「…なんて?もっかい言ってくれへん?」
消灯時間直前、なにやら挙動がおかしい要クンにそう聞き返すとムッとした表情を向けられた。
「だから…しばらくの間、俺の恋人のフリをしてくださいって言ったんですよ」
立ったまま腕を組んでこちらを見下ろす姿は尊大で、先輩に頼みごとをする後輩のする態度ではないが、要クンがなんか偉そうなのは前からなのでそこはスルーすることにして、詳しく話を聞いてやる。
同じ大学のゼミの女が要クンに惚れた。それ自体はよくある話なのだが、お相手がストーカーまがいの行為をしているらしい。
どこに行っても待ち伏せされ、連絡先は交換していないはずなのに一日何度もラインが入り、持ち物が消え、そしてついにオレや要クンの寮に侵入しようとしたらしい。しかも同じ寮の1年坊主に色仕掛けまでして。
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