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    瀬名🍭

    書きかけ、未修正の物含めてSS落書きごちゃ混ぜ。

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    瀬名🍭

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    捏造ワンダァラァン

    ##とれじぇい

    とれじぇ続き 伝承によれば、NRC設立の端緒を開いたのはドワーフ鉱山で魔法石が発掘されたことにある。賢者の島の北端に広がる魔の森の山中には所々に鋭い石塔が月を煽るように牙を剥いている。一説では、賢者の島のある辺りは昔火山群だったが、火山が大爆発を起こし、陸地の大部分が海に沈んでしまったという。その理由は自然的なものとも、賢者の地に眠る強大な魔の力を奪い合って、魔法士たちの戦乱の舞台となったが故の人為的なものとも言われる。平らに切り出したような高く聳える死火山となった噴石丘の上にNRCの校舎があった。印象的な黒々とした屋根は溶岩を利用して作られた物だ。学園の敷地である断崖絶壁の後方には海、三方を魔法エネルギーが満ち満ちて鬱蒼とした森に囲まれ、唯一校舎と外部を繋ぐ経路は切り立った急峻な葛折、訪問者を遮断するが如く跳ね橋まで擁している。最早外敵を想定し城攻めに耐えうるように設計された山深くの要塞と言ってよく、古の戦火の名残りを残していた。黒々と聳えるNRC校舎はまるで、島中央部の市街地を挟んで、島南部の湾にぽっかりと浮かぶライバル高RSAを睥睨しているようである。
    「これもまた一つの説に過ぎません」
    と紫の間接照明に照らし出されたモストロ・ラウンジのVIPルームで、アズールは語る。彼は手元の古びた上製本に視線を落としている。アズールが愛用する書斎机の机上には、今彼が手に取っている書籍のタイトルを箔押しした外箱が置いてある。学園の周年事業で学園長が編纂した記念誌。それを片手に持ち、たまに額を掻いている。
    「歴史のある学園とはいえ、創立の由来が今一判然としないというのも不思議な話ですね」
     とジェイドは率直な感想を述べた。
    「学園長が箔をつけるために色々な伝承を熱心に集めているんでしょうね。発行されるごとに創立のあらましに関する項目がどんどん増え、文字も小さくなっている。或いは隠したい事実でもあるのか……」
     少し退屈そうに自らも別の時代の記念誌を手にしていたジェイドだったが、秘匿情報の可能性に目を光らせた。
    「眉唾な情報も含まれているのでしょうがね」とアズール。
    「それは公的な機関誌としてどうなんでしょうか」
    ジェイドのもっともな発言にアズールは肩を竦める。
    「僕も入学するまで学園長があのような……、"お優しい"方だとは思っていませんでしたからね。僕としては好都合ですが。情報の質という点においては玉石混交でしょうが、この島に伝わるフォークロアと見れば一見の価値があるかもしれません。お前からしたらつまらぬ与太話に過ぎないでしょうが、確かにこの学園には不可思議な点が散見される」
    「たとえば?」
    「オンボロ寮の存在。モストロ・ラウンジ二号店の候補に選んだ際は特に気にしてはいませんでしたが、僕も本調子ではなかったのでしょうね。今になってあれがどのような精神の名の下に作られた寮なのか気になり、謂れをあたることにしたんです」
    とアズールは指で記念誌を指し示す。
    「過去にもう一つ確かに実在した寮。しかし、この百年で発行された記念誌のうちどこにも詳細が載っていない」
    「もっと古い時代に廃されたのでしょうか」
    「その可能性はあります。しかし、少なくとも百年ぼろ屋をそのままにしているというのもぞっとしない。敷地が幾ら広大とはいえ、空間が無駄すぎる。そしてこれはオンボロ寮に限った話ではありません。荒屋、今では用途不明の建築物が校内の複数箇所でそのまま打ち捨てられている」
    「大した管理不行き届きですね」
    「そうなんです。これより古い記念誌は保存状態が悪く希少書の扱いとなっており、借りるにしても時間がかかるようですし」
    「それは……。他の古文書でも更に古い年代物が丁寧に管理されているのに、何だか謎めいていますね」
    「お前も少しは興味をそそられましたか」
    とアズールは得意げな調子だが、嬉々として死蔵状態だった学校の周年誌さえ読み込む者は、彼のようにどんな情報も武器にする名うての商人を自負する者か、その手のギークしかいないだろう。
    「土地管理の杜撰さに呆れる一方で嬉しい発見もありました」
     アズールの発言にジェイドがページから視線を上げ小首を傾げると、
    「過去に僕と似たような考えの人がいたんでしょうね。オクタヴィネルの先達かもしれませんが」
    とアズールが椅子を引いて後方を振り返る。金庫の前に学園の地図が掛けられていて、移動販売の出店地としてめぼしい場所に赤でばつ印がつけられていた。そのうちの一箇所をペンの羽で叩く。
    「お前が今度視察する運動場ですが、あの場所で過去、商業的に利益をあげようとした痕跡が見つかりました。どうやら以前カフェスペースがあったようです。これも最早廃れ跡地になっていますが」
    「ずっと昔に放逐され誰にも顧みられない場所なら、視察にも適していそうですね」
    「これぞ先人からの贈り物。二月には全国魔法士養成学校総合文化祭も控えています。出店場所の本命はVDCが開催されるコロシアムですが、その承認を得るためにも候補地をつぶさに調査したという実績は必要ですからね。ジェイド、頼みましたよ」
    「承知しました」
    とジェイドが胸に手を当てて答えると、アズールは一つ頷いて、今度はまた違う書籍を手に取っている。背にはコロシアム設計者の名に、会議報告書という題字が記されている。視線に気づいたアズールが、
    「お前も読みますか?」
    とジェイドに向け、文面を開いてみせた。ジェイドが瞬時に読み取ったところでは、コロシアムがどこかの神殿から移築されたこと、また後続には設計資料や増設の変遷が書かれているらしい。
    「いえ、遠慮しておきます」
    とジェイドが固辞するのもアズールは織り込み済みのようだった。
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    瀬名🍭

    PROGRESS不定期でトとジェがお茶会する♣️🐬SSのまとめ(未完) 捏造多。随時更新。お題:salty lovers
    Merman’s test garden 魚類は虫歯にならない。歯を蝕む病は人類と砂糖の出会いによって生まれ、海中暮らしで甘味を知らなかった人魚もまた、人と交わることで歯を患うようになったと言われる。太古の昔、人間の王子と結ばれた人魚の姫は、心優しいハンサムではなく実際のところお城の豪華なテーブルに並んだ愛しき者たち――チョコレートケーキにミルクレープ、焼きたてのスコーンにクロテッドクリームとたっぷりのジャムを添えた、華麗なるティータイム――と恋に落ちた、なんて使い古されたジョークがある程だ。
     それまで、栄養補給を主たる眼目に据えた、質実な食卓しか知らぬ人魚たちの心を蕩かしたこれら、危険で甘美な食の嗜好品はsweety loversと名付けられ持て囃された。他方、人間に人魚、獣人、妖精と多様な種族がファースト・コンタクトを済ませたばかりで、種の保存において血筋の混淆を危険視する声も少なくなかった。昼日向に会いたくても会えず、仲を公言することもできない、陸の上の恋人を持つ人魚たちはなかなか口にできぬ希少な砂糖になぞらえ、情人をもまたsweety loversと隠れて呼びならわし、種の垣根を越え、忍んで愛を交わしたと伝えられている。
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