた指を動かし始めたら、彼女は再び瞳を閉じた。口角は緩く上がっている。だらしない顔だな。もう何回も聴いてるはずの曲を、こうして音楽室まで聴きにくるのは何故だろう。
ただ一つわかるのは、随分と物好きなヤツということだけだ。
コイツも、俺も。
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