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    鴨緑

    @gatoyosee

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    鴨緑

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    去年のうぇぶおんりで出したアオ主の読み物
    少年のアオガミに対しての気持ちを固める話
    アオ主に至るまでの話とも呼べるやつ

    走馬灯 古津が今、生きて寮の自室のベッドで寝転がれるのはアオガミのお陰である。
    命を救ってくれたアオガミへの恩義は確かに古津の中にあった。感謝してもしきれない程に。
     しかし、
    「こんな事って、ないよな?」
     古津は冷ややかな目線を横にやる。目線の先にはアオガミが腕を組み、仁王立ちをしていた。
    「すまない、君を守る為だ。」
     申し訳なさそうに、しかし顔色一つ動かさずアオガミは謝罪する。
     古津は最初、アオガミとの旅はダアトを抜けて東京に戻り、ベテルと呼ばれる施設で終わると勝手に思っていた。しかし、物事はそう単純な事ではなかったらしい。
     ナホビノの存在
     ナホビノとは神が禁じた存在。神が分けた『生命』と『知恵』が元の一つに戻った完璧な存在。それに古津とアオガミは合一という名で成ってしまったのだ。
    「私は君をサポートすると誓った。それはこの東京に戻ってからも変わらない。そして、ナホビノに戻れる事を他の悪魔に知られた場合、君の命が危うい。仮にそうなった場合、直ちにナホビノに合一できるよう私は君の隣にいなければならない。」
    「命の、危険ねぇ…」
     確かに、長い間ダアトに取り残されていたアオガミはベテル日本支部に帰還後、すぐにメンテナンスに連れて行かれた。古津はその時点でアオガミとの関係は終わり、寮に戻れると思っていた。が、しかし、メンテナンスが終わるまでの間ベテルに軟禁される結果となった。
     ナホビノに戻れると言う『知恵』の存在とは人間の魂に溶けたものである。つまり弱い人間の身では簡単に悪魔に殺されてしまう。だからこそアオガミの言葉は理に適っていた。
    「長官も言っていたが巻き込まれた君にはもう選択権がない。すまない。」
     ああ、そう言えばそんな事言ってたっけなぁと古津は思い出す。
    「酷い話だよな。いくらナホビノってのになってもさ、アレでも何度も死にそうになったんだぜ?走馬灯なんてガチで見れるもんなんだなって初めて知ったよ。」
     古津は愚痴を零しながら視線だけアオガミに向けた。
    「すまない、全ては私の力不足だ。次こそは全力で君をサポートする。君を死なせない。」
     できれば次は勘弁かな…と古津は力無く笑い、アオガミに背を向けるように寝返った。
     
     走馬灯。
     古津がダアトに迷い込んでから幾度も体験した人生の振り返り。最初にそれを体験したのはアオガミとの出会いの前、ダイモーンに襲われた時だった。十八年の人生が一瞬にして蘇る。それは子供の頃、母親に、女の子みたいに可愛いねと言われた記憶だったり、中学に上がり文化祭で女装をさせられたり、自分が美少年と自覚してから自分は美少年だからと茶化しながら口癖のように言い、高校の三年をそれなりに謳歌したりと割としょうもない記憶の振り返りだった。
     だが古津に取ってはそれは下らなくも大切な思い出だった。
     二度目の走馬灯はタワーの悪魔と呼ばれた多頭の蛇、ヒュドラとの戦いの時だった。毒に侵され、体の自由が段々効かなくなり、頼みの仲魔達は皆力無く倒れ、攻撃の的が遂に自分に向いて来た時である。今度こそ死を覚悟し、刹那に巡る記憶の中で古津は、アオガミの姿を見た。ダイモーンに襲われていた所を救ってくれた時、死にたくなければ手を取れと伸ばしてくれた手を、死にたくないの一心で掴んだあの手を…
     気が付けば、ヒュドラの首の一つが宙を舞っていた。あの走馬灯の中で必死に伸ばしたと思っていた自分の手は、現実ではヒュドラの首に刃を振りかざしていたのだ。我に帰った古津に大丈夫か?とアオガミが問いかける。いける、と一言だけ返し目の前の敵に集中した。
     結果、辛くもヒュドラを撃退した。ダアトに迷い込んでから何度目かの「もうこんな目に遭いたくねぇよ」である。ナホビノと言う悪魔と対等に戦える手段を持ったとはいえ、死にそうな場面は幾度となく訪れた。ヒュドラとの戦いは特にそうだった。そうそう見る事もないと思っていた走馬灯をまた見てしまったのだ。
     三度目は議事堂にて。議事堂内の天使を皆殺しにした謎の悪魔、ジョカとの戦いだった。古津からすればベテルや天使との関係など知るよしもなく、完全にとばっちりを受けた認識だった。ヒュドラとの戦いとは違い、こちらの戦力より遥かに上回る力で押し潰され、途端に劣勢に追いやられる。今度こそ死ぬ。絶対に死ぬ。古津が生を諦めた時、また走馬灯が脳裏を駆け巡る。
     しかし、今回の走馬灯は今までと違った。最初に見た幼少の頃から今に至るまでの人生の振り返りとは違い、アオガミとの会話が次々に蘇る。
     ダアトでの活動は正直、古津にとっては不安しかなかった。いつ死ぬかわからないこの土地で真に縋るものがアオガミしかいなかったのだ。不安からアオガミに対する口数が多くなったが、アオガミはそれに対し全て丁寧に受け答えてくれた。姿は見えずとも、語りかけてくるその言葉は古津の恐怖を払拭してくれた。恐怖で動けなくなりそうな体を突き動かす力になってくれたのだ。そして、走馬灯の終わりと言わんばかりにまた、あのアオガミとの出会いの記憶が蘇る。死にたくなければ手を取れと、その手は何度でも自分を救ってくれる。そんな根拠のない自信が古津の中には芽生えていた。生きたいと願い、その願いを聞き届けてくれた手前、ここで死ぬわけにはいかない。ここで死ねばオレを助けたアオガミに申し訳が立たないと古津は今直面している危機に憤った。
     記憶の中でまた、古津は差し出された手を取る。それからの戦いは無我夢中だった。記憶は曖昧でジョカを退けた結果しか覚えていなかった。
     
     ダアトでの大冒険を振り返り、よく生きて帰れたなぁと、喉元過ぎればなんとやらと言った感じに布団の中で古津は思い返していた。しかし本当に大変なのはここからかも知れない。と、またアオガミに向かい合うように寝返りをうつ。
     彼の言葉が本当ならばこれから幾度となく死の危機に直面するだろう、もう元の日常には戻れない、それは今目の前にいるアオガミと言う存在が証明している。古津は後戻りが出来ない事実に段々不安を募らせていった。
    「ねぇ、アオガミ?」
    「どうした?少年。」
     古津の問いかけにアオガミは彼を見つめた。その視線に目を伏せながら古津は言葉を続ける。
    「アオガミさえよかったら…さ?一緒に寝ない?そこで立って見られてると緊張して寝られないっつーか…ほら!横で一緒になってた方がなんかあった時すぐにナホビノになれるし!」
     そう言って古津はずいずいと移動し、アオガミが横になれるスペースを確保する。
    「成程…確かに妙案だ。しかし、良いのだろうか?私がそこに寝てしまっては君の寝るスペースが狭くなってしまう。」
    「お構いなく。ほら。」
     空いたスペースをポンポンと叩き、横に寝て欲しいとアオガミに促す。アオガミは促されるまま古津の横へ、布団の中に寝転んだ。シングルベッドに二人、アオガミの身体の大きさもありベッドの上はかなり狭くなっていた。
    「少年。本当に良いのだろうか?私がここにいる事でかなり狭くなってしまったが…」
    「へーき、へーき。それにね…」
     そう言い、向かい合ったアオガミの手をぎゅっと握りしめる。
    「こうすればすぐ合一できる」
     にひひ、と静かに笑い、
    「おやすみ。」
    「お休み、少年。」
     互いに今日最後の言葉を交わし、薄目で金色の目が閉じるのを確認した後、後を追う様に古津も完全に目を閉じた。
     
     古津には理解出来なかった。何故?出会ったばかりの、神造魔人と呼ばれた者とここまで親密になれたのか?それは『知恵』と『生命』の関係に起因するのか?だがその考えは彼にとって面白くないものだった。年頃の彼に、決められた型に嵌る、と言う事は物凄く癪だったのだ。
     しかし、そばに寄り添い、手を握りながら眠る事に安心と多幸感を感じてしまったのは紛れもない真実だ。それに、この先ずっとアオガミは自分の隣にいるのだろう。嫌と言っても周りはそれを強要するだろう。それならば、と。古津はとんでもない結論を出した。
    『自分はアオガミに恋をしよう。そして、アオガミにも自分に恋をしてもらおう』
     なんともトンチキな発想だった。
     出会って間もないアオガミを好きになれる自信はこの時に確信へと変わった。そしてアオガミが自分をきっと、好きになってくれる事に何も疑問を持たなかった。たとえ期待した答えが返ってこなくても死の局面を何度も経験した古津には、この気持ちを伝えないときっと後悔するだろうと感じたのだ。
     そうと決まれば、
     明日、早速アオガミに告白しよう。にやけつつ古津は必死に眠りにつこうとした。
     
     人生の中で、これほどまでに明日を待ち遠しく思える日はなかっただろう。それほどまでにアオガミという存在は古津の人生を塗り潰したのだ。ならば、その責任。アオガミには取って貰わなければならない。古津の初めての恋は期待の中に少しだけ、アオガミへの愛憎が混ざっていた。
     
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    Replies from the creator

    鴨緑

    MOURNING寝たくない時にダラダラ付け足しながら書いてた読み物。アオが夜中の学校に忘れ物取りに行ったりする話。書いてる時はアオ主だと思って書いてた
    寝たくない夜の話「やっべ」
    少年が胸ポケットに手を入れたり、他のポケットや鞄を漁っている。
    「少年?」
    声をかけると焦りを含んだ様な声でこちらを見つめてきた。
    「学校に生徒手帳忘れたかも」
    「それは…」
    少年が苦笑いしながらどうしよ…どうしよ…と狼狽えながらまた鞄の中を漁っている。焦るのにも無理もない。
    縄印の寮の鍵は生徒手帳なのだ。生徒手帳に埋め込まれているICチップで寮の出入りが可能になっている。
    今は夜中の八時。訳あり、ベテルに寄った帰りなので遅めの帰りになってしまい、学校はもう門は閉じている。今から取りに行くのは不可能だ。しかし、
    「少年、安心してくれ。私なら鍵を開けられる」
    読み取り機に手帳をかざすフリをしてくれ。
    そう言い、少年に読み取り機にかざすフリをして貰う。防犯カメラにこの光景が写っている状態で私が今からやる鍵開けは少々奇怪に見える可能性があるからだ。少年が手を置いている読み取り機に手を当て、以前少年の生徒手帳のICチップから読み取った情報を送ると難なくエントランスの自動ドアは開いてくれた。合鍵でドアを開けた様な物だ。
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