冥王星には♡がある<1>
二十時過ぎの駅構内は一日を終え帰路に着く沢山の人々で交差していた。
おそ川書店の営業マン、松野カラ松もその一人だ。
たまたま退勤のタイミングが合い、会社のエントランスで会ったトド松と並んで歩いている。
トド松とはカラ松の五つ歳の離れた実弟で、同じ勤め先の広報課で働いている。
「ヘビーだったが、今週もナイスウィークだったぜ」
「何? ナイスウィークって」
トド松が笑う。
今日は金曜日。
おそ川書店は暦通りの勤務体系なので、カラ松もトド松も明日明後日と連休だ。
花の金曜日ともなれば、企業戦士たちは慰労という名目で居酒屋を筆頭に呑みの場へと繰り出すものだろう。
しかしカラ松とトド松はまっすぐ各々の家路を目指している。
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