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    kasou_haseki

    @kasou_haseki09

    ジャンルごっちゃ。腐女子

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    kasou_haseki

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    吸血鬼降谷×狼男赤井with神父沖矢シリーズ。
    多分これだけで読めると思います、多分。
    安赤成分少ないですなのに長い…すみません……………。

    #安赤
    #腐向け
    Rot

    Combat start!※吸血鬼と狼男について特殊設定有※
    ※沖矢が赤井とは別人時空※




     とある世界のとある国。森の奥にひっそりと佇むお屋敷。そこに愛し合っている吸血鬼と狼男、それにその二人を監視する為に教会から派遣された神父の三人が暮らしていました。

     +++++

     沖矢は届いた手紙を前に、眉間に皺を寄せていた。それは教会本部から届いたものだった。
    「どうしましょうかねぇ……」
     沖矢が吸血鬼の降谷零と狼男の赤井秀一の愛の巣である、村人から幽霊屋敷と呼ばれる屋敷に監視という名目で居座ってから季節が何回か巡った。沖矢としては存外持った方だと思う。教会が強い個体である吸血鬼と狼男をただ監視しておくに留めている訳が無い。降谷と赤井が強い個体であることから、討伐するよりは監視下に置き、事案があれば協力を求める。それは双方の暗黙の了解だ。しかし今回は二人を村から引き離さなければならないようだ。さて、あの二人はどう出るか。沖矢はヤレヤレ、と頭を掻きながら手紙を持ち自室を出た。

    「と、いう訳ですがどうしますか?」
     サンサンと日が入る温室でティータイムをしていた降谷と赤井に沖矢は教会から届いた手紙を見せた。降谷は吸血鬼ではあるが太陽なんてなんのその、多少疲弊はするらしいが砂となって消えてしまう様な事は無い。それだけ降谷が強い個体だと言う事だ。
    「へぇ……首都で下級吸血鬼の増殖……ね」
    「被害者も相当数のようだな」
     教会からの手紙には、最近首都で吸血鬼が多く出没するようになり、無差別に人間を襲い被害が多発している事。その数の多さから沖矢の一時帰還、そして降谷と赤井への応援要請が記されていた。
     降谷は吸血鬼の上位者としての、吸血鬼界の秩序の保持を。赤井には狼男として吸血鬼に傷を与えられる者としての応援要請だった。
     本来ならば、吸血鬼と狼男は敵対する者同士だ。人間が吸血鬼や狼男を屠るには銀を用いて心臓にダメージを与えるしかない。傷を付けるにも銀を用いなければならない。しかし吸血鬼と狼男は互いが互いに傷を与えれば、それは容易に傷として残り、癒えるにも時間がかかるという。そんな訳で、降谷だけではなく赤井にも応援要請が来たわけである。
    「お二人ともに、ここを離れる事は可能でしょうか?」
     二人は屋敷から森を越えた先にある小さな村の番人の様な事をしている。盗賊や流れ着いた人外からの脅威から村を守っているのだ。一体どれ程の歳月を村の番人として過ごしているのか沖矢は知らない。しかし村人から何世代にも渡って認知される程にはこの地を守ってきたのだ。沖矢としては二人が易々とこの地を離れる事は無いのだろうと思った。
    「沖矢さん、僕らをナメて貰っちゃ困りますね」
    「と、言うと?」
    「俺達にもそれなりにツテがあると言う事だ」
    「では……」
    「こちらも応援要請をするので二日待って下さい。それからならば要請に応じましょう」
     沖矢の予想に反して二人はアッサリと承諾した。思ってみれば、この二人にもそれなりの人員が居るのは当たり前か、と今更ながら沖矢は納得する。今までお目にかかれなっただけの様だ。
    「首都まで三人旅か。楽しみだな」
    「おい、遊びに行くんじゃないんだぞ」
    「分かっているよ降谷くん。ところで昴、移動手段はどうする? 俺達がおぶって行くか?」
     赤井はわくわくした様子を隠しもせず楽しそうにし、それに降谷は苦言を零す。
    「いえ、馬と汽車にします。討伐前にお二人の痴話喧嘩に巻き込まれたくないので。どちらのお世話になっても匂いがつくとか痴話喧嘩するでしょう貴方達」
    「ああ、降谷くんは言うな」
    「お前だって言うだろ!」
    「はいはい、ご馳走様です」
     早速痴話喧嘩、もといイチャイチャを始めた二人に沖矢はぞんざいに返しすっかり冷めてしまった紅茶を飲み込んだ。

     +++++

     降谷が指定した二日後。その日、複数人の男達が屋敷にやって来た。服装は街人のソレではあるが、帯剣している剣でその男達の所属を沖矢は察する。
    「風見、急に悪いな」
    「いえ、留守はお任せ下さい。黒田管理官からこちらをお預かりしております」
    「ああ分かった。では頼む」
     降谷は風見と呼ばれた男から手紙を一通受け取った。それを開封し、内容を確認してからすぐに火を付け燃やした。一連の慣れた動作に沖矢は降谷にとって懇意なのだなと思った。
     それから沖矢は男達が乗ってきた馬の一頭を借り駅へ向かい、沖矢の後を追ってきた降谷と赤井と合流し汽車へと乗り込む。合流した降谷と赤井は裕福層の紳士をおもわせる衣服に身を包んでいた。降谷はグレー、赤井は黒を基調とした服で、そこに教会本部で着ていた上質な生地の神父服を着た沖矢もいるものだから、地方の小さな駅は老若男女関わらず騒然としたのだった。
     個室のボックス席に落ち着き、汽車が発車してから沖矢はポツリと零す。
    「まさか軍が出て来るとは……」
    「肖像画で察しているかもしれませんが、僕は元が軍出身でして。こうなってからも一部とは連絡を取り合って居るんですよ。当時の上官の一族は代々軍に就いているので特に懇意にしてるんです。教会同様、軍にもこういった事を扱う隊があるんですよ。ま、知ってますか」
    「ええまぁ……。稀に対峙する事がありますからね」
     沖矢も教会で第一線で動いていた時に何度か降谷の言う軍の隊と鉢合わせた事がある。敵は同じであっても所属する組織の上が手柄を欲しがるもので、現場ではどうしても獲物の取り合いとなり、沖矢としてはあまりいい印象は持っていない。
    「心配するな昴。今回は軍は手を出していない様だからな」
    「教会が先手を打ったそうですよ」
    「それは朗報ですね。お二人の力を借りて自由に出来ます」
    「さて、首都まで一日かかるんだろう? それまで暇つぶしをしようじゃないか」
     降谷からの軍の情報に沖矢がほくそ笑むと、赤井が話は終わったとばかりに鞄からトランプを取り出す。
    「お前……。珍しく荷物を持っていると思えば……。遊びに行くんじゃないんだぞ」
    「ふっ、遊びのようなモノだろう」
    「まあお二人が居ればそうかもしれませんねぇ」
    「沖矢さんまで……! あーもう、ご自由に。僕は寝ます、昼なので」
     ウキウキとトランプをシャッフルし始めた赤井に降谷はこりゃダメだと諌めることを放棄し、カーテンを自分の方だけ半分閉め腕組みをして寝る体勢をとった。
    「昴何をしようか」
    「ではジジ抜きからします?」
    「ジジ抜き?」
    「全てのカードの中から伏せた状態で一枚だけ抜くんです。最後までジョーカーは分からない」
    「成程、アレをジジ抜きと言うのか。それにしよう」
     カードに興ずる二人と寝息を立て始めた三人を乗せた汽車は蒸気を上げて首都へと向かった。

     +++++

     片田舎から丸一日。汽車は何事も無く無事首都へ着いた。駅のホームへと降り立った三人はそれぞれ体を伸ばし、広い空間を享受する。
    「オキヤ!」
     首都故にごったがえす駅のホームで女性が沖矢を呼ぶ声がする。
    「ジョディ。わざわざ迎えに来たんですか?」
    「ええ、ジェイムズがお二人を丁重にお迎えしなさいって」
     沖矢と話す女性はシスター服に身を包んでいた。
    「沖矢さん、こちらは?」
    「初めまして、フルヤ。私はオキヤと同じ事を生業としてる神の下僕のジョディよ。どうぞよろしく。そして久しぶりね、シュウ」
    「ああ、相変わらず元気そうだなお前は」
     降谷の問いかけにジョディと名乗ったシスターは降谷の後ろに居た赤井へと声を掛けた。
    「えっ、赤井顔見知り」
    「ああ、昴と知り合った時に教会と色々あってな。昴周りとは顔見知りになった」
    「初耳だけど」
    「言ってなかったか?」
    「お前は……! いつも! そう」
    「シュウ……貴方、恋人相手にもそうなのね……」
     顔を両手で覆い仰け反る降谷にジョディは憐憫の目を向ける。
    「さ! 顔合わせも済んだ事ですし移動しましょうか」
    「オキヤ、貴方も相変わらずね」
     沖矢は事は済んだと、未だに顔を両手で覆った降谷をスルーして移動を始める。それにジョディはこっちも相変わらずかと、強い吸血鬼と聞いていた降谷を不憫に思いながらも沖矢の後に続く。
    「降谷くん、ちゃんと話すから先ずは行こうじゃないか」
    「その言葉忘れるなよ……!」
     赤井はジト目の降谷の手を引き神父とシスターの後を追った。

     神の下僕達に案内されたのは、荘厳な教会本部の隠された広い地下室だった。教会の地下は墓にも使われるのに相応しく少しひやりとしていたが、清潔感があり、壁の三面にある天井まで届く本棚は膨大な資料の量に反してよく管理されているようだった。その中に幾つかある使い込まれたテーブルと椅子があり、ちょっとした図書館のようだった。
    「ようこそいらして下さいました。私はエクソシストの影の隊を率いるジェイムズと申します。赤井くんは久しぶりだね、元気そうで何よりだ」
     部屋で四人を迎えたジェイムズと名乗る長身の初老の男性が降谷と赤井へと声を掛ける。
    「ジェイムズお久しぶりです。貴方もお変わりない様で安心しました」
    「はは、まだ天に召されるには早いからね。降谷さんには応援要請に応えて貰い有難く思います」
    「初めまして、降谷です。こちらとしても僕に声を掛けて頂けて助かります。同族の始末は同族が、が基本なので。そして赤井とは何やらあったようですが、ご迷惑をお掛けしませんでしたか?」
    「アッハッハ! いい経験になりましたよ」
    「……赤井ィ……」
     笑うジェイムズに降谷はよからぬ事があったのだと察して赤井を睨む。
    「結果良ければ全て良し、だろう?」
    「今回はもう少し穏便にお願いしたいですねぇ」
    「そうね……」
     悪びれなくのたまう赤井に沖矢とジョディは溜息を吐きながら呟く。
    「お前、帰ったら洗いざらい吐け。そして説教だ」
    「赤井くんに説教出来る方が居るなんて有難いですな」
    「ご心労お察しします……」
     降谷の警戒心の強さに教会メンバーとの仲を危惧していた沖矢は過去の赤井の行いはともかくとして、早くも降谷が馴染んだ様子に内心ほっとする。これならば任務に支障は出ないだろう。
    「着いたばかりで申し訳ないが、早速現状と討伐任務の概要を説明させてもらおう。キャメル頼む」
    「はい。先ずはこちらの資料を……」
     キャメルと呼ばれたガタイのいい強面の男から資料を受け取り、同時に説明を受ける。
     事の始まりは半年前。裏路地で呼び込みをする場末の娼婦の変死体が出始めた。その死体は暴行の痕は無く、ただ首筋に二つの穴があいていた。そして血液が抜き取られていたのである。娼婦から始まり、見目の良い浮浪者、孤児、街人、屋敷に勤めるメイド、使用人、そして遂に下級貴族まで変死体として発見されるようになった。
    「これは一人や二人じゃありませんね。成り立ての飢餓をコントロール出来ない吸血鬼でも人ひとりを吸い尽くせば暫く飢餓は来ない。被害者の人数を考えると少なくとも十人は超えるでしょう」
    「下級とはいえ貴族もとなると、ターゲットは貴族の可能性があるな」
     資料と説明を受け、降谷と赤井はそれぞれの所感を述べる。
    「ええ、我々もその線で洗い出しました」
    「そして行き着いたのはココよ」
     キャメルとジョディの言葉を合図にジェイムズが一枚の見取り図をテーブルのひとつに広げ、降谷、赤井、沖矢へと見せる。
    「これはこれは」
    「沖矢さん、ここは?」
    「カジノです。さる侯爵家の三男坊が始めた、いい話は聞かないタイプの」
    「頭の悪い連中が唆されて人外の領域まで手を出したワケか」
     事の顛末が容易に想像出来てしまい、三人共にゲンナリする。
    「三日後にこの場所でパーティーが開かれるそうです。一人が招待状を持っていればパートナーは誰でも入れるそうで……」
    「近くに川があるから、翌朝以降川で遺体が沢山上がるでしょうね」
    「今回の件は我々教会が軍より先に遺体の回収と情報の隠匿をしていて軍の介入は無い。介入者は無いから存分に力を奮って欲しい」
    「了解しました」
    「了解」
    「神の思し召しのままに」
     
     +++++

     三日後の夜、討伐任務先のカジノのパーティー会場に沖矢はジョディと共に居た。招待状は二通入手していたので、沖矢とジョディ、降谷と赤井と計四人で任務にあたることとなっていた。パーティー会場となっているカジノは入ってすぐ大きなひとつのホールになっており、普段はここで賭け事が行われているのだろう。突き当たりには宮廷階段があり、左右それぞれにドアがあり、それ以外はホールの上三面がギャラリーとなっていた。二人は普段の黒と白の神父、シスター服の清楚さを微塵も感じさせない服装をしていた。沖矢は適度な階級に見えるような質の服を纏い軽薄な遊び人を装い、ジョディに至っては高級娼婦のような派手な出で立ちだ。豊満な胸を強調するように露出された上半身とは打って変わってスカートの大きなバッスルの下には祈りが捧げられた拳銃と銀の弾丸が大量に隠されている。
    「重い……。全くあの二人は何してるのかしら? まだ来てないの?」
    「あのお二人ですからね……。何を考えているのやら」
     沖矢とジョディがそんな話をした時、周りがザワザワしだした。周りは一様に入口へと目を向けている。何事かと二人も入口へ目をやれば、そこには話していた二人組が居た。赤井は癖のある髪を片方だけ緩く撫で上げ黒に赤の差し色を使った高級服を纏い、降谷はアイボリーに水色を使ったこれまた高級服を纏い普段の厳しい雰囲気は何処へやら、アンニュイな雰囲気を醸し出していた。しまいには赤井は降谷の腰を抱いている。突如現れた見慣れない美丈夫、それもパトロンと情夫にしか見えない二人に会場はどよめいていた。
    「………………なぁに、アレ」
    「そう来ましたか……」
     やっと来た降谷と赤井に、ジョディはジト目で、沖矢は片眉を上げて二人を見る。
    「その、二人ってそうだって報告はあったけど、あの通りなの?」
     普段の雰囲気とはかけ離れた二人にジョディは困惑して沖矢へと尋ねる。
    「さしずめ降谷さんが秀一をそういう目で見られるのが嫌で、自分がその役をしてるんでしょうね」
    「アラ……、へぇ~シュウがねぇ……。降谷って嫉妬深いのね。大変そう」
    「しかし相手は秀一ですから」
    「ああ……そうね、うん……」
     沖矢のその言葉に妙に納得したジョディだった。
    「レディース アーンド ジェントルマン! お集まり頂きありがとうございます。お楽しみ頂いているでしょうか? 今宵は特別な催しをご用意致しました。どうぞ最後までお楽しみ下さい!」
     ジョディが降谷と赤井に当てられていると、このカジノのオーナーである侯爵の三男坊が宮廷階段の中央で声を張り上げ、挨拶と何やらきな臭い事を言った。その声を合図に給仕が参加者にワインを配り始める。そのワインを受け取った沖矢とジョディはワインを回し香りと色を見る。
    「相当いいワインですね」
    「でも何か仕込んでいるんでしょうね」
    「我々は飲まない方がいいでしょう」
    「あの二人はもう飲んでるけどね。まあ人外だし効き目なんてないでしょうしね」
     遠目に見た降谷と赤井は相変わらずくっ付いたまま、それはもう分かりやすくイチャイチャしながらワインを傾けていた。
     そうして参加者の大半がワイングラスを空けた頃、急に照明が落ちた。
    「キャア!」
    「どうしたんだ」
    「な、何だ……」
    「ヤダ……力が入らない……」
     暗闇の中そこかしこで困惑の声が上がる。
     始まった。
    「さぁ同士よ! 存分に堪能したまえ」
     三男坊がまたもや声を張り上げる。しかし三男坊の思惑とは裏腹に、その声を合図にしたかのように照明がまた点く。
    「なっ」
    「そこまでよ! 神の御名の元に、哀れな魂よ浄化なさい!」
    「「アーメン」」
    「教会の狗めがぁ」
     ジョディが高らかに説き、沖矢と共に神へと祈りを捧げる。そこに三男坊が二人へと人間にはなし得ないスピードで襲いかかる。ジョディはスカート部の布を取り去り、バッスルの下に隠し持っていた小銃と銀の弾丸がたっぷり詰まった小さな鞄を沖矢に投げつける。沖矢は小銃を淀みなくキャッチし、銃口を三男坊へと向け引き金を引いた。
    「お、あ……? そん な。まさ……か……」
     沖矢の放った弾丸は三男坊の心臓を貫き、心臓を銀の弾丸で撃ち抜かれた三男坊は身に起きたことが信じられないと困惑しているうちにその場に倒れた。
    「キャー ひ、人殺しよ!」
    「なん、だ、どうなっている……」
     沖矢が小銃で三男坊を撃った事により、倒れていた人々が悲鳴を上げる。そんな事は余所に、沖矢は砂にならないところを見るに、最近吸血鬼になった若い個体のようだと検討を付ける。一方、沖矢と三男坊を見ていた立っていた男女数名が沖矢達へと一斉に襲いかかろうとしたその時。ぶわりと黒い霧の様なものが建物全体を覆った。
    「吸血鬼にあるまじき気品の無さ。愚か者に永遠の命は許されない。逃げられるとは思わない事だ」
     騒然としていた会場の中でも不思議と聞き取れる冷たい静かな声が落ちた。それは会場を覆った黒い霧全体から聞こえるようだった。
    「アッ がぁぁあっ」
    「あっ、ぐうっ……」
     スゥと黒い霧が引いた後、立っていた者、それに倒れていた者の中にも呻き声を上げ苦しむ者達が出始めた。その者達は皆白目が黒くなり、瞳は赤黒く染まっている。
    「救助開始」
     その現象を合図にジョディが声を張り上げると、ホールの入口、それから宮廷階段の左右の扉から神の下僕達が一斉になだれ込み人間の救助へあたる。
    「させるか!」
    「下等生物は餌がお似合いなのよ」
     ダーン!
     人間に襲いかかろうとした吸血鬼を阻むように、伸ばされた腕を銃弾が貫いた。
    「キャァァァアア! いたい! 痛いぃ」
    「クソ、銀だ! 気を付けろ! 何処にいやがる……」
    「上だ」
    「おや、目敏い」
     ギャラリーから援護射撃をした沖矢に気付いた男の体が無数の蝙蝠となって沖矢へと襲いかかる。
    「つれないな、俺とも遊ぼうじゃないか」
    「」
     確かに小銃を持った男しか居なかった筈なのに、蝙蝠となった男の目の前にはギャラリーの手摺に入場の際に人々の視線を奪った二人の男の一人、黒い方の男が牙を、長い爪を剥き出してそこに居た。
    「なっ 狼男」
    「ホー、本能で分かるか。もう遅いがな」
     赤井はそう言うと鋭い爪で蝙蝠の塊に切り付ける。
    「がはっ」
     無数の蝙蝠だった筈だった男は人の姿となり、赤井の爪の数だけの深い切り傷を受けそのまま落下した。
    「昴、お前はそのまま援護に回れ。後は俺達の仕事だろう?」
    「その為にお二人をお呼びしましたからね。了解しました」
     赤井はニッと笑うとひらりと身を翻し異形の目をした者達の元へと向かった。さて降谷の方はと、沖矢が目を向ければ三人の男に囲まれていた。男達は黒い霧の正体が降谷であると察したらしく、明らかに強いと思われる降谷に対しどう攻撃をしようかと取り囲みながらも思案しているようだった。
    「なんです? さっさとかかってきたらどうですか」
    「貴様、吸血鬼のくせに何故人間の、しかも教会の肩を持つ?」
    「そうだ、人間なんて所詮エサでしかないだろう!」
    「そうだそうだ!」
     黙々と援護射撃をしていた沖矢の元にそんな会話が流れ聞こえて来て、沖矢はあちゃー、とターゲット達に同情する。降谷と赤井と過ごして、如何に二人が人間を愛しているか知っているからである。
    「は! 所詮は塵でしかない者達の考える事だな。死ね」
     降谷の体が霧散し、濃い黒い霧が降谷を囲っていた三人を包み込む。
    「ギャーーーーーー」
    「ヒィッ、たすけ」
    「グッ……ッ!」
     沖矢は援護射撃を忘れ思わずその光景に見入ってしまった。霧が降谷の形に戻ると周りの男達はミイラのように干からびてその場に倒れていた。降谷が吸血鬼として強い個体と知ってはいたが、その実力を目の当たりにして思わずゴクリと喉が鳴る。
    「つくづく敵には回したくありませんね……。おっと、仕事しごと」
     沖矢とジョディ、それからなだれ込んで来た内の数名が救助の援護をし、降谷と赤井がターゲット達を屠る。そうして半年もの間首都に巣くっていた吸血鬼討伐任務は負傷者を出すことも無く幕を閉じた。

     +++++

     討伐任務から一週間。やっと屋敷に帰る日が来た。
     討伐任務後、後始末は任せた、と夜の首都に消えて行った降谷と赤井は翌日の日が傾き始めてからやっと教会に顔を出した。
    「降谷さん、赤井くん、大丈夫だったかね?」
    「遅くなり申し訳ありません。ご心配をお掛けしたようで……。僕も赤井もなんら異常ありませんからご心配なく」
    「昨日ははしゃいでしまったもので」
    「……そうかね」
     二人を心配するジェイムズに沖矢はただ笑顔を絶やさない様にその光景を見ていた。赤井のはしゃいでいた、という言葉に赤井の性格を知るジェイムズも察したらしい。
    「心配したのがバカらしいわね……」
    「あのお二人はそんなんですよ」
    「昨日は大活躍でしたからね。お疲れだったんですね」
     ジョディが沖矢同様生ぬるい笑顔を湛えていたので、沖矢は慰めにもならない言葉を掛けた。そこに純粋に疲れていたのだと思っているキャメルの言葉に沖矢とジョディは今度は朗らかな笑顔になる。
    「キャメル、貴方はそのままでいてね」
    「今度村の名産品持ってきますね。チーズが美味しいんです」
    「え? な、なんですか二人とも……」

     その後屋敷に帰るのかと思いきや、降谷と赤井はせっかく久しぶりの首都に来たのだからと一週間も高級ホテルのスイートに泊まりながら首都観光を楽しんだ。降谷曰く、こもってばかりだと時代に取り残されるので定期的なリサーチは必要なのだと言われたが、誰がどう見てもただのパートナーの旅行デートだった。中日に二人に普段着で来るようにと呼び出された沖矢は、一日中ショッピングに付き合わされた。二人の主張としては流行では無いが長く着れる無難な服のチョイスを今を生きる沖矢に聞きたいのだとのことだった。しかし沖矢は神父である。ほぼ神父服で過ごし、私服は適当に目に入った物を着ているだけにすぎない。そんな訳で、早々に戦力外となった沖矢は帰される事もなく、延々と二人のイチャイチャファッションショーに付き合わされた。その日は疲れのあまり良く寝れた程である。その上、毎日赤井が今日は何処へ行くのだとか、行って来たのだとか、わざわざ報告に来るものだから沖矢はハイハイそうですかー。帰ったら二人とも覚えていろよー? と惚気の応酬を考える事で乗り切った。まさか屋敷でのイチャイチャが可愛いものだったとは沖矢もビックリであった。
     そうしてようやく本日を迎えた。沖矢は先に帰ろうとしたのだが、ジェイムズが二人が居るのだから沖矢も残っても問題無いだろう? と後処理をガッツリさせられた。全く散々な首都での十日だった。
    「それでは行って参ります」
    「ああ、体には気を付けて。二人ともまた何かあったらお願いするかも知れません。その時はよろしく頼みます」
    「了解しました。ジェイムズさんもお元気で」
    「ジェイムズの頼みですから、駆け付けます」
     見送りにはジェイムズが来てくれた。沖矢は行ってくると。降谷と赤井はもしかしたら永遠の別れを。それぞれ言葉を交わし三人は汽車へと乗り込む。降谷と赤井が買い付けた大量の服と共に。そうして汽笛を鳴らし汽車は発車した。
    「全く、貴方達にはしてやられましたよ……」
    「ふふ、日頃のお礼です」
    「昴も久しぶりに愛銃とデート出来て楽しかっただろう?」
     沖矢はスンッと真顔になる。こ、こいつら反省する気が無い……。降谷に関しては日頃赤井と共にからかって遊んでいるので甘んじて受け入れるが、秀一、貴方はお仕置が必要のようですね? 帰ってからにしようとしたが、今からお見舞いしてやろうじゃないか。
    「ところで降谷さん。秀一の教会との出会い気になりますよね?」
    「そうだ! おい赤井何があったんだというか何をやらかしたんだ」
    「ふふふふふふ……。お話して差し上げます」
    「す、昴……!」
     丸一日の逃げ場の無い空間。さあ、ショータイムの始まりはじまり。

     赤井が教会と何があったか。屋敷に帰ってから赤井がどんな目にあったのかはまた別のお話。




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    kasou_haseki

    DONE吸血鬼降谷×狼男赤井with神父沖矢シリーズ。
    多分これだけで読めると思います、多分。
    安赤成分少ないですなのに長い…すみません……………。
    Combat start!※吸血鬼と狼男について特殊設定有※
    ※沖矢が赤井とは別人時空※




     とある世界のとある国。森の奥にひっそりと佇むお屋敷。そこに愛し合っている吸血鬼と狼男、それにその二人を監視する為に教会から派遣された神父の三人が暮らしていました。

     +++++

     沖矢は届いた手紙を前に、眉間に皺を寄せていた。それは教会本部から届いたものだった。
    「どうしましょうかねぇ……」
     沖矢が吸血鬼の降谷零と狼男の赤井秀一の愛の巣である、村人から幽霊屋敷と呼ばれる屋敷に監視という名目で居座ってから季節が何回か巡った。沖矢としては存外持った方だと思う。教会が強い個体である吸血鬼と狼男をただ監視しておくに留めている訳が無い。降谷と赤井が強い個体であることから、討伐するよりは監視下に置き、事案があれば協力を求める。それは双方の暗黙の了解だ。しかし今回は二人を村から引き離さなければならないようだ。さて、あの二人はどう出るか。沖矢はヤレヤレ、と頭を掻きながら手紙を持ち自室を出た。
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    kasou_haseki

    MOURNING淫魔パロを目指してコレジャナイな?と気付いたので供養。冒頭しかない。
    降谷と萩原が淫魔。安赤、松萩未満
    淫魔パロになり損ねたやつ 今日も今日とて家を渡り歩く。あそこの娘はもう食べた。あちらの未亡人ももう食べた。どうしよう、もう精気を貰える人が居ない!

     僕は淫魔としてこの世に生まれ落ちた。俗にインキュバス、サキュバスと呼ばれる種族だ。人間は女性体、男性体とで名称を変えているようだが、その実淫魔は自分の意思でどちらにでもなることが出来る。生まれ落ちた時の性別は決まっては居るが、大半は持って生まれて来た性別に囚われることなく相手に合わせて性別を変えてご飯にありついている。淫魔は魔界と呼ばれる人間界とは異なる異世界生まれ幼少期を過ごし、狩りが出来るようになってからは人間界で獲物を探しご飯にありつく。厄介なのは、沢山の精気を食べて上級と認められなければ魔界へと帰れないことだ。ご飯にありつけない者は故郷へ帰ることが許されず、この異世界で霧散するしかない。幸か不幸か人間と違って身体が老いるという事が無く、肉体年齢さえも自由に変えることが出来る。残念なことに顔は生まれ落ちた時の基本から変えることが出来ないが、身体さえ変えられればなんとでもやりようがある。それに淫魔は美しい者が多いので大きな問題は無い。だが、獲物にありつけない者は飢えから変化する力が出ず、生まれ持った性別、顔で狩りをするほかない。僕はそんなギリギリで生きている淫魔の一人だった。
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