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    telarin801

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    telarin801

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    桐智未来イフ、大学寮同室バッテリー設定。
    きりちゅガチャでお題【恋人ごっこ、抱き寄せる、潤んだ瞳】お借りしました。
    何でも大丈夫な方のみどうぞ。
    とても楽しかったのでまた時間見つけたらチャレンジしたいです。
    イベント主催様、企画運営ありがとうございます😊

    #桐智
    #忘バ腐
    bronco

    「…なんて?もっかい言ってくれへん?」
    消灯時間直前、なにやら挙動がおかしい要クンにそう聞き返すとムッとした表情を向けられた。
    「だから…しばらくの間、俺の恋人のフリをしてくださいって言ったんですよ」
    立ったまま腕を組んでこちらを見下ろす姿は尊大で、先輩に頼みごとをする後輩のする態度ではないが、要クンがなんか偉そうなのは前からなのでそこはスルーすることにして、詳しく話を聞いてやる。
    同じ大学のゼミの女が要クンに惚れた。それ自体はよくある話なのだが、お相手がストーカーまがいの行為をしているらしい。
    どこに行っても待ち伏せされ、連絡先は交換していないはずなのに一日何度もラインが入り、持ち物が消え、そしてついにオレや要クンの寮に侵入しようとしたらしい。しかも同じ寮の1年坊主に色仕掛けまでして。
    「そりゃひどいな。大学に相談したらどうや?ゼミの教授あたりに…」
    思っていたよりひどい状況にアドバイスをするも、要クンは黙って首を横に振る。
    「大会前だし下手に騒ぎにしたくないんです。できればアチラから諦めてほしくて」
    たしかに思い込みの激しい相手にやんわりと迷惑だと伝えても、自分を否定されたとばかりに暴れたり逆恨みをされる可能性もある。穏便に諦めてもらうために『恋人のフリをする人間』が欲しいのかと納得する。
    「でも、なんで俺なん?他にもおるやろ、女友達とか。わざわざ男の俺にせんでもええんちゃう?ホモってレッテル貼られるリスクより、寮出て実家頼るとかもできるやん」
    疑問を投げかけると「それは…」と要クンは視線を外し、らしくなく口ごもった。
    「実家には頼りたくなくて。特に母には知られたくないし…」
    要クンは前から実家や特に母親の話をしたがらないので、なにか複雑な事情を抱えているのだろう。そこに踏み込むのは良くないと黙って次の言葉を待つ。
    「桐島さんが一番俺と一緒にいるし、恋人役が女性だとまた話が拗れそうですし。それに…」
    「それに?」
    要クンの重い口を滑らかにするため次の言葉を促してやると「それに…桐島さんならもしホモだと噂されたり刺されても多少大丈夫かなって」と実にふざけたことを抜かした。
    「なんでやねん!大丈夫なワケあるかい!!」
    思わず全力で突っ込んでみたが、要クンは表情すら変えていない。
    これが要クン以外のヤツならすぐさまお断りする案件なのだが、そうはいかない。
    なぜなら…俺が要クンに惚れてるから。
    しかし好きだなんて口にしたら最後、同室もバッテリーも解消されそうやから絶対に言うつもりはない。
    自分の気持ちに蓋をして過ごしてきた俺に「恋人のふりをしてほしい」なんて残酷な頼みをしてきた要クンに視線を向けると、実にバツの悪そうな顔をしている。
    プライドの高い要クンは本当なら俺に頼み事などしたくはないはずだ。それだけ追い詰められているのだろう、と思い至った俺は頭をボリボリとかきながら「しゃーないな」と呟いた。
    「…いいんですか?」
    自分から言い出したくせに要クンはこちらを伺うような素振りを見せる。自信なさげな表情がちょっとかわいい、と思いながらオレは口元に笑みを浮かべた。
    「野球に影響出ても困るし、万が一要クンが刺されでもしたら俺の球捕れるやつおらんしな。まぁ、解決したら何か一個お願い聞いてくれたらええよ」
    そう言ってやると、要クンはゴミを見るような目で俺を見る。
    出会った頃からずっとアルカイックスマイルを絶やさなかった要クンだが、最近はこんな顔も見せるようになった。少しは俺に気を許した証拠だろうか、なんて思い上がりながら嘘くさい笑みを向けてやると、要クンは観念したかのようにわざとらしく大きなため息をついた。
    「…わかりました。宜しくお願いします」
    そう言って頭を下げた要クンに俺は「頭下げるよりチューの練習とかしといた方がええんちゃう?」とおどけてやると、「チッ」と舌打ちをされる。
    要クンのわかりやすく悪態をつく素直さが可愛らしくてたまらない俺は口角を上げ、これから始まる「恋人ごっこ」の日々に思いを馳せた。

    翌朝「おはようさん、マイハニー♡」と寝起きに声を掛けた途端回し蹴りをくらい、恋人設定はどないなっとんねんと不安になったのだが、腹をくくった要クンはすごかった。
    他の人の目があるところでは徹底的に俺を避けたり睨んだりといつもの塩対応だったが、人目の少ない場所かつストーカーさんが見て居るであろうところを狙って俺と手を繋いだり、俺の頬についたご飯粒をとってくれたりと恋人らしい甘い雰囲気を出し始めた。
    これには『天満の初恋泥棒』と駄菓子屋のおばはんに呼ばれた過去を持つ俺も参った。
    だって好きな子にこんなんされたら「もしかして俺のこと好きなんちゃうん?」と勘違いするのは当たり前やと思う。
    しかし要クンは表情を変えること無く平然と「イチャイチャ」をやってのけているので、俺にこれっぽっちの気持ちもない事はすぐに分かった。
    とんだ魔性の男や、こわ…ガチ恋製造機やん?と内心恐れおののくも、好きな子と手を繋ぐチャンスを逃すほどアホでもないので、それなりに「恋人ごっこ」を楽しんでいた。
    まぁ俺から腰やら肩に手を回したら足踏まれたり肘鉄食らうけど、そこは御愛嬌や。
    そんなこんなで1週間ほど経った頃、俺が大学でも野球のグラウンドでも寮でも要クンとべったり一緒にいるおかげでストーカーさんが俺の視界にも入るようになってきた。
    よくよく見ると、ストーカーさんはツインテールがよく似合う小柄で可愛らしい子やった。そして大変大人しくて、遠くから俺らを眺めるだけで直接危害を加えることもしない。ラインをスルーしているとメッセージの頻度もマシになったらしい。
    普通にアプローチしていたら要クンとも良い仲になれたのかもしれないが、俺を睨む目が花木高校におったロン毛のピッチャーみたいだったので、残念極まりないとしかコメントできない。
    やはり直接コンタクトを取るのは危険な相手だと判断した俺達は、今日も今日とて講義のない空き時間に誰もいない別館裏のベンチで「イチャイチャ」を実行していた。
    「…今日も暑いのに、飽きもせずおるなぁ」
    俺が要クンに指先のケアをしてもらいながら小声でストーカーさんについて口にすると「そうですね」と俺の爪にヤスリをかける要クンも小さな声で返事をする。
    俺達から少し離れた先の柱の陰からツインテールの片方が見えていて、コレがここ最近における俺たち3人の不思議な定位置となっている。
    「なかなか諦めへんな」
    「そうですね」
    「こないに好かれるやなんて君、何したん?」
    「別に何もしてませんよ…ゼミの先輩に頼まれて飲み会帰りに駅まで送った時に少し話した程度です」
    要クンは心当たりは一切ないと言わんばかりにため息をついたが、顔が整っていて気遣いができる物腰が柔らかなインテリスポーツマンの要クンに優しくされただけで相手はイチコロだったに違いない。
    賢いくせに色恋にニブすぎる要クンを実験対象物のようにマジマジと見つめてしまったが「動かないでください。やりづらいです」と怒られてしまった。
    ぼそぼそと何のときめきもない会話をする俺たちは遠くから見れば手を繋いで親密に話す恋人同士に見えるかもしれないが、ストーカーを撃退するほどの効果があるとは思えない。
    「こんなんで諦めるんかなぁ」
    「⋯じゃあどうしたらいいんですか」
    偽とはいえ恋人に向けるには辛辣すぎる視線で俺を睨む要クンに「…チューでもして見せたら諦めるかも?」と提案したが、要クンは聞こえないふりで俺の爪の手入れにご執心だ。
    「要クン?聞こえへんかった?」
    オモロイ反応を期待してワザと顔を覗き込んでみたが「今日も暑くなるらしいので練習時にはこまめな水分補給を心がけましょう」とsiriみたいな返事をされる。真顔で。
    でもこの下手くそな誤魔化し方は、ちょっと照れたり困ったりした時に出る癖である事を知っている俺は、やや強引に要クンの肩を抱き寄せた。
    「ちょっと…っ!」
    俺を払いのけようとする要クンの手を握ってゆっくりと指を絡めてやりながら、「シィー」と耳元で囁いてみる。
    「ジッとし?別にホンマにするわけやない。フリだけや。そろそろ決着つけた方がええやろ?」
    身を硬くした要クンの頬に左手を添えて柔らかな桃色の唇を親指の腹で撫でる。
    「この指があるから君の唇には触れへん。この距離ならあの子からはホンマにしとるように見えるやろ。安心して目ぇ閉じて…?」
    意識して甘く低い声で語りかけてみると、要クンはしばし逡巡してから大人しくまぶたを閉じた。恥ずかしいのか頬が少し赤らんでいて、正直言ってめちゃくちゃかわいい。
    自分で言い出したくせに親指をどけてホンマにキスしたくなったけど、それはアカンと思い直した俺は、少しだけ首を傾げて自分の親指にキスをした。わざとらしく「チュッ」と音までたてて。
    すると先程まで柱の影から見えていたツインテールが消え、走り去るような足音が聞こえた。
    完全に諦めたかどうかはわからないが、一定の効果はあったようだ。
    「…要クン、もうええで?効果バツグンみたいやわ」
    作戦成功やな?と意地悪く笑ってやるつもりだった俺は、思わず固まる。
    俺を見上げる要クンの赤らんだ頬と潤んだ琥珀色の瞳を見てしもたからや。
    悪いけど俺は要クンほどニブくないから気づいてしまった。実は脈アリやったんやないか、と。
    うわ。どうしよう。俺ら両想いってこと?照れてる要クンがめちゃかわいい。今すぐキスしたい。
    「恋人ごっこ」を始めてから何度も要クンから手を繋いだりアーンしてもらったりしてたけれど、ポーカーフェイスの下で要クンはドキドキしていた可能性もある。
    トキメキの導火線に火がついてしまった俺の脳内に様々な妄想や欲望が湧いてきたが、残念ながら要クンはすぐにいつもの澄まし顔に戻ってしまった。
    「ご協力ありがとうございます。これで諦めてくれたらいいんですけど」
    そう言って何でも無い風を装いながら爪のケアセットをカバンにしまい込みながら帰り支度をする要クンだったが、耳やうなじはまだ赤いし手もわずかに震えている。
    こんなに分かりやすい子やったんやなぁ、と少し彼に対する認識を変えた俺は「少し早いけど昼メシでも行きますか」と言って立ち上がった要クンの手を取って引き留めてみた。
    「…なんですか」
    不機嫌そうに眉を寄せる要クンに俺はニッコリと笑ってみせた。
    「解決したら『お願い』聞いてくれるって話覚えとる?」
    「…まだ解決したとは決まってませんけど」
    「せやな?けど、先にお願いすることを伝えとこと思って」
    そう言うと要クンは訝しげに俺を見る。碌でも無い事を言いつけられるのだろうと身構える要クンを俺はまっすぐに見つめた。
    「ごっこやフリやない、ホンマの恋人になってくれへん??…君のことが好きやねん」
    俺がそう伝えると、要クンは顔をゆでタコみたいに真っ赤にして全速力で逃げ出した。
    俺の渾身の告白を無視した要クンの可愛らしい反応は「俺も好きだ」と自白しているようなもんで。クッと喉で笑いを噛み殺した俺は「逃さへんで?」と独りごちて、これから愛しい要クンをどうやって攻略してやろうかとニヤける口元を押さえながら、遠くなる背中を眺めていたのだった。

    ちなみに。
    この日は寮の部屋に籠城されて俺は談話室で寝る羽目になったし、しばらく徹底的に避けられるなどのすったもんだがあったけど、俺達はなんとか両思いになれた。
    付き合って2ヶ月ちょい経った今も「まだ早い」と言ってなかなかチューもさせてくれへんけど、毎日かわいい表情を俺だけに見せてくれている。
    また、ストーカーさんは要クンを諦めたらしく付き纏いはやめた。それはエエんやけど、なんでか漫研に入って涙ボクロのかわいい顔した男と前髪の長い関西弁の男が恋愛する漫画を描いて売りさばいとったらしいが、それはまた別の話。
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