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    hoshina0018

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    hoshina0018

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    #主福
    #RotR

    「…よくこんな臭いものが吸えるな。」
    隠し刀がしかめっ面を浮かべて悪態をつく。
    この匂いの出処の人物に用事があって訪ねに来たのだが、タイミング悪く西洋煙草を吸い始めたところだった。
    匂いが付くと任務に支障が出る事があるため嫌っているのもあるが、単純にこの匂いが苦手なのだ。
    「そうですか?慣れれば意外といけますよ。」
    縁側の柱に寄りかかりながら一服している福沢は、ふーっと空に向かって煙を吐く。
    恋仲になる前は、隠し刀を見つけると深々と頭を下げて挨拶し、長屋に遊びに来た時にはしゃんと姿勢をのばして、正座を一切崩さない礼儀正しい人だった。
    今も礼節を重んじる人ではあるが、心許せる人の前や一人の時などはリラックスしてる証拠なのか、こういった普段からはあまり想像出来ない所作をするので少しドキリとする。
    「あなたにはまだ早かったですかね。」
    ふふ、と朗らかに笑いながら、もう一度深く吸い込んで、吐く。
    相手に気を使ってか、まだ楽しめそうな煙草の火を消した。
    その言動と行動に、子供扱いされた気がした隠し刀は、おもむろに福沢の顎を持ち上げ、口付ける。
    唇を割って口内へ舌を入れると、苦い煙草のフレーバーがした。
    「………やはり、私には合わないな…」
    先程よりも眉をひそめてそう言うので、福沢は思わず吹き出して笑い出すのであった。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。諭吉が隠し刀の爪を切る話。意味があるようでないような、尤もなようで馬鹿馬鹿しいささやかな読み合いです。相手の爪を切る動作って、ちょっと良いですね……

    >前作:黄金時間
    https://poipiku.com/271957/11170821.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    鹿爪 冬は、朝だという。かの清少納言の言は、数百年経った今でも尚十分通じる感覚だろう。福沢諭吉は湯屋の二階で窓の隙間から、そっと町が活気付いてゆく様を眺めていた。きりりと引き締まった冷たい空気に起こされ、その清涼さに浸った後、少しでも暖を取ろうとする一連の朝課に趣を感じられる。霜柱は先日踏んだ――情人である隠し刀とぱり、さく、ざく、と子供のように音の違いを楽しんで辺り一面を蹂躙した。雪は恐らく、そう遠くないうちにお目にかかるだろう。
     諭吉にとっての冬の朝の楽しみとは、朝湯に入ることだった。寒さで目覚め、冷えた体をゆるりと温める。朝湯は生まれたてのお湯が瑞々しく、体の隅々まで染み通って活きが良い。一息つくどころか何十年も若返るかのような心地にさせてくれる。特に、隠し刀が常連である湯屋は湯だけでなく様々な心尽くしがあるため、過ごしやすい。例えば今も、半ば専用の部屋のようなものが用意され、隠し刀と諭吉は二人してだらけている。
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