空に光るはすべて星 151〜161250422 諦めきれない
祝15話放映二周年!前夜祭
医務室で医師から新しいカートリッジを受け取り義体のそれと交換する。定期的ないつもの処置。難民キャンプを隠れ家にしてる間は難民支援の医療機材として入手できるが、撤収の話が出た今また闇ルートを探らねば…って、俺はいつまで生き続けるつもりなのか? ……さて、捕虜の様子を見に行かなければ
……こども……?こどもがふたり……?いや、背中の赤ん坊もいれてさんにんか?……いやだ。やめてくれ、おれ、は、もう、……ごめん……とうさ……。……めん、おれ、たべたくな、いらない、しにたくな、ちがう、しぬ、おれがしねば、とうさんは……さわるな、おれと、とうさんと、ふたりきりにしてく
250423 幸せになってよ
祝!15話放映二周年記念日
ソフィが使っていた教室から校舎裏に作られたソフィの墓が見える。撤退するってのに余計なものをと言うとナジは、弔いとは自分が死んで忘れ去られる恐怖を打ち消す行為だ、お前ならわかるはず。と言った。弔わない俺は死に場所を探して此処に流れ着いたのだ。死にたがる御曹司の事をぼんやり考えている
お前が死んでれば父さんは!と声が聞こえる。殺して欲しい期待が肯定され目も眩むようなどす黒い喜びが腹の底から湧き上がる。俺が死ねば、駄目な息子だ、最低な兄だ、ホルダーなんか名ばかりだ、そうだもう死ぬしかない。負の感情に溺れそうになった瞬間、「こいつの会社つぶれるんでしょ」と聞こえた
250424 どっちが、
「こいつの会社、つぶれるんでしょ」子どもの冷たい言葉に思わず俺の身体は動き、枷を外された手で目の前の男のシャツを必死に掴む。「家族のことなんだ」俺の瞳を見た男はたじろいだように見えたがその途端、爆発音が響いて天井が崩れ落ち、そして何故か俺は身を投げ出して子供を瓦礫からかばっていた
俺の名を呼ぶ声がする。耳鳴りの向こう、粉塵の彼方、…景色が一変して、炎の中、忘れられない、たいせつな、…古傷が、開き、助けを呼ぶ、あのこの、くちが、開いて、俺を、呼び、目が合って、手を伸ばした。なのに、なぜ、…こめかみから吹き出す血で視界が染まった途端、俺を呼ぶセドの声が聞こえた
250425 自分だけ知ってればいい
あれから何人、死にゆく子供を見送ったか。瓦礫に潰された子供と、助かった子供。死にたくないと震えてた子供と、俺が死んでいればと泣いた子供。…出血が酷い。脈も弱い。意識が戻らない。いつも2人でいた子供の生死を分けたのは運だ。諦めろ。行け。俺みたいな亡霊なんか置いて何処までも走って行け
……俺、最初、自分の声かと思ったんだ。父さん、助けて、そばにいて。……俺いつも、自分だったらどうして欲しいかって考えるんだ。はじめて弟と会った時もそうだった。母さんがいなくなって、さみしくて、抱きしめて欲しいって思ったから弟にそうしたように、俺、あの子と、自分を、助けたかったんだ
250426 待て、は得意じゃない
生きてるな。まだやれるか?何人残ってる?ナジの通信では最後の1台が到着するまであと20分。輸送機が無事飛び立つまで敵を引きつけ、刺し違えても移送を完了させなければ。ベッシ待て、お前またチェーンガン置いてきたな。俺が前に出、…また、俺が、俺だけが残…… いま俺も、そっちに、行く、から
俺はなぜ走っているのか?俺を殺そうとした少女。ゆれる腕、軽い。俺の背中に血だまりが広がってゆく。微かな車の音へ、頼れる者を探して走る。か細い声が「なにがしたいんだよ…」と呟く。まだ、生きて、いる。何が?何がしたいのか俺は?轟音とともに木々をなぎ倒して俺たちの目の前へMSが落ちてきた
250427 最終手段
「べっしの…ぷろどろす…」こいつらのMS。装甲が焼け溶けて、戦闘、か…。ハッチを開ける。血の臭い、ズタズタの、肉、ぶらさがっ、…俺は吐いてしまう。胃がせり上がり痙攣する。しかし、これは、コクピットは、まだ、少女も、生きている。俺、が、できること。手を伸ばし、パイロットの遺体に触れる
残ったのは俺と、敵は2機。敵のMSが移送トレーラーに気付き、飛行場の方へ振り返る。止めないと、死んだあいつらが浮かばれな… 車の下のあの子が脳裏に浮かぶ。こんな時に。俺の血塗れの左手、捨てた、いらない、そんなもの!甘ったれた俺の正義感のせいで、なにもかも失っ…
その瞬間、一筋の光、が
250428 欲しいのは、そっちじゃない
蒼白い、星が、早暁の空に昇り、その一瞬。
隙を見せた1機の背に向け俺は攻撃し、そのまま2機目へ距離を詰め、迎撃をかわし迫る。ブレードで相手のコクピットを狙い斬り払い、…2機とも大破、カメラアイの停止を確認、……俺はまた、生き残ったのか。通信のノイズ音、ベッシか、生きていたのか?助かっ
いきて、いたんだ……おれの、ひざの、うえで、まだ、…おれ、医者とか病院とか、誰、か、助けてくれる、車、探す、ため、MS、で、……高く上昇、する、ことしか、考えて、なくて、……すこし、ずつ、冷たく、なって、とうさん、って。きてくれたんだ。って、さいご……俺の、都合のいい、空耳、か、な
250429 どこへ帰ればいい?
このままにしてはおけないと言ったのは俺だ。男は、花壇の隅を指差し「ここに埋葬しろ」と言った。スコップを渡して男は離れる。俺は土を掘る。地球の硬い土。小石や木の根や虫を掻き分け少女が納まる大きさの穴を掘る。「何が楽しくて土いじりなんか」温室を壊したあの日から随分遠くまで来てしまった
長い夜が明け、ナジから輸送機が離陸したと連絡が来た。戦況報告するとナジの方から「お前はどうする?」と聞かれる。俺の目線の先には、ソフィの空っぽな墓の横にシーシアを埋葬する御曹司が朝焼けに照らされて居た。「考える時間が欲しくなった」考える?何を?…俺は通信を切り御曹司に向かって歩く
250430 ずっとそばにいて
「父さん……って聞こえたから、助けて欲しかったんじゃ、ないか、って」その瞬間、俺はまたあの炎に包まれる。あの子に手を伸ばす。いま、助け……いつもはそこで炎に掻き消されるあの子が、俺を、見て、助けを、信じて、希望。にこりと笑う。……何て事だ、俺は、あの子の、最期の笑顔を、思い出せた
「どうしたらいいかなんて自分で考えるんだな」男は素っ気なく言い立ち去ろうとする。俺は、どうすれば。俺に残されたもの、ラウダ、会社、社員、父さんが残してくれたもの。大切な俺の居場所。俺と、父さんを繋ぐもの。「教えてくれないか」男が振り返る。朝日が眩しい。俺は、もう、進むしかないんだ
250501 見逃すつもりもないけれど
ナジなら俺だが奴の話か?クエタで御曹司を確保したのには驚いたよ。奴にしては珍しく執着してて、取引とか持ち札とか盾とか言ってたが、本音は放っておけなかったんだろう律儀な男だよ。…俺の方から「どうする?」と促したんだ。ずっと目を逸らしていた事をたっぷり考えられて良かったんじゃないかな
俺がセドだけど聞きたい事って?俺とシーシアはオルに捕虜の世話を頼まれたんだけど、父さんの仇を討ちたいってシーシアが言い出して、爆撃に巻き込まれてシーシアは…。俺その時オルが義手だって知ったし、御曹司がシーシアを埋葬してくれたと後からオルに聞いた。なあオルは今どこにいるんだ教えてよ
250430 どこまでも行くよ
16話放映二周年記念日
本社フロントのゲートから社長室まで何度か止められたが前髪のおかげで俺だと認められて通してもらえた。あんたが染め直すなと助言してくれたお陰だ。俺を見た途端弟が倒れたのは驚いたけど、これからは俺が頑張らなきゃな……俺、ただいま、ってどうしても言えなかったんだ…本当の事なんて言えないよ
髪はぼさぼさで目にかかるほど伸びている。俺のくたくたな黒パーカーを与え目立つ前髪を隠しスペーシアンの御曹司とは気付かれない様に、合わない官給ブーツは靴下を重ね履きさせ靴擦れを防止し旅が続けられる様に、……って俺は何やってんだ?オカンか??脳裏にナジのにやにや顔が浮かんで頭を抱える