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    瀬名🍭

    書きかけ、未修正の物含めてSS落書きごちゃ混ぜ。

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    瀬名🍭

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    とじぇ 今週でミュージカル終わらせるとか言ってた人は誰ですか?

    ##とれじぇい

    とじぇ 案ずるより産むが易しとは言うが、他寮を巻き込んでホリデー前にリドルをモストロへ連れて行きたいというトレイの"個人的"な手回しをよそに、すんなりと事は運んだ。と、トレイ自身には感じられたが、しかしそれは彼が逡巡を巡らす中で決心し、慎重な準備をしたからこその賜物といえた。
    「ボクがオクタヴィネルのモストロ・ラウンジに?」
     波乱の期末試験を終え、冬学期が始まったかと思えばすぐにウィンター・ホリデーが控えている。リドルとトレイ、ケイトの三人は、寮生たちが羽目を外しすぎないよう、ハーツラビュル流の法的事項エスプリを織り交ぜながら、休暇中の過ごし方に関する諸注意をまとめ終えところだった。赤を基調にした華やかな寮の談話室で、リドルは柳眉をひそめる。
     背もたれにハートの女王のアイコンを用いた、総本革のウィングバックチェア。この真紅の玉座にちょこんとリドルが腰掛けている。リドルは足を組んだ膝の上に、行儀よく両手を乗せていた。彼は小柄で相貌にあどけなさを残していたが、涼やかなまなざしに、凛として玲瓏たる声、洗練された物腰と十七歳とは思えない堂々とした風格を備えており、談話室に置かれた最高級の調度品を愛用するのに、この学園の誰よりふさわしい。間違いなく主の座は彼のものだった。
     リドルの座っているシングルソファとL字型になるように二人掛けのソファが置かれており、トレイが腰を下ろしている。ケイトはトレイとリドルの間に立ち、二人の顔を振り返って言った。
    「じゃーん! 見てこれ、クラスの子に貰ったチラシ! 特別ステージやったりホリデイ限定のメニューもあるみたい」
     ケイトがニヘーと八重歯を覗かせて、右腕に抱えていたクリアファイルから宣伝びらを取り出すと、センターテーブルの上に広げた。広告によれば、ホリデイ・コンサートと銘打たれた催しが執り行われるらしい。料理の宣材写真で食欲をそそり、エレガントな飾り文字で書かれた妖しげな惹句が踊っている。忘れられない体験を貴方に……。
    「アズールも随分精を出しているようだね。悪いけど、寮生たちもどこか落ち着かないし、休暇前だからと言って寮長たる僕がはしゃいでいたら話にならない。確認しておきたい用件もまだ二、三あるしね」
     卓の中心では女王の権勢を慶ぶように赤い薔薇が咲き誇っている。迅速に結論を出しそうなリドルをケイトが引き止める。
    「まあまあ、そこはオレ達もフォローするから。リドルくんってモストロ・ラウンジに行ったことなかったでしょ? 楽しめるんじゃないかなあ。学園生活を存分にエンジョイするのも寮長の役目だよ」
    「そんな役目聞いたことが……」
    「ね、トレイくんもモストロ・ラウンジのスイーツを、何でもない日のパーティー・メニューの参考にしたいって言ってたよね」
     ケイトがやや強引に話を進めながら、トレイに目配せする。事前の段取りではここでトレイがケイトの論調を援護する手筈なのだが。
    「確かに。これなんて、焼きたてでとても美味しそうだ」
    とトレイは、海鮮を使ったメイン料理や遊び心のあるドリンクメニューと並んで、雪化粧をしたように白いふわふわのスフレの写真を指差す。
    「味も何種かあるようだし、飾り付けも他の皿と統一されてて凝ってる。モストロ・ラウンジのようにコンセプトのある料理店のカフェメニューは、とても刺激になると思うよ」とトレイ。
    「そうでしょー? しかも、朗報。オレ、特設ステージの観覧券も多めに貰っちゃったんだよねー。リドルくん、トレイくん、オレらでハーツラビュルのお疲れ様会しない?」
    とケイトはウキウキした様子で片腕を上げ、目元でピースサインを披露した。
    「確かに、ハートの女王の法律に、休暇前に遊ぶなという条文はないし、残務もキミたちの手を借りたら問題なく終わるとは思うけど」
     リドルはまだ迷っていたが、今いち気の進まない様子だ。ここで、トレイが反旗を翻す。
    「話を持ってきてくれたケイトには悪いけど、リドルが気乗りしないならやめておくか?」
    と笑顔でトレイはあっけらかんと言い放つ。
    「えっ、そんなあ!」
    トレイくん、打ち合わせとちが〜う! とケイトはペースを乱される。オレが話を持ってきたも何もこれ、そもそもの提案者はトレイくんでしょー!? と内心で叫び、焦りを見せたケイトを横目にリドルが言う。
    「いいのかい? トレイ、デザートに心惹かれている様子だったけど。ボクのことは気にしないで、二人でお行きよ」
    「そりゃあ、興味はあるけど、リドルが行かないんじゃなあ。喜びも半分ってやつさ」
     などと素知らぬ顔でキザなことを言ってのけ、「オレとしては寮長が実際口にして、メニューを気に入るかどうかもいい判断材料になるしな」
    「キミ、喜び云々よりそっちが本音だろう」
    「そんなことはない。滞りなくなんでもない日のパーティーを行えるなら、それ以上の喜びはないさ」
     トレイの軽口にふんと鼻を鳴らしたリドルからトレイは視線を外し、ケイトへすまなさそうにアイコンタクトを送ってくる。ああ、そういうこと……でも味方への騙し討ちやめてよねー!? ケイトはハーツラビュルで苦楽を共にしたから知っているが、トレイはしばしばこういう意地悪をするし、人の良さそうな顔で恐らく楽しんでいる。
    「オレ振られまくり〜。悲しい」
     ケイトはしょげたように肩を落としてみせる。すると、リドルは観念したようにため息をついて言った。
    「いいよ。乗ってあげる」
     去る十月、永続的にハロウィンが続くと思われた事件が起こり、リドルがハロウィン終わらせ隊として事件解決に奔走した際、彼は娯楽も教養の一つだと思い知った。以来、レクリエーションへのリドルの態度は幾らか柔和になっていた。だから、恐らくこの提案はリドルに了承されるだろうとトレイも考えてはいたのだが。
    「それに、何か考えがおありなんだろう? キミたちもここのところ根を詰めてたようだからね」
    とリドルはトレイの手回しを知ってか知らずか釘をさす。ケイトとトレイは思わず目を見合わせた。リドルはやれやれと言った様子で、
    「もしかして、彼らオクタヴィネルも一枚噛んでいるね?」
    「な、何のことかなー」
    「隠さなくていいよ。実はボクもこれ、アズールに貰ったんだ。日頃の感謝だと言って。そのかわりに誰か相手を誘えと」
     リドルが懐から取り出したのは綺麗に折り畳まれたチラシ。それは今テーブルの上に置かれ、三人で検分した物と全く同一だった。それから、ステージの観覧券が複数枚。
    「ボクがモストロ・ラウンジに理由なく足を運ばないとアズールは分かっているだろうに、無理に押し付ける理由がその時はわからなかった。でも、今日やっと分かったよ」
    「あ、あれー?」トレイくーん? とケイトがトレイを見遣ると彼も困ったようにぽりぽりと頬を掻いている。
    「アズールもいい性格をしてるから、こうなることを予想して、ボクらを揶揄ったのかもしれないね」
    「報連相にちょーっと問題があったかなあ?」と白状するケイト。
    「リドルはやっぱりやめておくか?」とトレイが念押しすると、
    「いや、それなら尚のこと受けて立たないと。笑われたままでは、たまらないからね」
     はははとトレイは苦笑しているが、願った通りの結果になったので、彼はアズールの行動を取り立てて気にしていなかった。しかし、これにて一見落着とならないのがここハーツラビュル寮。
    「先輩たちお揃いで何やってるんすか? 打ち合わせ?」
    「先輩方! お疲れ様です!」
     授業が終わったのか、下級生の集団が談話室へ流れ込んでくる。リドルたちに声をかけてきたのは、エースとデュース。一年生きってのトラブルメイカーもとい、ハーツラビュル寮期待のホープ達である。二人の影からひょこりと姿を表したのは何かと話題に事欠かない、オンボロ寮の監督生、そして相棒の魔獣グリム。トレイたちにとっては恩人のようなメンバーが揃った。
    「お邪魔してます」
    「あ、そのチラシのごちそう! とっても美味しそうなんだゾ!」
     挨拶もそこそこにグリムが早速モストロ・ラウンジのビラに食いついている。
    「こら、グリム。失礼だろ」とデュース。「もしかして、皆さんで行かれるんですか?」
    「そうなんだよー。ねー」とトレイとリドルをケイトが笑顔で振り返ると、エースが驚いた様子で、
    「えっ、寮長が!? 珍し。あそこにはフロイド先輩もいるのに」
     リドルはハアとため息をついている。
    「うん、ボクも行く日が来るとは思わなかったよ」
    「よかったら、お前達も一緒に行かないか?」とトレイが四人を誘う。
    「いいんですか?」と恐縮するデュースの隣でグリムが誰よりもはしゃいでいる。
    「にゃっはー!!」
    「いいねえ、ショーの鑑賞券もちょうど余ってたとこだし!」とケイトがチケットをひらひらさせる。しかしエースは、何か面倒事を察知した様子で、肩を竦める。
    「いや、絶対やばいでしょ。このメンバー。トラブルが起きる気しかしねーわ」
    「何をお言いだい。ボクが同行するからには、お前達には完璧な招待客を務めてもらうよ」
    と語勢を強めたリドルに、ほらねとエースは口に出さず、両手を挙げる。トレイは論地をずらすように言った。
    「それなら、これはどうだ? 飯を奢ってやる」
     すると、後輩達は一斉に歓喜の声を上げた。
    「本当ですか!? でも、クローバー先輩も知ってるでしょう? グリムの食欲」と心配そうなデュースの横で、グリムが「タダ飯! タダ飯!」と騒いでいる。
    「眼鏡もたまにはやるんだゾ!」と飛び回るグリムを監督生が嗜めている。
    「本当にいいんすか!? 払えないからやっぱやーめたってのは無しでお願いしますよ」と悪戯っぽく笑うエースに、
    「幸いこのイベント当日は食べ放題だし、破格の値段だしな」
    「トレイくん太っ腹〜!」とケイトがトレイの脇を小突くと、トレイは何を言ってるんだ?と言う顔でのたまう。
    「ケイトと折半だろ?」
    「え」
    と固まるケイトをよそに、四人は二人へ向けて次々にお礼を言った。「ごちになりまーす!」「ごちそうさまです!」「ありがとうございます!」「今からめちゃくちゃ楽しみなんだゾ!」
     騒ぎすぎないように、とリドルは一言注意する。「ま、仕方ないか」と早くも受け入れているケイトの肩に「悪いな」とトレイは手に置いた。リドルは二人へ向けて言う。
    「ボクも払うよ」
     ケイトとトレイは互いの顔を見て、「折角の申し出だけど」とケイトが続けて断りの文句を口にする前に、トレイがそれを引き継いで言った。「これは俺たちからの、ホリデイのプレゼントだよ、リドル」
     かくして、モストロ・ラウンジのイベントへ七人で出向くことが決まった。トレイは暖炉のそばで後輩達に囲まれながら、楽しそうに歓談している。そこから少し離れてリドルは窓辺に立ち、彼らを眺めていると、ケイトが近寄ってくる。開口一番、リドルが言った。
    「主犯はトレイだろう?」この計画の主犯は。
    「あー……、わかっちゃった?」
     首に手をやりながらケイトは種明かしをした。
    「トレイはどこか考えすぎるきらいがあるからね、ボクのことだって……。いつか策士策に溺れないといいけど」
     そう言って、リドルは炉辺を見遣った。彼は表情を柔らかくし、過去を愛おしむように微笑む。その横顔には昔日の無邪気な面影が残っていた。誰の目にも疑いようもなく。
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    瀬名🍭

    PROGRESS不定期でトとジェがお茶会する♣️🐬SSのまとめ(未完) 捏造多。随時更新。お題:salty lovers
    Merman’s test garden 魚類は虫歯にならない。歯を蝕む病は人類と砂糖の出会いによって生まれ、海中暮らしで甘味を知らなかった人魚もまた、人と交わることで歯を患うようになったと言われる。太古の昔、人間の王子と結ばれた人魚の姫は、心優しいハンサムではなく実際のところお城の豪華なテーブルに並んだ愛しき者たち――チョコレートケーキにミルクレープ、焼きたてのスコーンにクロテッドクリームとたっぷりのジャムを添えた、華麗なるティータイム――と恋に落ちた、なんて使い古されたジョークがある程だ。
     それまで、栄養補給を主たる眼目に据えた、質実な食卓しか知らぬ人魚たちの心を蕩かしたこれら、危険で甘美な食の嗜好品はsweety loversと名付けられ持て囃された。他方、人間に人魚、獣人、妖精と多様な種族がファースト・コンタクトを済ませたばかりで、種の保存において血筋の混淆を危険視する声も少なくなかった。昼日向に会いたくても会えず、仲を公言することもできない、陸の上の恋人を持つ人魚たちはなかなか口にできぬ希少な砂糖になぞらえ、情人をもまたsweety loversと隠れて呼びならわし、種の垣根を越え、忍んで愛を交わしたと伝えられている。
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