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    瀬名🍭

    書きかけ、未修正の物含めてSS落書きごちゃ混ぜ。

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    瀬名🍭

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    Play A Love Song/まゆあか

    ##まゆあか

    赤司らはスカイダイビングに必要な全ての資格を有していた。健全な肉体と熱に浮いた魂、約束された未来に、凍てついた戦場(カトラリー)。二人で一つの放物線。
     搭乗した航空機が規定の高さに達して、彼らは地上へ向け、飛び降りた。風を切る音が峻烈に聴覚を覆い尽くす。体が目まぐるしく数度回転するも、気絶している暇はない。ややあって体勢が安定した。まるく地平線が伸び、四方へ煙草を吹きかけたように雲海が横たわっている。彼のズボンの裾が激しくはためいているのが見えた。揃いの赤い髪が強風で逆立ち、額がつるりと日差しを反射した。頭上に日暈。あと一分もしないうちにこの気ままな自由落下(フリーフォール)は終わる。似姿と魂を等分してもなお一つだけ二者で切り分けられない物があった。早く取り交わさねばならない。上空四千メートルから時速二百キロで滑るように地表へ下降していく、この空の旅が終わる間に。だが、
    「それはアイツにくれてやるといい、僕には不要のものだ」
     彼は片目に陽光を宿して、わずかな目くばせの後、パラシュートを広げ、「お先に」と下降していった。麗かな春の午後、眼下には紺碧の大海が広がる。それはどこにもない風景。無意識の海。穏やかな波間に白くぼやけた落下傘が吸い込まれていく。それから、赤司の意識はタンデム飛行(二人乗り)ではなくなった。
     目が覚めて、赤司は苦笑いする。時に雄弁に、夜間構築された景色は物語る。夢という構造物は酷く主観的だが、主役は覚醒した意識を持たない、空っぽの器になって、現実をつづら折りに辿り、ジグザグに再生された感情で己を満たし、つぎはぎだらけの絨毯を踏むしかない。繋ぎ船を渡り歩く猫のように。
    「今更惜しむことなど」オレの恋心は彼に譲ったのだから。だが……。少しの逡巡の後、赤司はあくまでも一人の後輩として以下の文章を黛宛に送った。
    「空の上ってご興味ありますか?」
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    Replies from the creator

    瀬名🍭

    PROGRESS不定期でトとジェがお茶会する♣️🐬SSのまとめ(未完) 捏造多。随時更新。お題:salty lovers
    Merman’s test garden 魚類は虫歯にならない。歯を蝕む病は人類と砂糖の出会いによって生まれ、海中暮らしで甘味を知らなかった人魚もまた、人と交わることで歯を患うようになったと言われる。太古の昔、人間の王子と結ばれた人魚の姫は、心優しいハンサムではなく実際のところお城の豪華なテーブルに並んだ愛しき者たち――チョコレートケーキにミルクレープ、焼きたてのスコーンにクロテッドクリームとたっぷりのジャムを添えた、華麗なるティータイム――と恋に落ちた、なんて使い古されたジョークがある程だ。
     それまで、栄養補給を主たる眼目に据えた、質実な食卓しか知らぬ人魚たちの心を蕩かしたこれら、危険で甘美な食の嗜好品はsweety loversと名付けられ持て囃された。他方、人間に人魚、獣人、妖精と多様な種族がファースト・コンタクトを済ませたばかりで、種の保存において血筋の混淆を危険視する声も少なくなかった。昼日向に会いたくても会えず、仲を公言することもできない、陸の上の恋人を持つ人魚たちはなかなか口にできぬ希少な砂糖になぞらえ、情人をもまたsweety loversと隠れて呼びならわし、種の垣根を越え、忍んで愛を交わしたと伝えられている。
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