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    telarin801

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    telarin801

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    幼児化はるけい。とど→ちは←まき要素もあり。
    本誌がつらすぎてできた妄想の産物をここで供養します。

    #はるけい
    springScenery
    #葉流圭
    yeRyuKyu
    #幼児化注意
    infantilizationPrecaution
    #とどち
    re-election

    西東京ほいくえんのいちにちここは都内某所にある、西東京保育園。
    今日もかわいい園児達が元気に遊んでいる。

    僕の名前は山田太郎。
    まだまだ新人の保育士だけど、ここ西東京保育園で、年長の「こてさし組」の担任をしている。
    今は給食が終わってお昼寝がない年長さん達が元気に遊ぶ自由遊びの時間なんだけど、全員分の連絡帳に記入をしたり、お知らせのプリントをおたより帳に入れたりと職員室で仕事に追われていた。

    「やまだせんせ〜!たいへん!」
    「たいへんだよ〜!」
    「どうかしたの?鈴木くん、佐藤くん」

    なんとか急ぎの用事が一段落ついたところで、こてさし組の鈴木くんと佐藤くんが慌ててやってきた。
    この二人は何かと問題がある…じゃなくて元気で個性的な子が多いこてさし組の中では優しくて真面目な子達だ。

    「ケンカ!ケンカしてるの!」
    「はやくきて!」

    喧嘩、と聞いて急いで「こてさし組」の教室にむかうと、大きな声が響いていた。

    「こっちこいよ、ちはや!おれとしょーぶしようぜ!」
    「おい!手をはなせよ!ちはやは、オレとキャッチボールすんだからな!」

    ひかわ組の巻田ひろのぶくんと、こてさし組の藤堂あおいくんが、2人よりもかなり小柄な千早しゅんぺいくんの手をひっぱりながら言いあいをしている。

    (…大岡裁きかな?)

    元気いっぱいな「ひかわ組」の巻田くんは、小さい頃から知っている千早くんのことが気になって仕方ないらしく、よく「こてさし組」に来ては千早くんに絡んでいる。
    そして兄貴肌の藤堂くんは同じクラスのよしみからか、いつも千早くんを気にかけていて、巻田くんが現れるたびに撃退しようとする。
    これが最近の日課のようになっていた。

    「はやく手をはなせよ!ちはやがいたがってるだろ!」
    「おまえこそ、はなせよ!ちはやがバナナくさくなるだろ!このゴリラ!」
    「ゴリラじゃねぇし!」
    「ゴリラですよ」
    「!!ちはや!!おまえはオレとあそびたいだろ?」
    「いや、きょうはちょっと、よていが…」
    「「なんだと!!?」」

    それまで無言でふたりにひっぱられていた千早君が口を挟んだものの、より二人をヒートアップさせてしまった。
    これでは子ども達だけでの解決は難しいと判断し、穏やかに声をかける。

    「何してるの?」

    ぼくが声をかけると、藤堂くんと巻田くんは気まずそうな表情を浮かべて押し黙ったが、ふたりとも手は千早くんから離そうとしない。

    「あんまり強くひっぱったら、千早くんが手を痛めちゃうよ?」
    「「!!!」」

    そう言うと、素直な藤堂くんと巻田くんは慌てて手を離してくれた。
    ふたりとも話せばわかってくれる根は良い子なのだ。

    「…おれは、ちはやとしょーぶしたいだけなのに!コイツがいつも、じゃましてくんだよ!だからコイツがわるい!」
    「はぁ!?おまえは『ひかわぐみ』だろ!そっちであそべばいいだろ!ちはやもめーわくだ!」

    また言い合いを始めた2人に「じゃ、じゃあ3人で仲良く遊んだらいいんじゃないかな」とアドバイスをするも、どこか納得がいかない表情をしている。
    幼児期特有の独占欲なのかこだわりなのか…理由はわからないけど、2人とも千早くんが大好きなのがわかる。
    当の千早くんは窓の外を眺めていてあまり興味がなさそうだけれど。

    今日はどうやって決着をつけようか、と頭を悩ませていると教室の扉が開いた。

    「ま〜きぃ〜た〜くぅん」

    「げっ!き、桐島!」
    「呼び捨てすんな。先生やぞ」

    現れたのは巻田くんの担任、「ひかわ組」の桐島先生だった。

    「ひかわ組はこれからお散歩や。巻田くんも早うおいで」
    「お、おれはさんぽにいかない!ここで、ちはやとあそぶ!」
    「大丈夫やって。今日は吠える犬のいる道は通らへんから」
    「!!い、いかない!!」

    そういえば、先週。巻田くんが散歩中に大型犬に吠えられておしっこを漏らしたという話を聞いたことがある。小さい子が一度怖い思いをしたらそれを忘れるのは難しい。
    強情な巻田くんにどう対処するか様子を伺っていると、桐島先生はストライプ柄のエプロンから小さなポーチを取り出した。

    「巻田くん、ほんまに行かへんの?」
    「いかねーって!」
    「残念やなぁ。今日はお買い物の日やのに」
    「……おかいものっ!?」

    巻田くんが反応すると、桐島先生はニヤリと笑みを浮かべた。

    「せやで。みんなで駄菓子屋さんに行って、このお財布からお金出して、自分の好きなお菓子を買うねん」
    「おかし…」
    「今日はひかわ組さんだけで行くんやけど、行かへん子にはお菓子ないなぁ。…巻田くん。ほんまに行かへんの?」
    「いく!おれも、おかしかう!」
    「よっしゃ。ほな早う帽子被って靴はきや」
    「わかった!ちはや、またな!!」

    そう言うと、巻田くんはダッシュで外へと飛び出して行った。
    静かになった教室では、藤堂くんが「キャッチボールするぞ」と改めて千早くんを誘い、千早くんが「しょーがないですね」と笑顔で応じて、2人仲良く手を繋いで園庭へと走り出した。
    とりあえずは一件落着だ。

    「桐島先生、ありがとうございます。たすかりました」
    「いやいや、こっちこそ。いつもうちのが迷惑かけて悪いなぁ」

    ニッコリ、と真意のつかめない笑みを浮かべた桐島先生は去り際に「せや」と言ってこちらを振り返った。

    「こてさし組の清峰くん。また花壇の隅の方で一人で座り込んどるで。大丈夫なん?」
    「あ、清峰くんが…」
    「あの子。おとなしいし去年までは智将先生にべったりやったからなぁ。いつも一人で心配やわ」
    「…そうですね。心配なんで、見てきます。ありがとうございます」 

    がんばりや〜という桐島先生の声を背中に受けつつ、今度は花壇へと向かう。

    清峰はるかくんは、とても大人しい子だ。ほとんど表情を変えず、口数も少ない。心配したお母さんが病院に連れて行ったらしいが、発達には全く問題がなく非常に内向的なだけだと言われたそうだ。
    今はボッチな彼だけど、昨年度までは楽しそうに園で過ごしていた。
    それは昨年度まで在籍していた保育士、智将先生のおかげだと言える。
    保育中は子どもたちの心をつかむ人気者。制作も読み聞かせもピアノも素晴らしく、保護者からの人気もすさまじかった。保育日誌もバッチリつけて管理職からの覚えが目出度く、部屋の壁面も毎月すばらしい飾りが彩っていて、いつ休んでいるのか不思議なくらいな仕事ぶり。
    何でもできる本当に素晴らしい先生で、僕自身も尊敬し憧れている保育士のひとりだ。
    清峰くんも智将先生にだけは懐いていて、遊ぶ時も給食もお昼寝も先生にべったりだった。
    『せんせいとけっこんしたい』と毎日みんなの前で公開プロポーズをするほどに。

    そんなスーパーキレキレ智将保育士だった人が、突然退職してしまい、園は大混乱に陥った。
    噂ではストレスによる脳の病だとか、私立の帝徳幼稚園に引き抜かれたのだとか様々なことを言われていたが、真相は誰にもわからない。
    清峰くんは智将先生がいなくなって一時期は登園拒否になったけれど、なんとか今は僕にも少しは懐いてくれて登園し始めてくれた。けれど他のお友達にはまだあまり馴染めていないので、見守りが必要な園児と言える。

    外靴に履き替えて園庭に出ると、敷地の一番端にある花壇の前で清峰くんが膝を抱えて座り込んでいるのが見えた。なにかあったのかと声をかけようとしたその時、僕よりも先に清峰くんに小さな影が駆け寄った。

    「はるちゃん、なにないてんだよ」
    「……けいちゃん」

    清峰くんに声をかけたのは、今年度から転入して「こてさし組」にやってきた要けいくんだ。
    要くんは明るく元気いっぱいなムードメーカーで、たちまち人気者となった。
    最近教室でもよく一緒にいるなと思っていた2人だが、僕が見ていない時でも要くんが清峰くんに声をかけてくれていたのだろう。
    清峰くんの登園拒否が終わったのも、要くんのおかげもあるかもしれない。

    「…ゆう、くんに。あっちいけって、いわれて、、」

    キレイな黒い瞳から大粒の涙を流す清峰くんがゆっくりと話すと、要くんは「そんなの、きにしちゃダメだぜ」と言って清峰くんの前に座り込み、青いギンガムチェックのスモックの裾でその涙を拭ってやっている。

    (要くんはよく気がつくし、優しいんだよな)

    園舎の陰から二人の様子を見守っていると、泣き止んだらしい清峰くんが「けいちゃん、ありがとう」と言って、ふわり、と微笑んだ。
    普段能面のように表情を変えない彼の笑顔は非常にレアだ。

    「けいちゃんみたいに、ぼくもかっこよくなりたい。ずっといっしょにいたい」
    「いいぜ!おれのこぶんになれよ!」
    「うん!なる!」

    二人で手をつないで笑い合っている。
    そんな可愛らしいやりとりを見守っていると、心がほんわか、とあたたかくなった。

    (清峰くん。いいお友達ができてよかったね)

    もう安心だ、とその場を離れようとした時にチュ、と変な音がした。
    音の方向をみてみると、清峰くんが、要くんの丸いほっぺにキスをしている。

    「!はるちゃん。ナニするんだよ」
    「ご、ごめん。すきなひとにはキスするんだって、おかあさんがいうから……ぼく、けいちゃんがすき!」

    要くんはゴシゴシと手で頬を拭っているが、頬を染めて告白する清峰くんの表情は真剣だ。

    「キスはけっこんするヒトじゃないと、しちゃいけないんだぜ!」
    「!けいちゃんと、けっこんしたい!けっこんして!ぼくのおよめさんになって!」
    「…でも、オレはひとりっこだからおよめさんをもらわないとダメなんだよなぁ」
    「じゃ、じゃあ!ぼくがおよめさんになる!」

    幼くてけっこんの意味もよくわかってない清峰くんと、4 月生まれでおませな要くんの発言に吹き出しそうになるのを我慢する。
    男の子同士だけれど、性差が曖昧な子供たちにはよくあるやり取りだ。
    あとで注意すればいいと考えながら、ほんわりとした気持ちで見守る。

    しばらく腕を組んで「う〜ん」と悩んでいた要くんは「しょーがねぇな」と格好をつけてから、自分より背が高い清峰くんを抱きしめた。

    「わかった!オレがはるちゃんをおよめさんにしてあげる!」
    「けいちゃん!」
    「オトコにニゴンはない!しあわせにするからな!」
    「うん」

    そう言うと、清峰くんは嬉しそうにまた要くんにキスをした。

    まさかの、マウストゥマウス。

    「ちょっと!な、なにしてんの!!…ってうわ!」

    流石にそれはいけないことだ、と教えなければいけないので急いで飛び出すも、慌てすぎて転んでしまった。
    そんな僕を見てふたりはケラケラと笑っている。

    「ヤマちゃんせんせ〜!おれ、はるちゃんとけっこんする。せんせいが、しょうにんな!」

    ニコニコと笑っている要くんと、嬉しそうに頷いている清峰くん。
    男同士では結婚できないことを教えなければ、と思っていると、「おやつの時間だよ〜」という主任の佐古先生の声が響き渡る。

    「オヤツだ!はるちゃん、いくぞ!」
    「うん!」

    2人手に手をとって光の中へと駆け出す姿は、まるで映画のワンシーンのように眩しい。

    (指導はまぁまた今度でいいか)

    そう思い直した僕は、膝についた土をはらってオヤツ準備のために園舎に戻った。



    ──あれから10数年が経ち。

    次々と園児が卒園していくのを見守り、新人だった僕も主任と呼ばれるようになった。

    清峰くんと要くんは家が近いこともあり、よく顔を出してくれていたが、野球をはじめて甲子園に出場した上にプロ野球選手になってしまった。
    さらには二人ともイケメンとあって、ペアで女性誌の表紙を飾るなどの人気ぶり。
    教え子が有名になって僕も鼻が高い、と思って喜んでいたんだけど──


    「山田先生はあの時、聞いてたよな。圭が俺をお嫁さんにしてくれるって言ったの」 

    (聞いてました)

    「ヤマちゃん先生は覚えてないよね?」

    (残念ながら覚えてるよ)

    久しぶりに有名人となった教え子たちが揃ってやってきたかと思えば、コレである。
    子供たちや他の職員たちが帰った後とはいえ保育日誌書かなきゃいけないし、明日の製作の準備もあるんだよな〜とは思ったけれど、二人は真剣な表情でこちらに詰め寄ってくる。

    「圭、ここに証人がいるんだから諦めて俺と結婚しろ」

    (こんなとこでクッソでっかいダイヤがついた指輪を出すな)

    「〜っ!ヤマちゃ〜ん!無効だよね?時効だよね?」

    (気持ちはわかるよ?君は男に二言はないって言ってたけどね)

    「夜は圭が下だけど、俺が要葉流火になるから、、」

    (あ〜夜のポジションはそっちなんだね。生々しいの聞いちゃったな)

    時計の針は19時30分を過ぎている。そろそろタイムカードを押して施錠しないとヤバい。労基的に。そう判断した社畜の僕は言い合う二人をよそに身支度を整えた。

    「とりあえずこれから呑みに行く?」 
     
    まさか10年以上経ってから自分がスルーしてしまったことで頭を痛めるとは思っていなかったけれど、成人した教え子たちと盃を組み合わせる機会などそうない。

    (あとでサインもらえるかな〜)

    そんな不純なことを考えながら、昔から変わらない顔をする二人を眺めて笑った。

    おわり。

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