死に至る病(オメガバース)第一部 前編死に至る病
〝人間は精神である。精神とはなんであるか?〟
『あんたは、俺のもんだ』
「言うはずない。あいつが、そんなこと」
〝精神とは自己である。自己とはなんであるか?〟
診察が終わり、検査結果が出るまで長椅子にかけて待つように指示がある。中待合室は白々しい程に明るかった。真新しい包帯の巻かれた右手を見る。痛みより、じんじんと疼きのような感覚が脈打つように感じて、震える。
血液と一緒に、心臓まで上がってくるみたいだ。
「こわい」
あいつの「本気の顔」を見たのは二度目だった。
体育館で何度殴られても、こんな風に思わなかったのに。
心が、身体と一緒に変わっていくような気がして、怖かった。
「検査の結果なんて意味がない」
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