チキチキ!組頭の左になるのは私選手権!!!「は~い、『チキチキ! 組頭の左になるのは私 選手権~!!!』ドンドンパフパフ~~」
「な、なんだその巫山戯た選手権は……!」
「陣内お手本のようなツッコミありがとうね……。え~なになに、『ここは雑渡さんのお相手が決まるまで出られない部屋です。皆さん、自身へのプレゼン頑張ってね!』だそうだ」
「ふ、巫山戯ている……!」
「だよね~。なにもこんな巫山戯た部屋に忍たまの良い子まで閉じ込める事無いのに……」
雑渡はふー、と溜息を吐いて巫山戯た事が書かれた文から目を離して目の前の男達を見た。
先程まで自室で茶を啜って居たというのに、目を開けた次の瞬間にはこの白塗りの部屋に居た。すわ何事かと暗器を手に咄嗟に防御体制を取れば、同じように狼隊の陣内、陣左、尊奈門。それから長烈。そこに何故か年端もいかぬ忍たまの善法寺伊作君と鶴町伏木蔵君。聞けば皆直前までバラバラの場所に居たという。妖術の類いかと皆で話をし始めれば、冒頭の事が書かれた文がポトリと私の目の前に落ちてきたわけである。ウチの人間はともかく忍たままで居るのは由々しき事態である。
「は、はあ……。事態は分かりましたが、その、僕はともかく伏木蔵は返して貰えませんか……? こんな爛れた場所に一年生が居るのはちょっと……」
「善法寺先輩、こんなスリルとサスペンスが蔓延る場所から僕を追い出そうだなんて酷いですよ~」
「「いや、子供は帰りなさい」」
「こなもんさんも山本さんもイケズ~」
「伏木蔵……」
伏木蔵は目をキラキラさせてこの場を楽しんでいるようだ。それに伊作君は溜息を吐いている。伊作君、おじさんも同じ気持ちだよ……。
「しかし組頭、忍たまを返そうにもこの部屋? からどうやって……」
「それなんだよね~~~」
尊奈門がソレな、な事を言う。この白塗りの部屋は六面が白い壁で出来ており、互いの壁の継ぎ目以外何も無いのである。先程から壁の継ぎ目を長烈が調べ、陣左が苦無でガツガツと削ろうとしていているが、苦無が欠けてしまうほどの強度を持っているようで自力での脱出は出来なさそうなのである。
「はぁ~~~。非常に遺憾だが、さっさとこの文の要求事項を満たして解放されるのが一番の近道かねぇ。で、私を掘りたいなんて奇特な者居る?」
「組頭ッ」
「雑渡さん!」
私の言葉に陣内と伊作君が伏木蔵の耳を両側から塞いで叫ぶ。
「え~~、だってそれが早いじゃない? 大丈夫大丈夫、伏木蔵は意味を分かってもないよ」
「それはそうでしょうが、童への教育的にはどうかと思います」
「尊奈門不敬~」
「いえ、尊奈門の言う通りです組頭」
「僕もそう思います」
私の言葉に尊奈門、陣内、伊作君から非難が轟々と出る。三者からあーだこーだとお小言を貰い、でもだって~と言い返せば更にお小言が増えた。それにどうしたものかと視線を他所へとやれば、部屋の端から長烈がじっ、と私を見ているのに気付き。これは私的に痛い目に合いそうなので避けたいと更に視線を逸らせば陣左が側に寄りキラキラと熱い目線を向けて居るのにも気付いてしまい。あー……。と、更に更に視線を逸らせば、未だ陣内と伊作君に耳を塞がれている伏木蔵とぱちりと目が合う。
「あのぉ~」
私と目が合ったのを切っ掛けに、伏木蔵がぬる~と挙手をした。それに私へとお小言を言っていた三者が黙り、伏木蔵の言葉を待つ。
「今の僕の僕では昆奈門さんを満足させれないでしょうが、今だからこそ僕には『手』、という技が使えます。体格差的にはイけると思うんです。どうですか昆奈門さん」
おっと流れ変わったな?
「忍たま如きが組頭と交合えると思うなよ小僧ー」
「こら陣左! ステイ」
「はっ!」
「ふふふふ伏木蔵」
「君……その歳で……?」
「善法寺先輩も、山本さんもご心配頂いてなんですが……僕、いけます──!」
「おじさん嫌だよ?!?!」
伏木蔵の言葉に私はビャッ! と、包帯を出しながら自身を抱き込んで伏木蔵から距離を取る。危ねぇ、この子自身がスリルとサスペンスだということ忘れてたね私!
「皆さんもお仕事もあると思いますし、早く出たいのでは? なので僕で良くないですか~?」
「良くないよ!」
「ならば組頭! 私でよろしいのでは」
「あっ! 高坂さん狡いですよ! なら私でも良いと思います」
「そ、そんな! そ、それなら僕だって……!」
止めてー! 私の為に争わないでー笑 状態で笑ってしまうんだが。私は正直伏木蔵以外ながら誰でもいい気がしてきた。いやそれでいいのか私? もう面倒臭いからいいかー。
「コラコラ……。若者達よ、血気盛んなのは結構だが、本人の意思を汲まぬ行為はただの暴力だぞ」
「「組頭」」
「雑渡さん」
「昆奈門さん」
わあわあ! と盛り上がっていた若者達の視線が陣内の言葉で私の方へとギュン! と向けられる。
「じんない……ごもっともだけど、最悪のアシストだよ……。あ、伏木蔵だけは絶対無いからね」
「こなもんさん酷い! 僕とは遊びだったんですね」
若者達のギラギラした、おじさんには眩しすぎる目線に若干頭が痛くなりつつなりながら、これだけはと言うと、伏木蔵はよよ……! と涙目になりながら可愛い子ぶる。
「雑渡さん」
「「「組頭」」」
「お前達忍たまの術にはまるんじゃないよ……! 伏木蔵は周りを煽らないの!」
「だってそうでもしないと昆奈門さんは僕にお身体を預けてくれないでしょう? 大丈夫です、大人になったらちゃんと僕の僕でお相手致しますから!」
「全然大丈夫じゃないからね?!?!」
「くっ……! 忍たまながらなんという志! しかし私も引けません組頭 この陣左めにそのお役目を……」
「そ、それなら私だっていいと思います! 組頭」
「伏木蔵は無いと言う事は僕には可能性があるって事ですよね雑渡さん」
「お前達血迷うんじゃないよ! しっかりしなさい」
「「「正気です」」」
「いや~若さだな……!」
「陣内面白がってるでしょ……」
「まさか!」
若者達の血気盛んさに陣内がニコニコと笑っているのに、私はジト目で陣内を睨み付ける。しかしこの場をどうしたものか……。若者達にこんな傷だらけの六尺おじさんを抱かせるなんて気が引ける。しかし陣内に抱かせるのもなぁ……。しかしもう面倒臭いのも事実……。そこで変わらず部屋の端からチクチク送られる目線でいいか、と。思ってしまったのである。
「……………………。…………押都。お前でいいや……」
「御意」
「「「「そんなー!!!!」」」」
若者達の悲壮な悲鳴に被せるようにブオー! ブォー と勝鬨の法螺貝の音が部屋に鳴り響く。それに今度は何 と、私は若干キレ気味に部屋へ目線を巡らせると突如白塗りの部屋に戸が現れ、スパーン と勢い良く開いた。その先には布団が敷かれており、水の張った手桶や手拭い、貝に入った薬などが布団の脇に置かれていた。
皆の目線が突如現れた新しい部屋に釘付けになった後に、私へ注がれる。………………。待って。ちょっと待って。何これ聞いてない。嫌な予感に目を逸らしながら長烈の方へと目を向ければ、長烈の目の前にひらりと文が現れて長烈がそれを手に取る。
「ふむ……。新しく現れた部屋に入った者両者が達しないとこの部屋からの皆の解放は無いそうです。如何されますか、組頭」
聞いてない~~~~~~!!!!!! 長烈お前絶対その雑面の下でニヤニヤ笑ってるだろう何これヤダヤダ絶対やだ~~~~!!!!!!!
『チキチキ! 組頭の左になるのは私 選手権!!!』第二回戦が勃発したのは言うまでも無い。