年明けまで つけっぱなしのテレビから年末の特別番組が流れていて、芸能人の笑い声が部屋に響く。真剣に見ている訳でなく、ただのBGMと化してるそれは、同棲している二人にとっては日常茶飯事の事である。
ここ数日で一年の部屋の汚れも大掃除で綺麗さっぱりと落とし、正月飾りも出した。あとは年が明けるのを待つのみとなった。
外では粉雪が僅かに降っており、窓からそれを眺めながらちびちびと酒を飲み進める隠し刀と、同じく酒を飲みながら本を読み耽っている福沢諭吉は、半纏を着て炬燵でぬくぬくと暖を取っている。
突如、隠し刀が腰を上げ、テーブル越しに福沢へ近付いてきた。本に影が落ちて読みにくくなったが、すぐ退くだろうと気にせず文字を追う。しかし全く動く気配が無く、流石に変に思った福沢は顔を上げると、そのまま動かないでくれ、と言われ、訳も分からぬまま固まった。
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